04
洞窟の中は思ったより乾燥していて、なんていうか、清潔だった。
天井にはメニエ・コウモリが所狭しと張り付いていて、低い声で「ギ、ギ、ギ」と鳴いていて、それが洞窟内に反響している。
デミなんかはその様子に顔を青くしてなるべく上を見ないようにして歩いているが、他の面々にとってはコウモリなんてむしろポピュラーな使い魔と言えるので特に気にもしていない。
「なんか、妙だな」
しばらく奥まで歩いてきたところで、ヘータがポツリとつぶやいた。
「やっぱりそう思う?」
「こんなにあからさまなら気づかないほうがおかしいだろ」
「まあね」
この洞窟に住むメニエ・コウモリの数はかなりのものだ。なにせ、洞窟の入り口からここまで天井にコウモリが止まっていなかった場所がないほどだ。
それなのに足元がこんなに綺麗だというのはどういうことだろう? まるで誰かが掃除しているみたいに。
「やっぱり、この島、なんかいるぞ」
ヘータがそう言ったその時、一斉にメニエ・コウモリたちが飛び立った。
ギ、ギギ、ギーッ、ギ、ギ
バサバサバサバサバサ
大量のコウモリが一斉に飛び立つと、狭い洞窟内はコウモリたちで溢れかえる。
「キャーーーーッ!!」
突然のコウモリの異常行動に誰かが悲鳴を上げる。
いかに暗所での飛行が得意なコウモリと言っても、この狭い中にこれだけの数が飛び回ったら、いくらかは周囲にぶつかりそうになるものも出てくる。ましてそこにいるのは暗視の利かない人間だ。
必然的にコウモリたちの羽根やら何やらがあたしたちの顔や手にぶつかってきた。
「みんな、しゃがんでっ」
何にコウモリたちが驚いたのかは分からないが、とにかく混乱を避けるためにあたしは大きな声で叫んで、身を屈めた。
「<発火>」
全員がどうにかしゃがんだのを確認して、あたしは魔法を発動した。風属性の魔法で、一種の結界術だった。地面から1.5メートルくらいのところに風の壁を作って、それより下にコウモリが入れなくしたのだ。
んっ?
「何かいる!?」
あたしが何かの気配に気づいたと同時に、ヘータが声をあげた。カルネも気づいたらしく全身に緊張を走らせている。




