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俺は猫×あたしは魔女  作者: 七師
学園デビュー
19/130

09

 やっと暴れられるぜ、と息巻いているところをマナに掴み上げられた。


 「何でだよ」

 「あなたの力までの使ったら弱い者いじめにしかならないからよ」

 「じゃあ、お前がじっとしてればいいだけだろ?」

 「それに忘れたの? あなたの力はここでは秘密なのよ」

 「あー、はいはい。そうだったな」

 「そういうこと。じゃ、ここでおとなしくしててね」


 そう言うと、マナは自分の服の襟元を引っ張るとそこに俺を押し込んだ。


 そんな掴まるところもないところに入れられても落ちるだけだろ、と思ったのもつかの間、なんだかよくわからないが軟らかい塊に尻が支えられて滑り落ちることはなかった。


 ――あ、例の胸の瘤か。


 病気は辛いけどこんな風に役に立つこともあるんだなと、人生の教訓を1つ学んだ気になっているうちに、いつの間にか模擬戦が始まるようだ。


 ――何だこのしょぼい戦いは……


 マナはさっきから片手を胸の前に固定したままで一歩も動かないで相手を圧倒していた。この対戦相手が特別弱いのかと思ったが、周りを見てみると誰も彼も大差ない。つまり、マナがそれだけ圧倒的なのだ。


 最大の問題は両手印だということだ。両手印は一度に1つしか結ぶことができない上に、身体の前で結ぶと印の内容を隠せないため、魔法の発動前から魔法の内容が筒抜けだということだ。これでは余裕を持って防御魔法を準備できてしまうから攻撃が当たりようがない。


 その上、対戦相手はマナの片手印をほとんど読み取れていないようだった。多分、両手印を読み解く訓練しかしていないせいで、変則的な片手印の読み方が分かっていないんだろう。だから、さっきからマナはフェイクも何もせずに、印を隠すことすらしないで無防備に単一属性魔法だけで戦っているのに、全く防御ができていない。


 それどころか、周囲の戦いを観察するに、そもそも両手印の解釈すら怪しい奴が山ほどいる。中には魔法の防御を完全に放棄して攻撃魔法の打ち合いに終始しているだけの奴もいるほどだ。


 ならば使い魔はどうかというと、全くマスターとの連携が機能しておらず、マスターとてんでバラバラに攻撃してくるだけだった。むしろ、さっきの防御魔法を一切使っていない奴が使い魔を盾として使っていたのが、役割分担による連携という意味ではまだマシなくらいだった。


 ――頭痛がしてくるレベルの低さだな。


 弱いものいじめにしかならないというのは本当のことだなと周囲の戦いを観察して心の底から納得した。


 「手応えないわね」


 早々に勝利して休憩に入ったマナはつまらなさそうに呟いた。


 「あれ? 今日はヘータ君はお休みなの?」


 どかっとベンチに座ったところに声を掛けてきたのは、友人のミレイだった。


 「こんなレベルの低い戦いじゃ、ヘータを出すまでもないわよ」

 「だけど、みんな期待してるみたいだけど」

 「そんなのあたしには関係ないわ」


 そう言われてふとみると、演習場の外側に人だかりができている。ミレイの口ぶりからするに、あれは俺の戦いを見に来た観客だということなのだろうか。

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