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姉妹催眠♡ ~親の再婚で幼馴染姉妹と家族になったけど、甘々長女はやたら密着したがるし、クール次女は嫉妬して催眠かけてくるのだが~  作者: みなもと十華@姉喰い勇者2発売中
第3章 甘々な日常

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第86話 理想の彼女

「ひとななふたまる。これよりお姉陥落作戦(オペレーションノエル)を実行する。オーバー」

「こちらコードネームシエル、了解ラジャー作戦司令部コマンドポストの指示により作戦を実行する」


 学校帰りの商店街、電柱の陰に隠れた俺とシエルは、中二病っぽく軍事通信ごっこをする。気分はバトルアニメの主人公だ。


「くっ、女子とこんなマニアックな会話ができるなんて。シエルがオタクで良かったぜ」


 途中で我に返った俺は感涙にむせび泣く。オタク女子のシエルと変な遊びができる喜びに。

 ただ、当のシエルはオタクなのを否定しているのだが。


「ち、違う。オタクじゃなくて、ただのアニメ好き」

「まだそんなこと言ってるのかよ。温泉街でアニメのセリフを叫んだり、アキバでアニメヒロインに成り切る女子がよ」

「くぅ……あれは……」


 恥ずかしさで固まるシエルが可愛い。見た目は凛々しい超美人なのに、実は恥ずかしがり屋で初心うぶなのも魅力の一つだ。


「もうっ、そんなこと言ってないで、早くおねえのプレゼントを買いに行くよ」


 シエルが言うように、今日はノエルねえの誕生日プレゼントを買いに来たのだ。

 文化祭の準備でバタバタしていて、いつの間にか当日になってしまったのだがな。


「ノエルねえ、俺が忘れてるんじゃないかって焦っていそうだよな」

「分かる。おねえって、しっかりしてそうでいて意外とよわよわだから」


 シエルの言うように、コミュ力お化けのノエルねえだが、その実、寂しがり屋だったり嫉妬深かったりポンコツだったり。

 傍目はためには完璧美人に見えるけど、一緒に住んでる俺は知っているぞ。実生活はダメダメなズボラねえだとな。


「ふふふっ」


 つい顔がにやけてしまう。あの完璧美人ノエルねえのダメなところを知っている男は俺だけなのだと。


「壮太……思い出し笑いは怖い」


 俺がニヤニヤしているものだから、シエルにツッコまれた。


「う、うるせえわ」

「ほら、行くよ、壮太」

「お、おい」


 シエルが腕を組んできた。ななな、何だそれは。それじゃ彼女みたいじゃないか。

 これは買い物、これは買い物、これはデートじゃない。勘違いするな、俺ぇ!


 自分に言い聞かせる。勘違いしないようにと。


「そ、壮太♡ これって、何だかデートみたいだよね?」

「ああ、やっぱりデートみたいだったぁああ」


 シエルもそう思っていたのか。もう完全にデートじゃないか。


「ううっ♡」


 言い出したシエルも恥ずかしがっている。手のひらをパタパタと顔を冷ますようにして。




 最初は若者が多いファンシーショップだ。

 入口に今風っぽいJKがたむろしていて一人では入りづらい。今日はシエルと一緒だから良いけどな。


「ほら、壮太。こっち」

「お、おう……」


 何だこれ? もう完全にカップルみたいじゃないか。

 シエルはグッズに夢中になったのか、大きなぬいぐるみを手に取っているのだが。


「このサイのぬいぐるみとかどうかな?」

「この際家族ぐるみだとっ!? 待て、親子丼はヤバい!」

「は? 何の話?」


 シエルの目が鋭くなる。動物のぬいぐるみを抱えたまま。

 しまった。『この際』じゃなく動物の『サイ』だったのか。


「な、何でもない。ボーっとしてただけだぞ」

「やっぱり、お母さんを狙ってる?」

「ねねね、狙ってない、狙ってない!」


 慌てて俺は否定した。だから義母が好きなんて思われたら俺が終わる。


「あやしい」


 グイッと顔を近づけたシエルが、その鋭くも綺麗な目で俺を見る。


「あやしくねえって。俺と莉羅りらさんじゃ歳が離れてるだろ」

「そうだけど……。壮太って年上好きだから」

「年上が好きなんじゃねえって。姉キャラが好きなんだよ」

「やっぱりおねえが好きなんだ」

「誘導尋問かよ!」


 何でシエルは姉にこだわるんだよ。


「はぁ、おねえは美人で可愛くて良いよね」


 シエルは深く溜め息をついた。

 どうしよう、シエルのテンションが下がってしまったような?

 何とかしないと……。


「その……シエルだって美人だろ」

「ふぁあぁ?」


 目を丸くして変な声を上げるシエル。自覚がなかったのか?


