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翌日の新聞は、またまたマナとカインリルの親善試合の話が1面トップを飾っていた。
「もう勘弁して欲しいよ。カルネのやつ、一体どこまで監視してるんだ」
「アリアノ蜂は小さいからよっぽど注意してないと絶対見つからないよね」
校内を歩くだけでマナに向けられる視線は、好奇の視線がほとんどだった。後、たまに俺のファンらしい視線が不意打ちで混ざっていて背中がぞわりとする。
「それにしても『環境と才能の上に胡座をかいてる』ってのは痛烈だよね」
「ううー。そんなの人に聞かせるつもりで言った言葉じゃないよ」
「いや、でも、『学園女王』らしい言葉だと思うよ」
「その言い方やめてよ」
ミレイは面白そうに話しているが、マナは心底嫌そうだ。相手がミレイだからこんなふうに穏やかに話しているが、それ以外なら一瞬でブチ切れて相手をぶっ飛ばしていても不思議ではない。
「あっ、あのっ」
「はい?」
突然呼び止められたマナが振り返ると、見たことのない少女が立っていた。中等部だが同級生ではなさそうだ。雰囲気からして、多分、3年生なんじゃないかと思う。
「が、頑張ってください。応援していますっ」
そう言って顔を真っ赤にしながら走り去っていった彼女の後ろ姿を見ながら、俺とマナはしばし時間が止まったように呆然としていた。
「君は、才能はともかく環境はただの寮生なんだからさ、目標にして憧れている人だっているんだよ」
「あたしはそんな大層なものじゃないよ」
「君自身がどう思ってても、周りが受ける印象は別だからね。叩き上げの『女王様』がすべてを持つ『公爵子息』に啖呵を切ったって言うんだから、いろんな反応が返ってくるのは仕方ないんじゃない?」
「うー」
意味深なミレイの言葉に思わず眉を寄せて考えこんでしまうマナだった。
放課後、マナは担任の先生に連れられて学園長室まで行くことになった。何かと注目を浴びるマナは担任に呼ばれることは普通より多いと言えるが、さすがに学園長に呼ばれるほどのことは滅多にない。少なくとも俺が一緒になってからはないし、それ以前でもベルデグリ認定の説明に呼ばれたくらいだと思う。
「失礼します」
担任がドアを開け、俺を胸に抱いたマナはドアのところで軽くお辞儀をして中に入った。担任も一緒に入ってドアを締める。
学園長室にいたのは、学園長のニーシャ=トルン=ヴィッツィー、学園の創始者であるトルン公から数えて5代目の子孫にあたる小柄な女性に加えて、カインリルと、引率の教官であるノルフレドの3人だった。ノルフレドは入ってきたマナを見て少し驚いた顔をしている。
部屋に集まった5人が形式的な挨拶を済ませると、すぐに学園長が本題を切り出した。
「マナさん、先ほどこちらのノルフレド先生とカインリルくんからお話を聞いたのですが、ダメージ軽減フィールドを使わない試合を望んでいるというのは本当ですか?」
「あたしはどちらでもいいです。どちらにしても結果は変わらないと思いますから」
「それは僕の希望です」
学園長の質問にマナがそっけなく答えると、カインリルが勢い混んで付け加えた。
「僕はマナさんと真剣勝負がしたいんです。お互いの持てる力を全て出して、シミュレーションではない本当の戦いをすることでしか得られないものがあると思うんです」
カインリルの熱弁に俺は全身の毛が逆立つような気がした。よくまあこんな暑苦しくて恥ずかしいセリフが言えるもんだ。
「なるほど。ノルフレド先生はどうお考えですか?」




