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俺は猫×あたしは魔女  作者: 七師
サバイバル実習<後編>
126/130

27

 「タリアさんは学園に来るんでしょうか?」

 「さあね。まだ、本人の気持ちが決まってないみたいだし、例え、本人が納得しても学園自体、ハーフエルフを入学させた経験がないからね」

 「でも、入学できるといいですね」

 「本当にそう思う?」

 「え?」

 「ハーフエルフと人間は、外見はよく似てるけど、中身は全然違うんだよ。そんなのが人間社会の中に入って本当に幸せになれると思う?」


 あたしの問いかけに、デミは返事ができなかった。


 この場で幸せになれると言っても、幸せになれなかった時にそのつけを払うのはタリア本人であってデミではないのだ。それが分かっていれば軽々しくその選択肢を勧めることには慎重にならざるを得ない。


 「わたくしは、幸せになれると思いますわ」


 デミの代わりにカルネがそう答えた。


 「どうして?」

 「トルニリキア学園とは多様性を受け入れるところだからですわ。わたくしはそう信じています」

 「そう思っているのはカルネだけかもしれないよ」

 「だったら、わたくしは学園をそう変えるように努力しますわ。それに、……わたくしには無理でもマナさんにならできます」

 「それは買いかぶりすぎ。……、でも、あたしも学園がそうあってほしいと思ってるけどね」


 カルネの言うことは正しい。相手のためを思って相手を拒絶するのではなく、もし本当にお互いがそれを願っているのならそのために努力をするのが自然な姿なんだろう。


 「なるほど。「友情の誓い」の魔法陣が実現しようとした精神は、そういうところにあるのかもな」


 あたしとカルネのやり取りを聞いていたヘータがそんなことをつぶやいた。


 「どういう意味?」

 「俺とお前の契約は、もともと人間とドラゴンの間で結ぶためのものだっただろ。異種族の壁を克服したいっていう願いが魔法陣に込められてるんじゃないかなって、ふと思ったんだ」

 「それは一理あるかも」

 「どうしました?」

 「秘密」


 ヘータの発言が聞き取れないカルネが不思議な顔をしたが、あたしはにっこり笑ってごまかした。


 「あれ、デミ、どうかした?」

 「……えっ? 何か、言いましたか?」

 「いや、何か心ここにあらずな感じだったから」

 「なんでもないです。……、ちょっと、あたしも疲れたかな」


 そう言って、デミは身体を倒して背もたれにもたれかかった。


 「デミも寝ればいいよ。まだトルンは遠いから」

 「はい」


 あたしがそう言うと、デミは静かに目を閉じた。


 「そういえば、一つ分からないことがあるんです」


 デミがすぐに軽く寝息を立て始めたところで、カルネがそう切り出した。


 「マナさんはあの時、タリアさんがあの川の近くにいるって確信してましたが、あれはどういう理由だったのですか?」

 「あ、あれは、2日目に探索した洞窟の中でトゲバツツジの葉が見つかってね、それが生えているのがあの川沿いだったからだよ」

 「よくそれだけの手がかりからあの場所を割り出せましたね」

 「それは100%デミのお手柄だね。デミが確信を持ってたからあたしもそれを信じただけだよ」


 と、デミが軽く身震いして首を倒してまた再び規則的な寝息を立て始めた。


 「それなら納得ですわ」


 そう言うと、カルネは写真を手にとって、再度1枚1枚目を通し始めた。


 あたしは隣に座る子猫を膝の上に乗せると、トルンに着くまでの間、目を閉じて瞑想をすることにした。



サバイバル実習<後編>【終】

第6章完結しました。いつもならこの後次回予告とかが入るのですが、他の連載との関係で次の更新までしばらく間が空きます。申し訳ありませんが、よろしくお願いします。

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