表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/57

炭の窯出し、そして焼き物へ

三日間の沈黙を続けていた窯が、ようやく冷え切った。


表面に触れても熱をほとんど感じない。

いよいよ炭の取り出しだ。


「さて……上手くいってるといいが」


俺が窯口の土を崩すと、村人たちがどっと集まってくる。


ごそっ、ごそっ……と土が剥がれるたび、内部から黒い影が見え隠れする。


そして、ついに。


「おおお……!」


最初に出てきた丸太は、芯まで真っ黒で、軽く、艶がある。

押すと「コーン」と高い音が返ってくる。


「おー! 炭だ! 完璧じゃねぇか!」


俺が声を上げると、アイも満足げに頷いた。


『成功です、誠様。均一な炭化に成功しています』


村人たちも歓声を上げた。


「すげぇ……!」「これ全部、炭なんだな!」「これだけあれば冬越えも余裕だ!」


アイが冷静に解説する。


『これを定期的に生産すれば、来冬までに充分な備蓄が可能です』


「もう次の冬の話かよ、アイ!」


『備えは早いほど良いのです』


まったく、こいつはいつも堅実すぎる。


俺は笑いながら炭を見回し、言った。


「各家に配分だな。初回分はしっかり村で使ってくれ」


「おお! ありがてぇ!」


村人たちは嬉しそうに運んでいった。



炭をすべて出し終わり、次はいよいよ焼き物だ。


「さてと。次は焼き物か!」


アイが真剣な声になる。


『誠様、一度窯の内部を撮影して状態を確認します』


「お、頼む」


内部を照らして撮影する。


「どうだ?」


『問題ございません! 内部の壁面に損傷なし。温度分布も均一でした。引き続き焼き物の準備に移行できます!』


「よし、壊れてなくてよかった……!」


村人たちが用意していた器、皿、小壺、甕が広場にずらりと並ぶ。


『では、壊さないように丁寧に配置していきましょう。器同士が触れないよう、わらを挟むと割れにくくなります』


アイの指示のもと慎重に器を重ね、並べていく。


「こりゃ緊張するな……一つでも当たったら割れちまうもんな……」


作業の手は繊細だ。そして最後の一つを置いた。


「よし……完了だ」


『では、薪を入れてください。今回も量はこの程度で十分です』


指示通り薪を組み、通気口も適切な開き具合に調整する。


アイが俺を見た。


『誠様。準備は整いました』


「じゃあ……火入れしますか!」


炎が薪に移り、ゆっくりと窯の中に赤みが広がっていく。


「どれぐらいで焼けるんだ?」


『土器の場合は……そうですね、明日の夕方には“火止め”のタイミングになります』


「また火の番か……」


『はい。ですが、今回は炭焼きよりは楽です。温度管理は半自動でできますので』


「半自動って便利すぎだろ」


そんな軽口をたたきながらも、俺は炎をじっと見つめる。


窯に火が入り、

これからこの村に“器の文化”が生まれる。


そう思うと胸が熱くなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