表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/133

第59話 二倍になったぞ

 俺の耳にくっついたシエルが甘い声でささやく。それは脳をとろけさせるような心地よさで。


「ほぉら、壮太ぁ♡ いつもの催眠だよぉ♡」


 ぐああぁ! めっちゃキツい! いつもよりキツい! すぐ近くに皆が居るのにぃ!

 こんなのバレたらどうするんだ!?


「壮太、おねえとイチャイチャしてたよね? 蜷川にながわさんとも子づくりとか言ってたし」


 蜷川にながわさんは誤解なんだぁああ!

 ノエルねえのは言い訳できないけど。


「もう今日という今日は許さないぞ♡ 今夜は特別キツいのをお見舞いしちゃうんだからね♡」


 だから何でシエルは深夜だけ口調が違うんだよ! いつもは『しちゃうんだからね』なんて言わないだろ。

 てか、特別キツいのはやめてくれぇええ!


「ほらほらぁ♡ 触っちゃうぞぉ♡」


 シエルの指が俺の胸板を滑る。優しく撫でるようなフェザータッチで。


 お、おい、やめろ。おさわりは禁止だぞ。

 ぐああぁ! 撫でるな! くすぐったいって!


「ほらほらぁ♡ 声を出すとバレちゃうよぉ♡」


 何をやってるんだ! 俺は寝ている設定だろ!

 もう本格的にヤバい……。くすぐったくて我慢の限界に……。ど、どうすれば。


「こちょこちょこちょぉ♡ 壮太ぁ、オシオキだぞぉ♡」


 何だこのプレイ! 何だこのプレイ! 俺、責められてる? もしかして、俺がノエルねえをくすぐったから怒ってるのか?

 やっぱりシエルって女王様の素質あるよな。


「よし、今夜はイケナイところも触っちゃおう」


 俺をナデナデしているシエルの手が、徐々に下がってゆく。


 オイヤメロ! それは反則だぞ!

 ああぁ、大人の階段上っちゃうぅうう!


「ううっ♡ で、でも、恥ずかしいからやっぱ無し♡」


 で、ですよね。シエルはそのままで良いんだよ。

 ちょっぴり残念だけど、ピュアで初心うぶなシエルに感謝だぜ。


「壮太……そ、壮太ぁ」


 急にシエルの声が震えた。


「壮太って、おねえのこと好きだよね?」


 ギクッ!

 な、何でそれを……。


「見てれば分かるよ。いつもおねえを目で追ってるし。話しかけられると嬉しそうにしてるし。胸をチラ見してるし」


 胸はしょうがないだろ! 美乳Gカップなんだから!

 って、そうじゃなくて。


「壮太、小さい頃からそうだよね。ずっとおねえを好きだった。私、知ってるんだから」


 あれは……憧れみたいなものだったんだ。

 いつも優しい近所のお姉さんって感じで。

 でも、そのせいで俺の性癖が歪んだ気もする。あれから好きなアニメヒロインがお姉さん系になったような。


「ずっと寂しかった……。壮太、私のこと忘れちゃうし」


 それは本当に申し訳ない! 何で忘れちゃったのか自分でも不思議で……。


「でも、私のせいなんだよね? ごめんね、壮太」


 シエルのせい? そ、そうだ。あの雨の日。シエルとデートした日。何かを思い出したような?


 あれは幼い頃。

 倒れた俺。

 周囲に人だかり。

 泣き叫ぶシエル。

 そうだ、あの時俺は……。

 ダメだ! あとちょっとで思い出しそうなのに。


 俺が考え込んでいるうちに、再びシエルの声色が変わった。


「そうだ。壮太、蜷川にながわさんにキスされてたよね?」


 ヤベッ!

 でも手だろ? 許してくれ!


「他の子とキスするなんて許されないよ。裏切りは許さない。息の根を止めないと」


 だから息の根は勘弁してくれぇ~っ!


「ううっ♡ で、でも、壮太が居なくなっちゃうと困るから、息の根は許してあげる♡」


 ですよね! 息の根はダメだよね!


「よし、代わりに私もキスしよう♡」


 おいヤメロ!


「ふふっ♡ 壮太のくちびる奪っちゃうぞ♡」


 じょ、冗談だよな? ま、まさか!


「壮太ぁ♡ 初めてって言ってたよね? 壮太のファーストキスは私のもの♡ ふふふっ♡」


 ぎゃああああああ! や、やめろって! それだけは洒落にならないぞ! シエルも初めてなんだろ!?


