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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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冬の工房化計画

「……さっっむ!」


小屋の扉を開けた瞬間、誠は思わずそう叫んだ。

頬に突き刺さる空気が、今までの冷え込みとは明らかに違う。


吐く息は完全に白く、地面はうっすらと霜に覆われている。


「いよいよ……ざっ! 冬の気温だな」


水路沿いに目をやると、作業に出ている村人の数もかなり減っていた。

これ以上の新規開拓は、さすがに無理だろう。


「久々に……休み、か?」


そう思った、その瞬間だった。


『誠様、休憩の前に作業を指示します』


「はい来たー!」


誠は思わず天を仰いだ。



いきなり100枚!?


『長方形の木枠に、板を貼ってください』


「ほう……どのくらい?」


『目標、100枚近く』


「多くねぇ!?」


思わず即ツッコミを入れたが、アイは一切動じない。


『この木枠に土を入れ、稲を発芽させ、苗として育成します。その後、水田へ移植する方式を採用します』


「……え? 今までって、どうやってたんだ?」


『村の方式では、直接水田に種を撒いています』


誠は顔を引きつらせた。


「それ、失敗したら全滅じゃん……」


『はい。発芽不良・寒害・鳥害の影響を強く受けます』


「……なるほどな」


どうやらこれは、

苗床なえどこ方式というやつらしい。


『ミィナ様から聞き取った育成方法を基に、最適化した結果です』


「なるほど……まあ、アイが言うなら間違いねぇんだろうけどさ」


そう言いながら、誠は板を抱え、作業に取り掛かった。



飽きる単純作業


木枠を作り、板を打ち付け、形を揃える。

――ひたすら、これの繰り返し。


「……うん、これは飽きる」


五枚、十枚、二十枚。

同じ作業が続くと、流石に集中力が削られてくる。


『誠様、作業効率が低下しています』


「知ってる……」


誠はため息をつきながら、木枠を一旦脇へ置いた。


「間に、別の作業入れさせてくれ」


『了解しました』


そう言ってアイが表示したのは――

見慣れない構造の設計図だった。



原始的・田植え機&撹拌機


『原始的な 田植え補助機及び、田面撹拌具でんめんかくはんぐ の設計図です』


「……何それ」


『前者は、一定間隔で苗を植える補助器具、後者は、雑草抑制と酸素供給を兼ねた攪拌具です』


さらにもう一枚。


『そしてこちらが、立ったまま刈り取り可能な簡易刈取具』


誠は思わず目を見張った。


「……農業ガチすぎだろ」


『誠様の生存率に直結しますので』


「ぐうの音も出ねぇ……」


誠は苦笑しつつ、必要な部品を確認し、少しずつ作り始めた。


木の歯、回転軸、簡易フレーム。

構造は単純だが、地味に手間がかかる。


だが不思議と、さっきより集中できていた。


「やっぱ、単純作業だけより、こういう方が性に合ってるな」



ミィナ来訪


「おーい、誠ー! 生きてるかー?」


小屋の外から、聞き慣れた元気な声が響いた。


「生きてる生きてる!」


顔を出すと、そこにはミィナが立っていた。


「相変わらず、変なことしてんな」


「変なこと言うな。これ、来年の村の未来だぞ」


「はいはい。それで? 今度は何作ってんだ?」


誠は、アイから聞いた内容をそのまま説明した。


苗床、田植え補助機、撹拌具、刈取具――。


ミィナは目を丸くして聞き終えると、ポンと手を打った。


「それならさ、各家に板に書いた設計図渡せばいいんじゃね?」


「……え?」


「うちの村、手先器用なの多いぞ?道具なら、みんな勝手に作ると思う」


誠はハッとした。


確かに……


「俺より、器用なやつばっかりだしな……よし。それなら――」


誠はすぐに炭で設計図を書き写し始めた。



みんなで作る、という選択


設計図は次々と村に配られた。


すると――


「なんだこれ?」


「……あ、理解した」


「これなら作れるな」


驚くほどの速さで、村人たちは理解し、作り始めた。


しかも――


誠が作った原型よりも、圧倒的に綺麗で、丈夫で、実用的。


「……俺、何やってんだろ」


『村人の方が、職人適性が高いと分析されます』


「言うな……」


だがそのおかげで、誠は“作る役”から“設計と監修役”へと自然に移行できた。


組み立て方もまとめ「壊れたら自分で直せる仕組み」まで整えていく。


これなら、俺がいなくても回る……


それは少し寂しくて、少し誇らしい気持ちだった。



小屋は「冬の工房」へ


こうして誠の小屋は、完全に様変わりした。


・壁際には板の山

・天井近くに細材

・隅には石と粘土

・中央には作業台


暖炉の火が赤く灯り、外は凍えるほど寒いのに、中は“ものづくりの熱”で満ちていた。


「……冬って、作る季節なんだな」


『この期間での準備が、来年の生産力を左右します』


「だよな」


誠は、手にした木材を見つめながら、静かに笑った。


もうただの漂流者じゃない。


この村の中で、“次の一年を作る役目”を持った存在になっていた。


外では、雪になりきれなかった冷たい雨が、静かに降り始めていた――。


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