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異世界転移したら俺じゃなくてスマホがチートでした  作者:


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山からの恵み

山裾の木々はすっかり赤や黄色に染まり、冷たい風が秋の深まりを告げていた。


「今日はみんなで山に入るぞー!」


そんな声が村のあちこちから響き、いつもの水路整備組までざわついている。


今日は“山からの恵み”を数日かけて採りに行く日だそうで、村総出のイベントらしい。

俺ももちろん初参加。アイも楽しそうに空中でくるくる回っている。


『誠様、山の恵みのサンプルは随時記録します』


「助かる。俺、見たことないやついっぱい出てきそうだしな」


村の人たちと一緒に山道を登っていくと、木々の足元には地球でもお馴染みの実がゴロゴロ落ちていた。


「お、栗だ!どんぐりもあるじゃん。胡桃…もこれ胡桃だよな?ミィナに確認する」


アイは次々に撮影・分析


「そうだそ!」


さらに周りを見れば


「柿まであるのか!」


少し高い枝に残っている実に手を伸ばそうとしたその時——


「誠、それはやめとけ!」


ミィナが慌てたように止めた。


「え?なんで?」


「それ、渋柿だ。あれは食えねぇぞ。舌が死ぬ」


俺は少し考えたあと、こっそりアイに耳打ちする。


「ここの渋柿って、干し柿にすれば甘くなる?」


『構造は地球の渋柿に近いと思われます。皮をむき、風通しのよいところで干すだけで甘味成分へ変化します』


「やっぱりか」


「ミィナ、これ渋柿でも干し柿にすれば甘く食えるぞ」


「は?干せば?」


横にいた村人たちも耳をそばだてる。


「皮をむいて、軒先とかで数日干せば甘くなる。嘘じゃないって」


すると数秒の沈黙後——


「じゃあ、うちも干してみる!」


「俺の家の軒先いっぱいあるぞ!」


「おい、渋柿の木どこにあった!?」


一気に村人たちが渋柿に群がり始めた。

なんか、ちょっとした発明を伝えた気分だ。


一方で、キノコはまったく分からない。


「誠、これは食えるやつだ」


「こっちは毒だぞ、絶対触んな」


村人たちが慣れた手つきで次々に判別していく。


アイも慎重な小声で


「キノコ類は外見が酷似している種が多く、画像判断だけでは危険です」


と言うほどだ。


それでも、次々に籠が実や木の実でいっぱいになっていく光景は、まさに“秋の恵み”そのものだった。


赤く色づく山を見上げながら、俺は少し胸が温かくなる。

村人たちと同じように、こうして季節を楽しめる日が来るなんて思ってもいなかった。

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