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俺は猫×あたしは魔女  作者: 七師
サバイバル実習<後編>
118/130

19

 「ん、これは……」


 ふと、机の上を見た時、そこに置かれていたものにあたしは目を引かれた。


 「なんだ、この汚い字は」


 あたしの視線に気づいたバドアスが机の上のものを見てそう言った。


 それは、かろうじて字が書かれていることが判読できるノートだった。


 「ああ、そういうことか……」


 それを見て、ようやくあたしはこの事件の全体像を理解することができたのだ。まだ、重要なピースがいくつか欠けているが、致命的ではない。


 「何か分かったのか?」


 あたしのつぶやきを聞きつけたバドアスが尋ねてきたが、他の皆も期待するような視線をあたしに向けていた。


 「犯人の正体がね、大体」

 「何者なんだ?」

 「捕まえれば分かるわ。今日は洞窟の前で張り込むわよ」

 「じゃあ、ここは」

 「犯人の住処で間違いないわ」 


 張り込みがいつまでかかるか分からないが、夕飯の支度はしなければいけないので、ここに残る人とテントに戻ってご飯の支度をする人の2手に分かれることにした。


 あたしは当然張り込みで、するとご飯当番は必然的にミレイになる。デミとシシーはミレイの側で、バドアスは残りたそうだったが前の失態の件を盾に帰らせた。


 カルネはあたしと一緒に張り込みだ。彼女の能力は待ち伏せでは便利だし、そもそもこんな面白いネタがあれば何があっても居残るに違いないので、帰らせようという努力が無駄だ。


 なおもぶつぶつと不満げなバドアスを追い返して、あたしとカルネは洞窟の出口がよく見える木陰に身を隠した。


 「一応確認はしましたが、洞窟の中に隠し通路を見落としている可能性もあるので、中も警戒しておきますわ」

 「うん。よろしく」


 後はじっと黙って待つのみだ。話していると話し声で気づかれる可能性もある。息を潜めてひたすら周囲の気配を警戒する。


 そのままどれほど経っただろう。日がだんだん低くなってきて、一足先に森に夕闇が忍び寄ってきた頃に、ようやくそれはやってきた。


 「マナさん」

 「うん」


 身振りと口パクだけでカルネがターゲットの位置を伝えてくる。あたしも声を出さずに頷いて返事をした。


 どうしたことか、ヘータの気配はないようだった。ヘータが完全に気配を断ったらあたしでも気づくかどうか自信がないほどだが、それでも、いると分かっていて見つけられないことは考えにくい。


 かなり距離を取って尾行しているのか、あるいは尾行を中断したのか。とにかく、想定外の事態が起きている可能性がある。

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