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甘々姉と嫉妬妹に愛されすぎる同居生活♡ ~親の再婚で幼馴染姉妹と家族になったけど、どっちも愛が重くて寝かせてもらえないのだが~  作者: みなもと十華@書籍&コミック発売中
第1章 思い出の少女

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第39話 約束

 ピキッ!


 何か不穏な音が聞こえた気がする。シエルの方から。蜷川《にながわ》さんの放った『告白』という言葉により。

 それは春雷のように、一気にシエルの表情が曇った。


『えっとね、ごめん。いきなりだったね』


 一方、電話の向こうの蜷川《にながわ》さんはテンパっている。何を話そうとしているのか分からない。


「蜷川《にながわ》さん、一旦落ち着こう」

『お、おお、落ち着いてるよ』


 だから挙動不審なんだって!


「深呼吸をしようか?」

『すーはー……』


 蜷川《にながわ》さんは俺の言う通り深呼吸をする。素直な子だ。


 しかしシエルが心配だな。今の、聞いてたよな。

 まさか蜷川《にながわ》さんも、シエルが居るとは思わないだろうし。


 何度か深呼吸した蜷川《にながわ》さんが、再び話始めた。


『さっきはごめんなさい。あのね、助けてくれたお礼をしたいの』


 おい、告白の話はどこに行った!?


「お礼?」

『うん、安曇君は私の恩人だから』

「そんな大袈裟な。気にしなくても良いよ」

『私が気にしちゃうよ!』


 いつも大人しい蜷川《にながわ》さんにしては、強い口調だった。


『だからね、私にできることなら何でもしてあげたいの』

「ななな、何でもとかダメだよ」


 ちょっと蜷川さん、軽はずみに『何でも』とか言っちゃダメだって! 男がその気になったら大変なんだぞ。

 ただでさえ蜷川《にながわ》さんは男性恐怖症なのに。


 しかし彼女は一歩も引かない。


『安曇君になら何されても良いよ』


 ちょぉーっと待ったぁあ! それ、どういう意味だよ!?


『ほら、私、安曇君になら触られても大丈夫だったし。それに告白の件も……。安曇君が告白してくれたから。だから、私にできることなら、何でもしてあげたいな。だ、大丈夫だよ。エッチなことも勉強したから。任せて』


 任せてじゃねぇー!


 蜷川《にながわ》さんの爆弾発言が止まらない。

 やっぱりこの子は真面目なのに思い込みが激しい。


「ちょ、ちょっと待って。だから自分を大切に……」

『また休み明けにね。私、頑張るから。そ、壮太君♡ きゃ、言っちゃった♡』


 ツーツーツー――


 電話が切れた。

 名前呼びと、一方的に『エッチもOK』という問題発言を残して。

 どうすんだ……。


 ズゥウウウウウウーン!


 案の定、シエルの機嫌が悪くなっている。

 ただ、いつもの氷の女王や暗殺者《ヒットマン》みたいなのじゃなく、暗く沈んだ表情だ。

 茫然自失と言っても過言ではないかもしれない。


「あの、シエル?」


 声をかけても反応が薄い。何かを考え込むように。


「シエル?」

「壮太……告白って何?」


 やっとシエルが口を開いたかと思ったら、一番触れて欲しくない部分だった。


「それは……」

「ねえ、壮太。ねえ……」


 シエルの目がマジだ。これは説明しないとどうしようもないか。

 ノエル姉にはバレてるし、もう正直に言うしか……。


「実は俺、蜷川さんに告白して……。それで振られてるんだよ。も、もう一年以上前だけどな」


 話を聞き終えたシエルは、固まったまま動かない。うなだれるように顔を落とし、その綺麗な濡れた髪が垂れ下がる。


「シエル?」

「……そつき」

「えっ?」

「嘘つきっ!」


 シエルが声を荒げた。

 いつもクールでダウナー系なシエルが。


「そうちゃん言ったよね? ずっと一緒だって。ずっと私を守ってくれるって。離れ離れになっても、いつかきっと一緒になれるって。それなのに……酷いよ! 他の子と付き合うだなんて!」


 シエルの想いが止まらない。あの超美人顔を苦しそうに歪ませて。これまで我慢してきた想いを、全て吐き出すかのように。


「シエル、それって……」


 ずっと一緒? いつの話だ? ううっ……思い出せない。何で俺は忘れているんだ? 大事な思い出な気がするのに。


 ザァアアアアアアア!


 東屋《あずまや》を出たシエルが雨に打たれる。

 ダークブロンドの髪が顔に張り付く。

 力なく下がった肩も、光を失った瞳も、全てが痛々しい。


 どうして…………。

 どうしてこんなことに。

 さっきまで楽しそうに笑ってたじゃないか。

 映画を観て。オタク的な話で盛り上がって。カラオケで勝負して。ゲーセンでぬいぐるみをゲットして。


 シエル……お前の抱えているモノは何なんだよ?

