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第57話 添い寝争奪ゲーム

 星奈せいな蜷川にながわさんが意気投合している。

 前は微妙な空気感だったはずなのに。


「ほらほら、王様ゲームやろっ!」

「壮太君争奪戦だよ」


 二人がグイグイ迫ってくる。


「ゲームは良いけど……てか、いつの間にか仲良くなってない?」


 俺の問いかけに二人は顔を見合わせる。


「だって、お風呂で裸見せ合った仲だし」

嬬恋つまごいさんって、話しやすいから」


 そう言って笑い合っている。


「それに、うちらライバルだし」

「敵を知ることは重要だよね」

「敵ぃ?」


 蜷川にながわさんが冷静な顔で『敵』と言って、星奈せいなが面食らった。


「冗談だよ、嬬恋つまごいさん」

「あすぴって、たまに怖くなるよね」


 不穏な発言もあるみたいだけど、仲が良くなったのは喜ばしい。


「それより俺争奪ってどういう意味?」


 俺が星奈せいなを見ると、彼女は黙って敷き詰めてある布団を指さす。


「えっ? 布団……?」


 部屋には布団が敷いてあった。俺たちが温泉に入っているうちに女将おかみが用意したのだろう。

 一、二、三、四…………。


「って、四枚しかねえっ!!」


 敷いてあるのは布団四組だけだ。その中の一組だけ、ご丁寧に枕が二つ並べてある。新婚さんみたいに。


「そういうこと」


 すでに星奈せいながトランプをシャッフルしていた。


「ちょっと待て、付き合ってもない男女が同衾どうきんなんてダメだろ」

「そうちゃむって真面目だよね。で、でも、そういうとこ、す……ごにょごにょ」


 途中から手つきが怪しくなった星奈せいなが、パラパラとトランプを落とした。

 急にどうしたんだろ?


「壮太君、私が勝ったらいっぱいサービスするからね♡」


 一方、蜷川にながわさんの目がマジだ。

 何としても彼女だけは勝たせてはいけない。絶対間違いが起こってしまう。


「そうちゃん! ふ、不純異性交遊は認めません!」


 どの口が言ってるんだノエルねえ

 さっき添い寝をさせろと言ってたのを忘れたのか!?


「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ!」


 シエルは相変わらず『ぐぬぐぬ』していた。


「よし、もう一組の布団を用意させよう」

「「「「却下!」」」」


 そして俺の提案は秒で潰されるのだった。

 まあ、部屋が狭いので、布団四組でいっぱいなのだが。



「じゃあ始めるよ!」


 星奈せいなの声でゲームはスタートした。ルールも聞いていないのに。


「ところで、さっき王様ゲームって言わなかった?」


 俺の質問をスルーして、星奈せいなは黙々とカードを配っている。


「おい、先にルールを教えろって」

「んっ? そんなの勝った人が王様になって何でも命令できるに決まってるし」

「は? それヤバくないか? 俺が変な命令するとか考えないのかよ?」


 俺の話を聞いた彼女たちは、それぞれ違った反応をする。

 真っ先に蜷川にながわさんが身を乗り出した。


「むしろ変な命令をして欲しいんだよ、壮太君! わ、わわ、私ね♡ 壮太君の子供が欲しいな♡」


 完全アウトォオオオオ!

 やっぱり一番要注意人物だぞ! 彼女が勝ったら、この歳でパパになっちゃう!


「そそ、そんなの私が許しません!」


 蜷川にながわさんを遮るよう、ノエルねえが間に入ってきた。


「不純異性交遊禁止ぃ! そうちゃんは私が面倒見ます」

「おいこら、面倒をかけるの間違いだろ。ズボラねえ


 ついツッコんでしまった。


「ず、ズボラじゃないから! そうちゃん、皆の前ではシーだよ」


 慌てたノエルねえが、人差し指を口に当てる。

 部屋が汚いのや私服がダサジャージなのがバレたら恥ずかしいのかな。

 

