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甘々姉と嫉妬妹に愛されすぎる同居生活♡ ~親の再婚で幼馴染姉妹と家族になったけど、どっちも愛が重くて寝かせてもらえないのだが~  作者: みなもと十華@書籍&コミック発売中
第4章 愛とお仕置きと運命と

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第131話 幸せの催眠

「あら、お帰りなさい」


 先走っていた俺に、莉羅りらさんから声がかかった。


「どうしたの壮太君、そんな所で話してないで上がったら?」


 莉羅りらさんの言葉でハッとする。緊張からか、早く伝えなくてはとの焦りからか、また俺はやらかしていたようだ。

 話をするにしても落ち着いてからだよな。


「ん? そうちゃん、どうしたの?」


 話を中断されてノエルねえが戸惑っている。


「ノエル姉、後で部屋に行くよ」

「うん」


 リビングのテーブルに買ってきたお土産を並べながら、首をかしげているノエルねえに八つ橋を渡す。


「はい、定番の小豆に、クリームとチョコと抹茶とミント」

「うわぁ、どれから食べようかな?」


 嬉しそうに見比べているノエルねえを見ていると、やっぱりあれを言いたくなる。


「一度に食べると太るよ」

「太らないよ! ふ、太ってないよね!?」


 大丈夫だ。太ってないから。


「ノエルねえは胸に栄養が……」

「こらぁあああぁ!」


 胸を隠しながらプリプリするノエルねえだが、余計にGカップが強調されて逆効果だ。

 もうわざとやってるだろ。




 やっと落ち着いた俺は、シエルと一緒にノエルねえの部屋に向かった。

 相変わらず部屋は散らかっていて足の踏み場が無い。


「ノエル姉、部屋の掃除を……」

「ひゅーひゅー」


 俺が脱ぎ散らかした服を手に取ると、ノエルねえは吹けない口笛を吹こうとする。

 おっと、今はそんな場合じゃない。


「えっと、その……」

「そうちゃん、何かあったの? 帰ってきてから変だよ」


 気づかれてた。ノエルねえって、普段おっとりしているようでいて、意外と鋭いんだよな。


「ご、ごめん! ノエルねえ

「ごめんなさい」


 俺が頭を下げると、シエルもそれに倣った。


「えっ、ど、どうしたの?」


 目の前で義弟と実妹に謝られ、ノエルねえはオロオロとする。

 でも、言わなきゃ。


「俺は……俺とシエルは付き合うことになったんだ」

「えっ」


 驚きでノエルねえが目を見開いた。


「その、修学旅行で一緒になって、改めてシエルの大切さを知ったというか……。俺が告白して。その……正直なところ、ノエルねえも大好きなんだ。今でも三人でいられたらって思う。でも…………」


 すっく!


 ノエルねえは黙ったまま立ち上がり背を向けた。


「そ、そうなんだ。良かったね」

「あの、ノエルねえ?」

「シエルちゃんは良い子だから幸せにするんだよ」

「ノエルねえ……」

「小さな頃から仲良しだもんね。お似合いだよ。ホント良かった……」


 ノエルねえの肩が小さく震えている。


「あっ、私、ちょっとコンビニにお菓子買いに行かなきゃ」

「ノエルねえ!」


 バタンッ!


 部屋から飛び出したノエルねえの後を追をうとする俺だが、残されたシエルの方を振り返る。


 どうする? この場合の正解は?

 ノエルねえを追うべきだって分かってるんだ。

 俺はシエルを選んだのに。シエルを置き去りにして良いのか?

 でも、俺は見ちゃったんだ。

 祝福してくれたノエルねえだけど、その目には涙を浮かべていたのを。


「壮太、行って! おねえが心配」

「お、おう」


 シエルの声を背に、俺は部屋を飛び出した。

 何が正解かなんて分からない。

 でも、俺は大切なんだ。シエルもノエルねえも。




 ダッタッタッタ!


 もう夜の十時を回り辺りは真っ暗だ。

 玄関を出て闇雲に走ってみたけど、ノエルねえの行き先が分からない。

 まさか、本当にコンビニでお菓子やけ食いしてるとかじゃないよな?


「考えろ! 考えるんだ! ノエルねえの行きそうなところを」


 ノエルねえが引っ越してきて半年だ。行きそうな所なんて限られているはず。きっと子供の頃の……。


「そうだ! あの公園!」


 小さな頃に遊んだ公園だ。俺と姉妹を繋ぐ記憶といえば、それしか思い浮かばない。

 きっと公園に居るはずだ!




