プロローグ:神狩の旗
サミラが息を切らして階段を上ると、その先に白んだ空と、瓦礫の散乱するバルコニーがあった。空は見えるがここは頂上ではない。そこよりも上は破壊されていた。
彼女が探していたのは、銀髪の少女。ここを破壊していったオルフェクスが、再びこちらへ向けて侵攻を開始したと伝えるために、彼女はここまで上ってきたのだ。
「あ――」
目当ての少女はバルコニーの中心に立っていた。サミラは彼女の姿を見て、一瞬言葉を失う。
ばさっ。
彼女は、おもむろに旗を掲げる。
旗は即席の物のようで、青緑の布が槍にくくりつけられている。それが風に吹かれて、払暁の光を受けて美しく舞う。
その姿はまさに、五〇〇年前の勇者ダリオンの再現。勇ましく、すべての人々へ希望を届ける。神狩の旗を掲げ、そう宣言した彼を再びあらわしているようだった。
言葉を失ったまま、彼女は思う。これは離別の時代そのものの象徴。人間は決して負けないという宣言。そして、神との完全な決別を表す勇ましい姿であると。
遠くにはこちらへ向けて迫り来るオルフェクスと、さらに遠くからは朝陽が鮮烈に差し込んでいる。
まさに、その姿は絵画そのもの、銀髪の小さな少女は、サミラの視界というキャンバスの中で、雄々しく神狩の旗を掲げ、オルフェクスを討伐するという意思を強く表していた。
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