07
あたしが号外を配っている子に声をかけると、その子はあたしの顔を見て驚いた顔をして号外を渡すと急いで走りさってしまった。
「なによ。人の顔を見て逃げるなんて失礼な」
「ははは。それは仕方ないんじゃない」
「! ミレイまで、何それ!」
「だってこれ読んでみてよ」
ミレイはそう言って今もらったばかりの号外を指でちょんちょんとつついた。
「えっと……、『学園女王、ついに使い魔と契約』って、はあっ?」
「そりゃ、本人がいきなり登場したらびっくりするって」
「ていうか、あたしがいつから『女王』になったのよ」
「あははは」
あたしがぷりぷりと怒っている様子を見て、ミレイは楽しそうに笑っている。号外を配っていた子は少し離れたところでトーンを低めにして引き続き号外を配り続けていた。
「全く、人が使い魔を契約したことが何でそんなに気になるかね」
そう言いながら、変なことが書かれていないかと号外の紙面に目を走らせると使い魔ランキングなるものが掲載されていた。なんでもマスターの能力を度外視して純粋に使い魔の能力だけでランキングをしたものらしい。
「中等部一位はオロンか。まあ、そりゃそうかな」
オロンという名の使い魔は、ウィルムと呼ばれる亜竜の一種、ゼオ・ウィルムという中型のウィルムだ。するどい爪や力強い尻尾の他、高温のブレスを持つ前線攻撃型の使い魔として、模擬戦では大きな脅威となっている。ちなみに亜竜というのはドラゴンに似ている生物の通称で、ウィルムの他、ワイバーン、サーペントなどがよく知られている。
「その子猫はランキングにすると何位くらいになると思う?」
ミレイが面白半分に聞いてきた。そんなこと聞くまでもないと、あたしは即答で答えた。
「一位よ」
「本気で答えてよ」
「本気よ」
ヘータは昨日、あたしと勝負して引き分けているのだ。マスターとペアで戦ってもあたしに勝てないオロンがヘータの敵になるわけがない。
ミレイはあたしの目を見て冗談を言っているわけではないと理解したのか、納得はしていない様子だったがそれ以上追求してくることはなかった。
「さ、あたしたちの番よ」
そしてタイミングよく、いつの間にか列の先頭に立っていたあたしたちはようやく席について昼食にありつけることとなったのだ。
「ちょっと待て、これはどういうことだ」
目の前に差し出された皿を見て、俺は抗議の声を上げた。しかし、マナの返事はない。まあ、学園内で返事はしないと言っていたのだから返事がないのは仕方ないのだが、それにしても許せることではなかった。
何のことかというと食べ物のことだ。朝、あれほどご飯の素晴らしさを説いたというのにまるで分かっていない。何なんだ、このねちょねちょした米に気色の悪い匂いの魚介は。
「この子、ご飯とお魚が好きみたいだから、海鮮リゾットを買ってあげたの」
マナはさっきから得意げにそんな説明をミレイにしているが、俺はこんなものが食べたいなんて言った覚えはない。
メンテナンスがあるみたいですが、予定通り投稿しました。




