02
「ヒィーーーーーンッ」
「どうした、ピッタヴ。おいっ。ピッタヴ」
ズシン
その瞬間、カインリルの愛馬は突然一際大きくいなないて口から泡を吹くと、横倒しに倒れてしまった。慌てて座り込んでピッタヴの様子を確認しようとするカインリル。
「<発火>」
その頬を掠めて、マナの放った火線が横切った。
「まだ試合中よ」
「ピッタヴに何をしたっ」
「空を飛ばれると手加減しにくいから先に眠ってもらったのよ」
「何だとっ」
「『激痛針』って知ってる?」
いつでも印を結べるように両手を構えたまま、マナは話し始めた。
「見た目はただの細い針なんだけどね、痛覚を増幅して刺激することで刺した相手に激痛を与えて行動力を奪ったり気絶させたりするの。さっき魔法攻撃の隙にヘータを投げつけた時に持たせておいたのよ」
「そんな」
カインリルは驚いて、距離をとって観戦している俺の方を見やった。さっきピッタヴが倒れる直前に飛び降りてリングの端の方に移動していたのだ。
「<発火>」
ジュッ
「だから、試合中によそ見をしない」
マナはまたカインリルを掠める軌道で火線を放った。
「ダメージ軽減フィールドなんかに頼ってるから、こんな単純な攻撃を見落とすのよ。激痛針みたいな軽い攻撃はフィールド内だとそもそも皮膚にも刺さらないから、今まで使ったのを見たこともないんじゃない?」
「ぐっ」
図星だったらしくカインリルの顔が引きつる。
とはいえ、これは若干カインリルに同情しないこともない。そもそもこの攻撃は開始直後に俺がピッタヴに貼り付いたことで成立したわけで、こんな一瞬でゼロ距離に接近できる相手がそうそういるわけではないだろう。それに、そもそも気づかれずにゼロ距離まで近づけば激痛針よりもっと致命的な攻撃方法はいくらでも考えつく。
ただ、ゼロ距離で有効でかつ溜めのない攻撃手段となると、どうしても軽い攻撃が主体にならざるをえず、自然、ダメージ軽減フィールドの元ではゼロ距離からの不意打ちは決定打になりにくいのは事実で、そういう意味ではマナの指摘は的を射ているとも言える。
「まだだっ。僕はまだ負けたわけじゃない。<発火>」
「<発火>」
ピッタヴを失ったことにようやく気持ちのケリがついたのか、カインリルは再び立ち上がって攻撃魔法を放った。しかし、不意打ちにはならずマナは軽々と防御魔法でそれを受け流す。




