07
「あ、カインリルさん」
あたしの視線に気づいたミレイもすぐにカインリルに気づいてその名前を呟いた。それで、ようやくバドアスとシシーもその王立プレミュール校からの交流学生の接近に気づいたようだ。
「こんにちは、お嬢さん。ミレイさん、でしたっけ。先ほどはどうも」
人好きのする笑顔でミレイに話しかける様子を見ながら、あたしはさっさとこんな場所から立ち去ってしまいたいと思っていたが、さすがに交流使節の学生を無視して立ち去るわけにもいかず、せめてもの抵抗に一言も口を聞かずにテーブルの上の食べ物をぱくぱくと食べ始めた。
気がつくと、あたしのテーブルの周りには一定の距離をおいて人だかりができていた。不本意ながら学園女王とあだ名されるあたしに加えて、中等部2年の戦士職2位と3位のバドアスにシシー、それから生産職筆頭のミレイが一堂に会しているところへ、交流学生一番人気のカインリルが話しかけてきたのだ。注目を集めないわけがない。あ、後、猫もいたっけ。
「マナ」
「……」
カインリルに話しかけられたあたしは、食べ物を口に入れながら視線だけを彼に返す。
「親善試合のことは聞いてる?」
「……」
相変わらず声を出さずにうなずきだけで返事するあたし。
「僕はあなたを指名するつもりだよ」
「は?」
「「「「ええぇっっっっ」」」」
カシャッ、カシャッ
突然のカインリルの宣言に、話についていけないあたしとどよめく観客、そして鳴り響くシャッター音。……、最後のはもちろんカルネだ。いつの間に……。
「な、何を言ってんの? あたしは中等部なのよ?」
「別に不思議じゃないよ。僕は王立プレミュール校の高等部で実力1位だし、あなたはここで中等部高等部あわせて1位なんだろ? だったら、対等だよね」
「そうだけど」
「それにね、僕はどうやったらあなたに関心を持ってもらえるかずっと考えていたんだ。2年前のこと、僕はまだ本気だからね」
「それについてはもう返事はしたはずよ」
「うん。分かってる。でも、僕はまだ諦めてないんだ」
「勝手なこと言わないでよ」
周囲のざわめきが耳に入る。
「2年前?」「知り合いだったんだ」「諦めてないって何のこと?」「もしかしてスカウトとか?」
正直、衆人環視の中これ以上話を長引かせてあれこれ噂されたり新聞に書き立てられたりするのは勘弁なんだけど、この目の前のKY野郎は全く引く気はないようだ。
「とにかく、試合の件はもう気は変わらないよ。それに客観的に見ても妥当な対戦に違いないから、僕が希望しなくてもそうなる可能性は高い。だから、これはただの話の枕で、本当に言いたいことは別にあるんだ」
「何よ」
「もし僕が勝ったら、2年前の件、もう一度考え直してくれないか?」
「はぁ?」
何を言ってるのよ、こいつは。こんな態度だから断られたのかもとは思わないんだろうか。……、まあ、それが理由だったわけじゃないんだけど。
「分かったわ。その条件、受けてあげる」
「本当に!?」
「ただしっ、あたしが勝ったら、金輪際、2度とあたしに近づかないでくれる?」
一瞬、カインリルの表情が強張ったように見えたが、それもほんの一瞬で、すぐに凛と響く美声で返事が返ってきた。
「分かった」




