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「ニーシャ、呼び出しておいて申し訳ないが、もう少し時間が掛かるみたいだ」
「私は構いませんよ。こうしてルディーに会えるだけでも、十分来たかいがあるというものです」
「そう言ってくれるとありがたい。僕はもう少しタリアと話をしてみる。今度は僕の方から君のところへ行くよ」
「お待ちしてますわ」
学園長がにっこり微笑むと、幼児は大鷲に姿を変えて飛び去っていった。暗くてはっきりとは見えなかったが、それを目で追う表情は恋人を見送るようにも見えて……
「あ、あの、学園長先生」
「あ、あら、マナさん。そんなところにいたのですか」
「さっきのは一体? あれは、ドラゴンですよね」
「ええ。このキリシュ島に昔から住むオルディヒクソスというドラゴンです。私はルディーって呼んでますが」
「昔からって?」
「初代とも懇意にしていたと聞いたので、少なくとも200年はここにいるはずですよ」
恋する表情は錯覚だったのかと思えるほど、あたしが声をかけたら素早くいつもの雰囲気に戻ってあたしの質問に答えてくれた。
それにしても、あの幼児、200歳を超えてるのか。学園長が年齢不詳だと思っていたけど、ドラゴンはさらに正体不明だな。
「マナー! 大丈夫かーー!」
いつの間にか森の中には完全に光が入らなくなっていて、学園長の姿は月の光でなんとか確認できるものの、月の光も届かない木々の影は全くの闇だった。
そんな森の向こうからあたしを呼ぶ声が聞こえてきたのだ。
「それじゃあ、また今度ね」
視線を森の奥へと逸らした隙に、学園長はほうきに乗って空に舞い上がっていた。
「あっ、あの、もう少し詳しい話を教えてもらえませんか?」
「今日はもう夜ですから、明日の朝、私のテントにいらっしゃい。ただし、あなたとその使い魔の子猫の2人だけでね」
学園長の姿が見えなくなったと思うと同時に、森の中から人影が飛び出してきた。
「マナッ」
「ミレイ。どうしたの?」
「マナさん、無事でしたか」
「カルネ?」
よく見ると、バドアス、シシー、デミまでが集まって来ていた。
「どうしたの、一体?」
「カルネから、とんでもない化け物に君が襲われていると聞いて、わざわざ駆けつけてやったんだ。で、その化け物ってのは、どこにいるんだ?」
バドアスがいつでも結印できるようにして周囲を警戒しながら聞いてきた。
「もういないわ」
「まさか、あれを倒したのですか?」
「いや、まさか」
あれを実際に見たカルネが驚いて言ったが、即座に否定した。
「あれは用を済まして帰ったわ。魔力結晶も返してもらったし、一件落着よ」
月曜日は祝日ですので、次回更新は水曜日になります。