 ずっと、ずっとずっと過去に囚われて。

 一体、何がお前をそこまで……。


 ザァアアアアアアア!


「もうヤダよ。そうちゃんのバカぁああああああああ!」


 シエルが走り出した。雨に濡れることも厭《いと》わず真っ直ぐに。


「おい、待て!」

「バカバカバカぁああああああ!」


 プププゥウウウウ――――――――!!


 その時、公園に面した道路からクラクションが鳴った。


「危ない!」

「えっ?」

「間に合えぇえええええええええええええええ!」


 頭が真っ白だ。でも俺の脚は限界を超えて動いた。シエルに向け一直線に。


「俺は、もう二度とシエルを離さないぞぉおおおお!」

 ズザァアアアアアアアアアアアアーッ!


 ギリギリだった。俺はシエルに飛びつき横に飛んだ。歩道に転がるように。

 地面を滑った時に擦ったのだろうか。体があちこち痛い。

 でもきっとシエルは無事だろう。俺が下敷きになったから。


「そうちゃん! そうちゃん! そうちゃぁああああぁん!」


 シエルの声が聞こえる。

 そうだ、シエルの声だ。

 あの声はシエルの声だったんだ。


『そうちゃん! そうちゃん! 死んじゃヤダぁああああああ! そうちゃぁぁぁぁーん!』


 これは……夢か?

 そうだ、俺は夢を見ている。


『そうちゃん! ごめんね! ごめんね! 私のせいで! わぁあああああああぁん!』


 何だろう? 凄く懐かしい気がする。

 俺は何を………………。

 周囲に人が集まってきた。


『子供が轢かれたぞ!』

『誰か救急車を!』


 何だろう? この記憶は?

 やけに騒がしいな……。

 夢……だよな?


「そうちゃん! そうちゃん! 目を開けて! また私が迷惑をかけちゃった! そうちゃぁああああぁん!」


 目を開けると、心配そうに俺の顔を覗き込んだシエルがアップになっていた。


 ん? 今のは夢だったのか?

 俺は無事だよな?

 あれっ? シエルが泣いてるぞ。


「シエル、無事でよかった」


 俺が声をかけると、シエルはもの凄い勢いで抱きついてきた。


「そうちゃん! バカバカぁああ! 死んじゃったのかと思ったぁあ!」

「ぐえっ! こ、これくらいで死ぬわけないだろ。大袈裟だな」


 シエルを抱えながら上半身を起こす。

 滑った時に服が破けて擦りむいたみたいだ。ちょっと痛い。


「ごめんね。ごめんね。私、また……」


 泣き崩れるシエルを見ていると、何だか分からないけど愛おしさが込み上げてくる。どうしようもない甘く切ない想いが。


 そうだ。俺は誓ったはずなんだ。シエルを守ると。

 小さな頃の記憶が欠落しているけど、それでもシエルを守るという想いだけは消えていない。


 俺はシエルの顔に張り付いた髪をかき上げる。


「怪我はないか?」

「うん、うん……でも、そうちゃんが」


 そうちゃんか……懐かしい気がする。

 昔、そう呼ばれていたんだよな。たぶん。

 シエルを安心させないと。

 そうだ、俺はシエルを……。


 ガシッ!


 シエルの肩を掴む。絶対に離さないという想いを込めて。


「シエル! 無事でよかった。心配させるなよ」

「そうちゃん……」


 シエルの瞳が揺れている。宝石のような瞳に、キラキラ光る雫を溢れさせながら。


「言ったろ、俺がシエルを守るって。昔のことはよく覚えてないけどな。これだけは分かるんだよ。シエルが大切だし一緒に居たい。シエルには泣いてほしくないし悲しんでほしくない。ずっと笑顔でいて欲しいから」


 ガバッ!

「ぐえっ!」


 あちこち痛い体に、シエルのタックルのようなハグが効く。思い切り飛び込んできたのだが。

 再び水溜まりに逆戻りだ。


「そうちゃん、そうちゃん、そうちゃぁああああぁぁん!」

「シエル……苦しい……」


 シエルが俺の上に乗っているものだから、俺は地面に倒れたままだ。そう、水溜まりに浸かったまま。

 早くどいてくれ。




 そして俺は風邪をひいた――――


 ゴールデンウィーク二日目。俺は風邪で寝込むことになる。

 この風邪が、人生最大の貞操危機に直面するなど、誰も知る由もなかったのだがな。



 ほんの少しだけ記憶の断片を見た壮太は、思い切り告白みたいなセリフを言ってしまう。

 これは深夜の催眠も激しくなりそうな予感です。


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 モチベアップします。

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