「で、でも、いきなりエッチとかやり過ぎだし♡ あ、アタシ、裸は結婚を前提としないと♡」


 恥ずかしそうに目を逸らしたのは星奈せいなだ。

 むしろこのギャルが一番清純派な気がしてきたぞ。


「どどど、どうしよ、どうしよ……」


 訂正しよう、シエルが一番お子ちゃまだ。

 子づくりでも想像したのか、一人でオロオロしている。

 深夜の催眠だけ大胆なのに、変なやつだな。


 そんなこんなで、それぞれの思惑を含んだ王様ゲームが始まった。

 ただ、直に命令するのは危険なので、あらかじめ紙に書いた命令を引くルールに変更させたのだが。




「えっと、これかな? きゃあぁ」


 ノエルねえがババを引いたようだ。顔に出ているので丸分かりなのだが。

 これなら俺も楽勝だ。


「これだな」

「なんでぇええ~」


 俺が引いたのはババではない。

 当然だ。ノエルねえが分かりやす過ぎてイージーモードだぞ。


「はい、そうちゃむ♡」


 星奈せいなは特に気負っていない。持ち前の明るさで楽しんでいる。


「ぐぬぬぬぬ……」


 氷の女王顔でプレイするのはシエルだ。

 最初こそオロオロしていたのに、勝負が始まると真剣な表情になった。カードを引く横顔が綺麗で、つい見惚れてしまう。


 くっそ、変な女なのに。夜中に催眠する女なのに。見ているだけでドキドキするのだが。

 もう完全にシエルの術中にハマっている気がするぞ。実はシエルって男を手玉に取る魔性の女なのでは?


「じゃあ私の番ね」


 蜷川にながわさんがシエルのカードに手を伸ばす。


「壮太君♡ 壮太君♡ 壮太君♡ 壮太君♡」


 やっぱり蜷川にながわさんが怖い。何か禍々しい情念を感じるぞ。

 何としても子づくりだけは阻止せねば。このままでは学生結婚になってしまう。


 そして――――


「上がり!」


 一位はシエルだ。

 順に、俺、蜷川にながわさん、星奈せいなと続き。ビリは案の定ノエルねえだった。


 シエルが命令を書いた紙が入った袋に手を伸ばす。


「これっ!」


 紙には【王様が四位の人とハグをする】と書かれている。


「しっえるぅ~ん♡」

「きゃーっ! 抱きつくなぁ!」


 嫌がるシエルが星奈せいなの熱烈なハグを受けている。これはこれで良いものだ。



 第二戦、勝者は蜷川にながわさん、以下、シエル、俺、星奈せいな、ノエルねえの順だ。


 命令は【王様が壮太君にキス】だった。

 誰だ、こんな命令を書いたのは!?


「やったぁああああああぁああっ!」


 蜷川にながわさんが、まるでオリンピックで優勝した選手みたいなガッツポーズをしている。

 やっぱり彼女だったか。


「そそ、壮太君! や、やるよ♡」

「ちょ待て! ダメだって! 俺、初めてなんだから」


 凄い圧で迫ってくる蜷川にながわさんの顔を、俺はとっさに手で止めた。


「ダメダメダメダメ、ダメぇええええ!」

「そうちゃむ! キスは禁止だしぃ!」

「こら壮太ぁああ!」


 他の三人も一斉に止めに入ってきた。

 このままじゃ修羅場間違いなしだぞ。何とかしないと。


蜷川にながわさん、さすがにキスはやり過ぎだって」

「でも、王様の命令は絶対なんだよ」

「せめて頬……いや、手にしようか?」

「むぅううううっ」


 あからさまに不満顔の蜷川にながわさん。この子、大人しそうに見えて、意外と強引だよね。


「手でダメなら、この命令は無しに――」

「やるっ! 手で良いから。ご、ごめんね」


 ヤンデレ目になった蜷川にながわさんが縋りついてきた。ちょっと怖い。


「行くよ♡」

「お、おう……」


 俺は右腕を彼女に向ける。まるで蛇に睨まれた蛙みたいな気持ちで。


 ああ、シエルが暗殺者ヒットマンみたいな顔になってるぞ。ノエルねえも悲しそうな顔に。ごめんな。


「壮太君♡」


 何故か蜷川にながわさんが俺の浴衣を捲るのだが。それ、何をしようとしてるんだ?


「ちゅっ♡」


 手と言ったら手の甲にすると思うだろ? しかしそこは蜷川にながわさんだ。腕の付け根辺りにキスしたのだが。少しわきに掛かりそうな部分に。

 これ、ギリギリ手なのか?


 でも一瞬だ。すぐ終わるからな。


「んっ♡ んんぅ♡ ちゅ♡ ふぉうたくぅん♡」


 ヤバい、くすぐったい。

 あれっ? 長くね? 長いよね?


「んん~っ♡ んふっ♡ ん~ん♡」

「って、長いし! もう終わり!」


 若干じゃっかんキレ気味の星奈せいなが、キスし続ける蜷川にながわさんを引っぺがした。


 あ、危なかったぁ……。長くて温かい蜷川にながわさんの舌が、あとちょっとで腋に滑り込んできそうだったぞ。

 止めてくれたギャルに感謝だな。



 第三戦、続いての命令は【王様がビリの人をくすぐる】というものだ。

 まあ、俺が書いたやつだが。


 もちろんビリはノエル姉。皆の前で羞恥プレイが始まった。



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