「えっと、だからシエルは美人だし可愛いし、つい目を奪われると言うか……」

「えっ♡ ええっ♡ で、でも、おねえは皆に人気で、人から好かれるから」

「シエルだって面白いだろ。おもしれー女」

「は? それって褒めてるの?」


 途中までシエルは上機嫌だったのに、最後ので眉をひそめてしまった。

 マズい。言葉のチョイスが……。何とかせねば。


「だからさ、俺にとっては重要なんだよ。一緒にアニメの話で盛り上がったり。一緒にバカやったり。相手に求める条件って見た目だけじゃないだろ。気が合ったり、一緒に居て楽しいとか……って、俺は何を言い出してるんだ」


 しまった。つい理想の彼女像を語ってしまった。突然こんなこと言い出してキモいって思われそうだ。


「そ、そう……なんだ♡ えっ♡ ど、どうしよ♡ ううっ♡ そ、壮太のバカっ♡」


 あれっ? 何だか満更でもない感じが?


「お、おう……」

「うんっ♡」


 チラッ、チラッ、チラッ!


 シエルさぁああああぁ~ん! 何で俺の顔をチラ見してるんですか!? しかも付き合いたての初々しい彼女みたいな顔で。


「し、シエル、他の店も行ってみようか?」

「そそ、そうだね♡ うくぅ♡」


 これ完全に付き合ったばかりのカップルだよね!?

 どうすんのこれ!?


 ササッ!


 あれっ? 今、見たことのある金髪が一瞬だけ……? 気のせいかな?

 店の入り口付近に超絶美少女が立っていた気がしたのだが、たぶん目の錯覚だろう。


「ついにアニメヒロインの幻覚まで見るようになってしまったのか」

「壮太、早く行くよ。ハリーアップ」

「へいへい」




 次に入ったのはファッション系のテナントが多いショッピングモールだ。

 やっぱりデートっぽいよな。


「服はどうだろうか? ノエルねえに買わせると奇天烈きてれつなファッションになりそうだからな」


 俺が服屋を指差すと、シエルは小首をかしげた。


「服は本人が試着しないと難しいと思う」

「それもそうだな」


 そこまで考えていなかった。


「じゃあ、ダサいジャージにするとか?」

「は? バカなの」

「良い案だと思ったのに。ノエルねえのダサジャージ、もう使い込んでボロボロだから」

「私が言ってるのはジャージじゃなくてダサい方だよ」

「ダサくなきゃノエルねえじゃないだろ」


 俺の会心の一言に、シエルは呆れた顔になる。

 だってしょうがないだろ。ダサくて洗濯してなさそうなのもノエルねえの魅力なんだから。


「何だか壮太に言われてみると……おねえがダサ可愛い気がしてきた」

「だろ」


 やっぱりダサかった。

 んっ!?


 視線を感じて振り向くと、また艶やかで綺麗な金髪が一瞬だけ見えた。今度は気のせいじゃない。


「やっぱりあれって……」

「どうしたの、壮太?」


 シエルが肩を寄せた。

 ピトッと当たった肩にシエルの体温を感じてドキドキする。


「シエル……落ち着いて聞くんだ。決して振り返ってはいけない」

「は?」

「作戦名、お姉陥落作戦(オペレーションノエル)は失敗だ。ターゲットに気付かれた。オーバー」


 ハッとしたシエルが一瞬だけ振り返りそうになるが、堪えて俺を見る。


「こちらコードネームシエル、了解ラジャー作戦司令部コマンドポストの指示を仰ぐ」

「こちら作戦司令部コマンドポスト、シエルは気付かないフリを続けるのだ」

「コードネームシエル、了解ラジャー


 こんな時でもアニメのワンシーンっぽく会話する俺たち。もう完全にオタカップルだ。

 肩を寄せ合いイチャイチャするキモオタカップルに見えなくもない。


 サッ! ササッ!


 離れていたはずのノエルねえが、少しずつ距離を詰めてくる。


「むぅううううううっ…………」


 待て待て待て、すぐ背後にノエルねえの気配を感じるのだが! 何やってるんだよ、あのポンコツねえは? せっかく俺たちが気付かないフリをしているのに。


 くっ、仕方ないか。


 俺は、偶然を装いながら振り返る。大袈裟なリアクションで。


「あれぇ、ノエルねえジャナイカー」


 しまった、思い切り棒読みだった。


「きゃあっ! あっ、えっ、そ、その」


 すぐ近くまで来ていたノエルねえが、俺に見つかって後ずさる。尾行していたのがバレて気まずそうな顔で。


「ノエルねえも買い物?」

「そ、そうそう。買い物してたらね、そうちゃんとシエルちゃんを見かけてね」

「そうなんだ」

「それでね……えっと、あれっ、おかしいな……」


 ノエルねえの目に涙が浮かぶ。

 あれっ、何か誤解してないか?



 ミリオタっぽくデートするシエルと尾行するノエル姉。何をやっているのやら。

 それよりノエル姉の嫉妬が爆発しそう。

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姉喰い勇者と貞操逆転帝国のお姉ちゃん!

書籍情報
ブレイブ文庫 第1巻
ブレイブ文庫 第2巻
COMICノヴァ

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