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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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鉄への準備

「焼き物も上手く行ったな、アイ!」


窯から取り出した器を見渡しながら俺が言うと、アイは即座に応じた。


『はい。これで食料の保存効率が向上します。腐敗や破損によるロスは大幅に軽減されるでしょう』


「それは助かるな。……で、次は何をするんだ?」


『次工程として、再度炭の生産を開始してください』


「また炭なのか?」


『はい。次の目標は鉄の製造です』


「……なるほど。燃料が必要って訳か」


『はい。この村にも鉄製品は存在しますが、摩耗が激しく、品質も安定していません。鉄製農具および工具の更新を提案します』


「成る程な……道具が変われば作業効率も変わる、か」


俺は頷き、再び薪を組み始めた。


「じゃあ、もう一回炭を焼くか」



二度目ともなれば、作業は驚くほどスムーズだった。


薪の配置、通気口の調整、火入れのタイミング。

一回目で得た感覚が、そのまま身体に残っている。


「……人間、慣れるもんだな」


『はい。作業効率は約三割向上しています』


炭の状態を見張りながら、アイが次の指示を出す。


『誠様。炭焼きの待機時間を利用し、製鉄炉の建設を行いましょう』


「製鉄炉……?」


『たたら製鉄です』


「たたらって……あのアニメとかで見る、でっかいやつか?」


『いえ。今回は小型の簡易たたら炉です。小型工具の製造を目的としたものになります』


「なるほどな。いきなり大剣とか作るわけじゃないってことか」


『はい。現段階では現実的ではありません』


俺は苦笑した。


「分かってるよ」



アイが空中に図面を投影する。


『まず必要なのは三つです。炉本体、耐火粘土、そして砂鉄』


「粘土は分かる。窯の時に集めたやつだな」


『はい。ですが今回は、より不純物の少ない粘土を使用してください。川沿いの下流に適した場所があります』


「砂鉄は……川か?」


『正解です。浅瀬や湾曲部に黒く重い砂が溜まっている箇所があります。磁性を持つため、回収は比較的容易です』


「磁石は……無いよな?」


『木皿と水を使って比重選別を行います。砂を洗い流し、重い砂鉄だけを残してください』


「なるほど……昔ながらの方法ってやつか」



図面に映る炉は、思ったよりも小さい。


人の背丈ほどの高さで、粘土と石で固められた縦長構造。

下部に空気穴、上部に投入口。


「……こんなので鉄が出来るのか?」


『はい。銑鉄ではなく、鍛造用の低炭素鉄を得る設計です』


「へぇ……」


『燃料は木炭。送風は足踏み式、もしくは人力で十分です』


「意外と原始的だな」


『ですが、最も確実な方法です』



俺は炭の様子を確認しながら、粘土を練り、炉の土台を作り始めた。


「で、鉄が取れたら、まず何を作るんだ?」


『最初に作るのは、鉄製ハンマーです』


「……いきなり道具から?」


『はい。石や木の道具では精度が不足します。

ハンマーがあって初めて、安定した鍛冶が可能になります』


「なるほどな……基礎の基礎ってわけか」


『その後、鍛治作業を開始します』


「鍛治……カンカンやるやつだな」


『はい』


俺がニヤッとすると、アイが即座に釘を刺した。


『誠様。刀の製造は、現段階では推奨しません』


「言われると思った」


『技術、設備、材料、すべてが不足しています』


「分かってるよ。まずはクワとかナタとか、生活に必要なもんだな」


『その通りです』


炭の火は静かに燃え続けている。

その傍らで、鉄への準備が着実に進んでいく。


木の時代から、石の時代を越えて――

村は、いよいよ“鉄の入口”に立とうとしていた。

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