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俺は猫×あたしは魔女  作者: 七師
学園デビュー
16/130

06

 「最後に、子猫の写真を取らせてもらってもいいですか?」

 「勝手にして」


 そう言うと、あたしはヘータを床に下ろして教室の中へと入っていった。残されたヘータはやたらとごついカメラを向けられて気味悪そうにしていたが、魔法を使わないという約束のせいでしつこいカルネから逃れることができず、恨めしそうにあたしを睨みつけるだけだった。


 教室にいる学生の全員があたしのように使い魔を教室に連れてきているわけではない。ヘータのような小型の使い魔は常に連れて歩いている人も多いが、大型の使い魔を使役する場合には、座学の間、学園内の厩舎に預けることになっているからだ。


 戦闘に際しては大型の生物のほうが使い魔として有用であることが多いので、戦士職を目指す学生はできるだけ大型の生物を使い魔にしようとする。およそ3分の2の学生は花形の戦士職を志望しているので、教室に使い魔を連れてきている学生は少ないのだ。


 ちなみに、カルネは情報職を志望していて、使い魔はアリアノ蜂と呼ばれる小型の毒蜂の女王蜂と契約して、女王蜂を通してコロニー全体を支配している。多分、あたしの事務室でのやりとりは、働き蜂の1匹に見られていたのだろう。


 「ひどい目にあった」

 「おつかれさま」


 やっとカルネから解放されたヘータがあたしの机にたどり着いたので、周りに聞かれないようにねぎらいの言葉をかけた。ヘータはよほど疲れたらしく、机の上で潰れたカエルのように脱力した。


 「みんな、席につけー」


 ヘータの顎が机と接触したところで、教官が教室に入ってきて授業が始まった。あたしはノートを開くと眼鏡を掛けて授業を聞く体勢になった。


 ちなみにこの眼鏡は魔道具で、この眼鏡を通さないと対になる魔道具のペンで書かれたものを見ることはできないようになっている。いわゆる情報隠蔽の魔法の一種だ。授業のノートに情報隠蔽の魔法を使う必要はないといえばないのだが、これは習慣みたいなものだ。


 そんなこんなで授業は進んでいった。授業中にヘータの様子を時折覗いてみたが、寝ているのかと思いきやだらけた格好ではあるものの授業を聞いているようだった。


 そしてお昼。いつものように一緒に昼食を取ろうとミレイがあたしの席にやってきた。


 「マナー。今日はどこでご飯食べる?」

 「んー。気分的にはドアーツかパルバンかな?」

 「じゃ、パルバンで」


 ドアーツもパルバンも食堂の名前だ。広い敷地の学園には食堂もたくさんある。味はそこそこだけど広くてあまり待たないところや美味しいけれど行列ができるところ、辛いところ、スイーツが美味しいところ、ベジタリアンなところや肉々しいところなど、バリエーションに富んでいる。


 パルバンはパスタとデザートが美味しい食堂で講義棟からはちょっと離れたところにあるのにいつも列ができている人気の食堂だ。あたしとミレイのお気に入りの食堂の1つでもある。


 「だったら急いで行かないとね」


 あたしはまだぐだっと寝たままのヘータを掴みあげて抱えると、早足で教室を出た。


 正直な所、パルバンまでなら魔法で飛んでいけばすぐに着くのだけど、事故防止のために学園内で飛行術や転移術などいくつかの魔法は許可無く使ってはいけないことになっていて、あたしとミレイは仕方なくちょっと遠くのパルバンまでいつも早足で歩いている。


 「号外ー。号外ー」


 パルバンに着くと食堂の前に新聞部員がいて号外を配っていた。通常版の新聞は購読にお金がかかるが、号外はビッグニュースがあった時に、次号の宣伝も兼ねてただで配っているのだ。ここで号外が配られているということは何かニュースがあったに違いない。


 「一枚頂戴?」

 「あわわっ!!」

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