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爪で薙ぎ払われたヘータは、空中で体勢を立て直して着地するやいなや即座にオロンに再び飛びかかった。負傷した左足のせいで死角となった身体左側面へと回り込んで鉄球を脇腹へと叩きこむ。
しかし、今度はウィルムの固い鱗に遮られてほとんどダメージは通らなかった。
「さすがに硬いな」
とうめいた瞬間、襲いかかる太い尻尾の強烈な一撃。
ヘータは再び鎧で防御して反動で弾き飛ばされた。
「オロン、大丈夫かっ!」
「グァ」
バドアスの問いかけに頷きのような鳴き声で返すオロン。どうやら左足は痛みはあったものの、機能上の異常はなかったらしく、すでに体勢を立て直していた。
「鉄球の攻撃まで弾くとはね。やっぱ、硬いわね」
あたしの呟きと同じことを考えたのか、ヘータも一瞬立ち止まってオロンと距離を取り直していた。
「オロン、もう一度ブレスだ」
バドアスの掛け声を合図に、オロンの口から高温のブレスが吐き出される。そして、その瞬間、再びヘータは消えた。
「上っ!! ……、じゃない!?」
誰もがさっきと同じ上からの奇襲を予想して視線を上げたが、その先にあるのは晴れた空だけだった。
ガンッッ
「ンンッ」
鈍い打撲音と声にならない叫びの後、オロンの身体は後ろにのけぞるように仰向けに倒れた。身体は小刻みに痙攣していて起き上がる気配はない。
「勝者、ヘータ!」
直後、観客席に湧き上がる歓声。ヘータはそそくさとリングから下り、代わりにリングの脇に控えていた学園の医療スタッフがオロンの側に駆けつけていた。
「おつかれ」
あたしはヘータに声を掛けて防具を外してあげた。予想通りヘータの身体には痣一つついていない。
「今、何をやったんだ?」
納得がいかない顔つきでバドアスが問いかけた。
「単にブレスの下をかいくぐって、顎の下から鉄球を叩きつけただけよ。どんなに装甲が硬くても、脳を揺さぶられたら気を失っちゃうのは仕方ないわよね」
「だけど、どうしてただの子猫がそんな力を?」
納得がいかないのはバドアスだけじゃないらしく、シシーも横から割り込んできた。




