44話
とりあえず、一旦ランチの時間が終わるのを待っていると。
色々なことがわかった。
お客達の話し声が聞こえてくるからね。
最初来たときは、リリが若すぎて一人で店をやっていけるのか心配していたこと。
周りとうまくやっていけるのか?とか。
しっかりした家に入居して、リリ本人が挨拶周りをしながらきちんと説明もしていたらしく、みなさん快く受け入れられたみたい。
年配の人たちからは、孫のように目をかかえてもらっているようだ。
リリが喜ぶ顔が目に浮かぶ。
なぜここに来たのか、なぜ俺から離れようとしたのか・・・
なぜ・・ ばかりになるのは仕方ないけど。
今日しっかり話し合ってやる。
そっとリリのいるカウンターを見てみると、忙しなく接客している。
このままのほうが、あの子にとっては幸せなのか??
と思えてしまうくらいには、今の彼女はとても楽しそうだった。
客の中には若い男性も多い。
大方、オズのようにリリ目当ての奴も居るのだろう。
それは仕方ない。
なにせリリだからな。
うん、俺の婚約者は可愛い。
惚れるのもわかる・・だが俺のだ。
まだ(仮)だが。
ふとキッチンとカウンターの境目あたりに見慣れた姿があった。
ケイだ。
あいつとも久しぶりだな・・
彼は少し会釈をして、キッチンへ戻っていった。
1時間後、ようやくランチが終わりしばしの閉店。
またおやつ時には開店すると店先に記してあった。
ケイに呼ばれ、広い4人がけ席に移動する。
俯かずに座っているリリを見るのは久しぶりだな。
「お待たせしました。」
「いや、久しぶりだね」
「ケイ、ここはとりあえず、2人だけで話をするから外してちょうだい」
「・・・」
チラリとこちらを見ながら、渋々席を立って会話は聴こえないが姿は見える場所に控える。
「リリ、」
じっ と愛しい人を見つめる。
「エリ、まずはごめんなさい。」
「どうして・・」
「えっとね、最後にわたしに会い来てくれた日のこと、謝りたいの。
わたしの態度は本当に最悪だった。
嫌な思いをさせてごめんなさい。」
ギュっと掌を握りしめて、言葉を紡ぐ。
「あの時も聞いたけど、
俺のこと、嫌いになったの??
リリの気に障るようなことしたかな?
それとも他に好きな人でも出来たの?
ずっと考えたけどわからないんだ。
何かしてしまったのなら謝る、直すよ。
だからっ」
「待って!!」
「リリ??」
「エリが悪いわけじゃないの。
わたしのせいなの。」
「もしかして、本当に好きな人が出来てしまった??」
掌に爪が喰い込むほど握りしめた。
なんでだよ・・
数週間でそんな変わるのかよ。
俺の気持ちはどうなるんだっ!
心は悲鳴を上げそうだ。
「違う!!!」
その声に目の前のリリに視線を向けると、彼女の頬を大粒の涙が伝っていた。
なんで泣くんだ??
泣きたいのは俺のほう・・
「リリ、今日で最後にするよ。
だから嫌でもしっかり決着をつけたい。
大丈夫、俺もだいぶ一人に慣れたよ。
これからも一人でやっていける。
でも、ごめん、コレだけは外さないでいいかな?
リリとの想い出を胸にこの先生きていく、
いつも君の幸せを祈っているよ。」
チャリと音を立てながら、左手首のブレスレットを見せる・・
言いたくもないことを頑張って言った。
笑えるはずがない、無理して笑った顔は苦しくクシャリと歪む。
「ごめんね、愛してるよ」
こんな時まで君は何も言わないんだね。
泣きそうになってる自分に喝を入れて、席を立った。
リリに聴こえる小さな声で「バイバイ」と残して。
店の出口へ向かい歩き出した。




