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姉妹催眠♡ ~親の再婚で幼馴染姉妹と家族になったけど、甘々長女はやたら密着したがるし、クール次女は嫉妬して催眠かけてくるのだが~  作者: みなもと十華@姉喰い勇者2発売中
第3章 甘々な日常

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第90話 文化祭デート

 俺たちのクラスの出し物は大盛況だった。主に、女子のメイド姿目当ての男子が多いからなのだが。

 多めに用意していた材料も底を突き、一部メニューは完売したほどだ。


「やっと落ち着いてきたな……」


 午後に入ってからは順番待ちも解消され、順番に休憩もできるようになった。まあ、パンケーキや一部ドリンクが品切れになったからなのだが。


「むぅ…………」


 さっきからシエルの視線が気になる。ジッと俺を見つめているようで、たまに視線が合うのが気まずい。


「どうしたんだ、シエル?」

 プイッ!


 俺が声をかけると、慌ててそっぽを向くのだが。何度も言うようだが、何で昼間は塩対応なんだよ。


「グヘヘ、大将」


 そんな俺のところに岡谷がやってきた。多少グヘりながら。

 てか、何で大将なんだよ?


「どうした岡谷」

「さすが安曇の旦那だぜ。クラスの陽キャをそそのかしてメイド喫茶をやっちまうなんてよ」

「文化祭にはメイドがつきものだろ。あと大将じゃなかったのかよ」


 いまいち大将なのか旦那なのか分からんな。


「どっちでも良いってことよ。それより眼福がんぷくだぜ。いつもは怖い陽キャ女子が、メイド服姿で『おかえりなさいませ岡谷様♡』って言ってる姿がよ。グヘヘッ」


 岡谷のグヘりが酷くなった。


「おいおい、誰も『岡谷様♡』なんて言ってないだろ」

「俺の脳内ではそう変換されてるんだよ。クラスカースト上位の陽キャ女子が、俺に跪く姿がな」

「やめておけ。女子にキモがられたらおしまいだ」

「ぐはっ!」


 岡谷の幻想は打ち砕かれた。まあ、カースト上位女子を屈服させるのが男子の夢なのは分からなくもない。

 そんなことを考えていると、そのカースト上位っぽい女子がやってきたのだが。


「安曇は休憩に入って良いよ。もうキッチンは暇になったし」

「ああ、じゃあお言葉に甘えて」


 俺がエプロンを外すと、岡谷もそれに倣う。


「岡谷、あんたはサボってたでしょ! こっち来なさい!」

「ひぃいいいっ! 許してくれぇ」


 岡谷は陽キャ女子に連行されてしまった。脳内妄想と正反対じゃないか。


「さて、どうしようかな?」


 ふと教室内を見回すと、ちょうとシエルも休憩に入るところだった。


「あっ、壮太……」

「シエルも休憩か?」

「うん」


 俺が声をかけると、シエルは何か言いたそうな顔で頷く。


 おいシエル、その目で訴えかけるような顔は何だ? もしかして、俺と文化祭デートしたいとか?

 待て待て待て、もし違ってたらキモがられるだろ。

 でも…………。


「えっと……その、文化祭……一緒に回るか?」

「うん」


 シエルが嬉しそうな顔になった。

 だからその顔だよ。誤解しちゃうだろ。シエルも俺を好きなんじゃないかって。


「じゃ、着替える」

「そのままで良いだろ。文化祭だし」


 メイド服を着替えようとするシエルを止めた。だってメイド服のシエルとデートしたいから。


「そ、壮太のエッチ……」

「くっ、何も反論できねえ」


 俺は金髪美女メイドと一緒に文化祭を回ることになった。そう、ジト目で俺を睨むシエルと。

「人が多いな」

「うん。そだね……」


 俺とシエルが校内を並んで歩く。家では距離が近いけど、学校では新鮮だ。

 まるで文化祭デートだな。


「シエル……」

「うくぅ♡」


 頬を赤らめるなよ、シエル! 俺まで恥ずかしくなっちゃうだろ! もう完全に初々しい付き合いたてカップルみたいじゃねーか!

 何か、何か話題を作らないと。


「あっ、あれは……お化け屋敷か?」


 廊下を歩いていると、やけにリアルなゾンビが目に留まった。そのゾンビの格好をした生徒が呼び込みをしている。

 ちょうどいいタイミングだな。


「シエル、あれに入ろうか?」

「ぐぬぬぬぬ……」

「何で怒ってるんだよ!?」


 しまった。思い切り外したか。

 そういえば、シエルって怖いの苦手だったよな。


「やっぱり別の――」

「入る。壮太が入りたいなら」

「えっ?」


 結局入るのかよ。



 ひゅぅ~どろどろどろどろ!

「「「ぎゃああああああ!」」」


 お化け屋敷の中は真っ暗だった。おどろおどろしい音楽と女子生徒の悲鳴が響いていて、余計に雰囲気が増している。

 制服の裾を掴むシエルから、微かな震えが伝わってくるようだ。


「ははっ、意外と本格的だな」

「そ、そそ、壮太、速い。先に行かないで」


 暗くてよく見えないが、シエルが怖がっているのは分かる。


「シエル?」

 ドドォーン!

