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俺は猫×あたしは魔女  作者: 七師
親善試合<前編>
33/130

01

 「臭い」


 いつものように寝起きのパジャマのまま、髪も梳かさずにリビング・ダイニングへと足を踏み入れたあたしは、ドアを開けた途端、そこに充満する異臭に顔をしかめた。


 米臭い……


 「米を炊くときは窓を開けてって言ってるじゃない」

 「うるさい。今忙しいんだ。そんなのお前が開ければいいじゃないか」

 「言われなくても! <発火(レムス)>」


 あたしがそう唱えると、部屋中の窓という窓が同時に一斉に開いた。


 「<発火(レムス)>」


 さらにもう一度唱えると、部屋に一陣の風が吹いて充満する米の臭いを家の外へと掃き出す。


 「うわっ、ちょっ、お前、俺まで飛ばそうとしただろ」

 「あ、そんなとこにいたの。気づかなかったわ」

 「嘘つけっ」


 さっきからあたしに生意気な口を聞いてくるのが、そこの鍋の前で火の番をしている黒い子猫のヘータ。漆黒で艶のある短毛の子猫で、黒猫には珍しく目はサファイア・ブルー。体型はセミ・コビーで口さえ聞かなければちょーかわいい子猫ちゃんなのだ。口さえ聞かなければ。


 あたしはヘータの隣をすり抜け、ブールを掴んでパン切り包丁でスライスすると、冷蔵庫からチーズとバターを出して横に置き、さらにカット済みのサラダを取り出して塩コショウにオリーブオイルを掛けてわしゃわしゃと混ぜると、全部持ってテーブルへと向かった。


 「あ、ヘータ。オレンジ搾って」

 「自分でやれよっ」

 「両手ふさがってるし」

 「俺だって忙しいんだよ」


 忙しい子猫がいま何をしているかというと、どうやら米が炊きあがったらしく、鍋を火から下ろしてしゃもじでかき混ぜているところだった。後、そのとなりで魚も焼いているようだ。


 猫のくせにどうやって料理するの、と思う人もいるかもしれない。しかしヘータはただの猫ではない。後ろ足二本で立って、前足で器用にしゃもじを操っている……


 ということはなく、実は、ヘータは見晴らしのいい台の上に座って尻尾を動かしているだけで、実際の作業はすべて細い木に葉っぱが数枚ついただけの棒人間のようなものが行なっているのだ。通称「ウッドゴーレム」と呼ばれるゴーレム系の魔法としては最も初級の魔法だ。


 そう。ヘータもあたしと同じく魔法が使えるのだ。猫のくせに。しかも、こんな可愛い顔をしてあたし並みの使い手なのだ。……まあ、あたしと同じように、単に可愛さと魔法の才能が比例しているだけかもしれないけどっ。


 「そういえば、今日からじゃなかったっけ?」


 ヘータも用意ができたらしく、ゴーレムに皿を並べさせて、あたしの前の席に、というかテーブルの上に座って、搾りたてのオレンジジュースに口をつけたあたしに話しかけてきた。


 「ん? 何が?」

 「ほら、どこかの王国の学生が来るって話」

 「ハンセタール王国?」

 「そうそう。それそれ」


 そうなのだ。今日からしばらくの間、隣国ハンセタール王国の王立プレミュール校の学生たちがトルニリキア学園を訪問して交流を深めることになっている。この2つの学園は毎年交互に学生を送り合って交流を深めていて、今年は王立プレミュール校が訪問する番なのだ。


 「なあ、お前、何で今朝からずっと顔をしかめてるんだ?」

 「別に」


 そしてそれがあたしが今日、朝から今ひとつ気分が乗らない原因でもある……。

明けましておめでとうございます。猫魔女、頑張って更新していきますので、今年もよろしくお願いします。


第3章と第4章は前後編となっています。第3章は全17話で、基本的に毎平日のお昼に更新していきます。


さて、今年の最初の話はマナとヘータの朝ごはんの一幕を書いてみました。洋食党のマナと和食党のヘータの戦いは朝起きたところから始まるのです。

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