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俺は猫×あたしは魔女  作者: 七師
サバイバル実習<後編>
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22

 丘の上で子どもから魔力結晶を取り返そうとしたところで、俺は上空にただならぬ気配を感じて、身を縮めた。空にいたのは姿こそ幼児だったが身にまとう魔力は人間ではありえない規模だった。


 幼児は丘の上に降りてきて子どもの前に立ち、何か話し始めた。


 言葉の分からない俺には何を言っているのかは分からなかったが、幼児の話を聞いているうちに子どもは不安そうになり、拒絶するように首を振り、最後は怒って走り去ってしまった。


 見失っては一大事と俺はその後を追おうとしたが、腰を上げた瞬間、どんな早業を用いたのか、俺の前にその幼児が立ちはだかっていた。


 「頼みがある」


 と、幼児は言った。


 そう、どういう理屈か分からないが、その時は幼児の声が確かに理解できたのだ。


 「ニーシャのところへ行って、これを渡してもらいたい」


 そう言いながら、首から魔力結晶のペンダントを取り外した。マナのものとはまた別のやつだ。


 「後、これも返しておこう」


 と言って、もう1つの魔力結晶を取り出した。こっちはマナのやつだった。全く気づかなかったが、いつの間にか子どもから魔力結晶を取り上げていたようだ。


 「ニーシャって、どこのニーシャだ?」


 とりあえずマナの魔力結晶を受け取った後、そう言った。ニーシャという名前だけ聞いても、どこの誰かが分からないと探しようがない。


 しかし、幼児は首を傾げて何を言っているのか分からないという様子をした。


 「ごめん。僕には君の言葉は分からない。もう一回言うよ。このペンダントを君たちの学園を束ねているニーシャに渡して欲しい」


 そう言って、再度、ペンダントを握る手を差し出してきた。


 ニーシャって学園長のことか。それなら渡してやってもいいけど、今どこにいるか分からないから新学期始まってからでもいいのかな。


 一応期限について確認を取っておきたいが、言葉が通じないのならどうやって確認すればいいのだろうか。


 「今日の日没までにお願いしたい。彼女がこの島から出る前に」


 聞く前に向こうから話してくれた。って、学園長ってこの島に来てたの?


 「では、よろしく頼む」

 「あ、ちょっと、おい。まだOKしたとは……」


 幼児はふわりと浮かび上がると、俺の前に魔力結晶のペンダントを落として、身体を大鷲の姿に変えるとそのまま飛び去ってしまった。


 行っちゃったよ。……、とりあえず、学園長を探すか。


 魔力結晶を2つ首から下げた俺は、海岸へ向かった。もしこの島に学園長が来ているのなら、海沿いの開けたところにテントを立てているはずだ。ドラゴンを探すのに比べればはるかに簡単だろう。


 はたして彼女は、学生たちがキャンプをしているあたりからかなり離れた海岸の岩場で、大きなつばの帽子をかぶって釣りをしていた。


 俺が近づいて魔力結晶を見せると、一瞬驚いたと思うとすぐに嬉しそうな顔をして、釣りを中断して森に向かったのだった。

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