「ううっ♡ そ、壮太のくちびるに……」


 や、やめろ! ダメだって!

 あれっ?


 すぐ眼前まで迫ったシエルの気配が止まった。


「うっ♡ ううっ♡ は、恥ずかしい♡ ムリぃ♡」


 た、助かった。シエルの恥ずかしがり屋が功を奏したか。

 良いんだぞシエルはそのままで。

 キスしちゃったら、明日からどんな顔して話せば良いんだよ。絶対意識しちゃうだろ。


「く、くちびるは無理でも、ほほなら……」


 お、おい、ダメだって!


「ちゅっ♡ やった♡ 頬にキスしちゃった♡」


 やりやがったぁああああ! こいつ、本当にキスしやがったぞ! 頬だけど!


「あっ、おねえ…………」


 ん? 何かシエルの様子がおかしいような?

 今、おねえって言ったよな?


「シエルちゃん?」

「お、おお、おねえ?」

「今の…………」

「ち、違っ」


 おお、おい、ノエルねえの声が聞こえたぞ。もしかして起きてるのか?

 まさか、今のを見られた!?


 ゴソゴソゴソ!

「くぅ……すぅすぅ……」


 シエルが布団にもぐってきた。

 おいシエル、今さら寝たふりとかダメだろ。それで誤魔化せるとでも思ってるのか?


 ゴソゴソゴソ!

 ヒタッ、ヒタッ、ヒタッ――


 今度は何だ? 足音が近づいてくるのだが!?


 ファサッ!

 ゴソゴソゴソ!


 えっ? 誰かが俺の布団に潜り込んできたぞ! ま、まさか!?


「そうちゃん♡」


 ノエルねえだったぁああああ! ノエルねえが俺の耳元でささやいているのだがぁ!

 ま、まさか? ノエルねえ、シエルに対抗意識を燃やしてるのか?


「むっ、壮太」


 予想通り、シエルまで対抗意識むき出しなのだが!


「そうちゃん♡」

「壮太ぁ♡」


 催眠が二つになたぁああああ! ダブル催眠かよ! 俺の両側から甘々な声で催眠がくるのだが!

 何だこれ! 何だこれぇ!

 両耳から二人の甘々ボイスが入ってきて、脳の中で反響しているのだが!


「そうちゃん♡ そうちゃん♡」

「壮太♡ 壮太♡」


 何でお互いに対抗意識燃やして催眠してるんだぁああ!


「そうちゃん♡ お姉ちゃんでちゅよぉ♡」

「壮太ぁ♡ こっちもお姉ちゃんだよぉ♡」


 うっぎゃぁああああ! ダブルお姉ちゃん催眠になったぁああああ! てか、何で赤ちゃん言葉だよ!?


「そうちゃぁん♡」

「壮太ぁ♡」


 もう許してぇええええええええええ!!


「おねえには負けないよ♡ 壮太は私のもの♡」


 シエルの熱い吐息が耳にかかる。もう魂まで隷属されそうな響きで。


「そうちゃん♡ シエルちゃんばかりズルいよぉ♡ お姉ちゃんにも構ってぇ♡」


 今度はノエルねえの甘々お姉ちゃんボイスが吹きかけられる。それはもう体が溶けるのではと思うほどに。


「壮太ぁ♡」

「そうちゃん♡」


 ぎゃぁああああああああ! もう許してぇええ!

 こんなエチエチなの耐えられなぁああぁああああい!



 ◆ ◇ ◆



 チュンチュンチュン――――

 窓から差し込む朝日と一緒に、小鳥のさえずりが聞こえてくる。そう、朝チュン展開だ。


「そうちゃむぅ! これ、どういうこと! マジでありえないんですけど!」

「あぁああああぁああぁん! 壮太君がぁああああ!」


 目を開けた瞬間、上から覗き込んでいた女子二人の絶叫が聞こえてきた。星奈せいな蜷川にながわさんだ。

 二人とも頭を抱えて苦悶の表情を浮かべている。


 そして俺の両側には気持ちよさそうな寝顔の姉妹。


 すまん、朝チュンと言ったが間違いだ。

 朝チュン展開じゃなく朝修羅(シュラ)展開だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

-


姉喰い勇者と貞操逆転帝国のお姉ちゃん!

書籍情報
ブレイブ文庫 第1巻
ブレイブ文庫 第2巻
COMICノヴァ

-

Amazonリンク

i903249
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