「きゃああああああ!」


 何か話そうとした時、突然すぐ近くで大きな音が鳴り、悲鳴を上げたシエルが抱きついてきた。


「お、おい、抱きつくな!」

「怖い怖い怖いぃいい~!」


 最初は腕だけだったのに。もう、俺の胸に顔を埋めるように、シエルは全身で抱きついている。

 柔らかかったり良い匂いがしたりで、お化け屋敷どころじゃないぞ。


「あっちが出口だ。俺がついてるから」

「うん……うん……」


 俺は震えるシエルを抱きながら、光の見える方へと向かった。


「で、出たぞ。もう大丈夫だから」

「う、うん♡」


 これ、どういう状況? シエルが俺を放してくれないのだが。抱きついたままなのだが。

 ついでに、周囲の男子生徒の羨望の眼差しが集まっているのだが!


「おい、あれ」

「姫川さん、やっぱり安曇と……」

「くっそ、羨ましい」

「あの姫川女王をモノにするとか、安曇は何者だよ」


 モノにしてねーよ! 勝手な噂を流すんじゃない!

 このままだとヤバい。俺とシエルが付き合ってる疑惑が広がってしまう。


「シエル、あっちで休もうか?」

「うん♡ 行こっ♡」


 素直だな。どうしちゃったんだ?



 中庭のベンチに座った俺たちは、途中で買った女子バスケ部屋台のたこ焼きを広げる。


「意外とマトモなたこ焼きだ」


 もっとこう生焼けとか焦げ焦げを予想していたが、店のと比べても遜色がない。

 ただ、さっきまで素直だったシエルの態度が急変しているのだが。


「女バスの先輩と仲良いんだ?」

「えっ、それ? それで怒ってるの?」

「仲良いんだ?」

「べつに良くないよ。前に生徒会関係の仕事で顔見知りになっただけだぞ」

「ふーん」


 安心したような顔になるシエル。相変わらずよく分からんやつだ。


「食べるか?」


 爪楊枝つまようじで刺したたこ焼きを向けると、シエルはジッと俺を見つめてきた。


「フーフーして」

「は?」

「熱いから、フーフーして冷まして」


 あれっ? 今度は甘えん坊になったぞ。もしかして、こいつはシエルの顔をしたノエルねえかな?


「は、早く。冷ましてから食べさせて」

「分かった分かった。フーフー……ほら」

「あーん」


 どうしたんだシエル? まだ昼間だぞ。深夜の催眠時みたいに甘々なのだが?


「あっ、熱っ! はふはふ……」

「ぷっ! まだ熱かったか」

「むぅううっ! 壮太ぁ……はい、お返し」


 恨めしそうな顔をしたシエルが、たこ焼きのパックを奪い取る。爪楊枝で刺したのを、俺の口元に差し向けてきた。


「おい、それ熱いだろ」

「問答無用、仕返し」

「こらっ、あっ、はふっ! 熱っ!」

「あははは♡」


 熱がる俺を見て笑うシエルだ。ちょっとだけ女王様みたいで背筋が震える。


「シエルって絶対Sだよな?」

「ち、違う。普通……」

「普通かな? シエルと付き合う男は大変そうだ」

「べ、べつに大変じゃない。付き合ったら尽くす妻」


 妻じゃねーだろ! 付き合ったら結婚まっしぐらかよ!


「そ、それに……手料理も食べて欲しい……」

「えっ? シエル……」


 それって? あれだよな。俺が言った理想の……。

 シエルは赤い顔をしたまま黙ってしまった。

 女子と二人っきりで無言なんて、本当なら苦痛なはずなのに、不思議とシエルと一緒なら居心地が良い。


 このまま、ずっと一緒に居たい。もう、自分の気持ちを誤魔化せない。

 俺は……どうすれば。



 ◆ ◇ ◆



 無事にメイド喫茶を成功させた俺には、もう一つ重要な任務があった。

 そう、蝦夷共和国えぞきょうわこく作戦が!


 土方歳三ひじかたとしぞう

 新選組副長として、鉄の掟で隊をまとめ上げた彼は、現代でもドラマや小説や漫画などで人気を誇る人物だ。

 己の誠を信じ、日本各地を転戦し、ついには蝦夷えぞ(北海道)にまで舞台を移し散った姿は、誰しもロマンを感じるはず。


「よしや身は蝦夷が島辺に朽ちぬとも魂はあずまの君やまもらむ」

「安曇さん、そういうのは結構ですから。話を進めてください」


 土方歳三辞世の句を述べる俺に、三条先輩は冷静な顔でそう言った。


 くっ、だからこの先輩はノリが悪いんだよ。シエルならノリノリでツッコんでくれるのに。

 しかし俺って、いつもシエルのことばかり考えている気がするよな。さっきの昼休憩が決定的になった気が。


 ここは生徒会室。クラスのメイド喫茶が一段落した俺は、新選組のコスプレ衣装を持って抜け出したのだ。

 今は三条先輩に作戦内容を説明しているところである。

 ちょっと話しは逸れたがな。


 そう、これからミス富岳院を決める大事な戦いが始まるのだ。



 強烈にシエルを意識してしまう。それは深夜の催眠のせいなのか? それとも何気ない日常のせいなのか?

 変な作戦やってる場合じゃないぞ。

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姉喰い勇者と貞操逆転帝国のお姉ちゃん!

書籍情報
ブレイブ文庫 第1巻
ブレイブ文庫 第2巻
COMICノヴァ

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