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幻や、夢のまた夢、浮世かな  作者: アーベリー
1/4

踊り子の夜 〈1〉

ホールには、40人前後の客が入っていた。


中央には、円形のステージが据わっていた。

ろうそくと油をともした照明で、可能な限り明るく照らされた円形の舞台では、花束のような衣装に身を包んだ踊り子たちが、底力のこもったドラムの急速なビートと競い合うように、艶やかで刺激的なダンスを披露していた。極楽蝶を思わせる色とりどりの羽や飾りを着けた衣装の間から、惜しげもなくさらされる肌が妖しく煽情的であった。


客達はどの顔を見てもいかがわしい、一癖も二癖も有る様な客ばかりであった。自ら暴力に手を染めるプロの筋者ではないが、一目で堅気ではない事が丸分かりという面々である。世間の裏街道に入り込み、悪どい方法でもうけた金を懐にねじ込んだ成金予備軍といった感じである。背中には、弱い貧乏人の怨念がへばりついているような連中だった。



やがて、ダンスも終わり、踊り子たちはステージに一本通じた通路を、大げさな身振りで客に愛想を振りまきながら退場してゆく。

続いて舞台を照らしていた灯が次々と消え、場内は真っ暗になった。否、暗いのはステージであって、ホールのあちこちには依然ランプが燈っている。


しばらくすると、ステージの周囲に配置された照明に再び火が入れられる。


幻想的に揺らめく明かりの中に、人影が浮かび上がった。


舞台の中央に蹲る様に身を伏せた、金髪の踊り子だった。

踊り子は白いショールで全身を覆っていた。それも、座り込んだその周囲に目一杯裾が広がるような、かなり大きいと思われるサイズである。上から観ると、何かの模様のように見えるのかもしれなかった。


ステージを囲むように配置されたランプがあらかた点灯されると、踊り子はおもむろに立ち上がった。


顔の上半分は黒いマスクで覆われている。仮面の下からですら、その研ぎ澄まされた美貌が窺い知れる様な顔立である。ショールから覗く肌の色は、どうやら褐色のようだった。


長いショールを身にまとっていた。立ち上がっても、膝下まで隠れるような丈の長さである。そのうえ、普通にショールを巻いているのではなく、一枚の大きな布から真ん中に穴が開いてそこから首を出しているらしい。仄暗い灯火の明かりですら中が透けて見えそうな薄手のシースルーだった。

脚にはストッキングとヒールを履いている。



踊り子は、身を翻して一回転すると、おもむろに舞を始めた。

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