「って、居ない……」


 全力疾走した俺は、飛び出しそうに鼓動する胸を押さえながら小さな公園を見回す。

 そこにノエルねえの姿はなかった。


「そ、そんな……」


 普通、こういう時はブランコで一人佇んでるはずだろ。ノエルねえは普通じゃなく、ちょっと変わってるかもしれないけどさ。

 何処に行ったんだよ。


「あっ」


 公園を出ようとした俺だが、東屋の柱の陰に光る何かに目が留まった。

 夜の闇の中でも金色に光る髪に。


「何で隠れてるの? ノエルねえ

「きゃっ」


 柱の陰に隠れていた人に声をかけると、そのダークブロンドの髪をした少女がビクッと肩を震わせた。


「そうちゃん……」

「ノエルねえは、もう少し自分の存在感を自覚するべきだよ」


 闇夜の中でも目立つとか、まるで星のような人だ。

 本当に月というか太陽というか。


 パシッ!


「きゃっ」

「逃がさないよ」


 俺はノエルねえの手を掴み逃げられないようにする。ここで逃がしてたまるか。

 逃げるのを諦めたのか、ノエルねえは無理やり笑顔を作った。


「もうっ、ダメでしょ。シエルちゃんの近くに居なきゃ」

「ノエルねえが心配なの」

「そうちゃんてば優しいんだよね。でも、その優しさが残酷だよ」

「ノエルねえ……」


 明日美さんにも言われたような?


「でも、これで良かったんだよね。幼い頃に私がそうちゃんに掛けた催眠の通りになったんだから」


 ん?


「私ね、そうちゃんとシエルちゃんが喧嘩ばかりしてるのを見て、もっと仲良くなれるようにって思ってね。テレビで見た催眠術を掛けてみたの」


 えっ? ノエルねえは何を言ってるんだ?


「えへへっ、そうちゃんって単純でしょ。だから催眠が掛かりやすいんだよ」

「は? えっと……」


 催眠? 催眠を掛けたのはシエルじゃないのか?

 ノエルねえは指を俺に向け、何やら囁き始めた。


「こうやってね。『そうちゃんはシエルちゃんを好きになる。シエルちゃんを守りたくなる。そうちゃんとシエルちゃんは仲良し』って」


 それシエルの催眠そのまんまじゃないか! 待て、最初にやったのはノエルねえなのか?

 えっ、俺って姉妹両方から催眠を受けてたのか? 姉妹そっくりだな。


 そのノエルねえだけど、お姉ちゃんの顔になって話し続ける。


「これで良かったの。シエルちゃんね、そうちゃんの記憶が消えてからとても落ち込んじゃったのよ。もう見ているのが辛いくらい。でも、最近は凄く楽しそう。だから、シエルちゃんを幸せにしてあげてね」


 これで良い? 良いのか?


「ふふっ……私ね、本当はあざとかったり計算だったんだよ。天然のふりして密着したり、隣の席をキープしたり。シエルちゃんを応援していたはずなのに、ちゃっかり私もそうちゃんと恋人になろうって企んで……」


 こんな結末なんて良いわけあるか! だってノエルねえは泣いてるじゃないか!

 そうだよ、子供の頃からちゃっかりしてるくせに、最後は人に譲っちゃうんだ。お人好しなんだ。

 心からシエルを大切に想っているから。


 ガバッ!


 俺はノエルねえを抱きしめていた。体が勝手に動いて。


「ノエルねえは誰にも渡さない」

「そうちゃん、ダメだよ。シエルちゃんのとこに行ってあげないと」

「シエルを大好きだ。でも、ノエルねえも同じくらい大好きだ」

「ふぇえええぇ♡」


 抱きしめた腕の中にノエルねえの体温と匂いを感じる。ドキドキと心臓の鼓動まで。

 心地よくてずっとこのままでいたい。


「無理するなよ、あざとねえ

「あざとねえはやめてぇ~」


 本当にこのおねえときたら。


「ノエルねえって、完璧美人に見えるけど本当にポンコツなんだよな」

「ええっ?」

「汚部屋だし、ぐうたらだし、ダサジャージだし、スケベだし、食いしん坊だし、抜け目ないし」

「ちょっと、そうちゃん!」

「でも、本当は優しくて妹想いのお姉ちゃんなんだ」


 ぎゅっ!


 ノエルねえの腕が俺の背中に回る。

 お互いに抱きしめる形だ。

 これ、OKって意味で良いのかな?


「俺、シエルに説明するから」

「ううぅ♡ 嬉しいけど、良いのかな?」

「何度も説明するから。あと莉羅りらさんにも」

「お母さんにも!?」

「娘さんを両方くださいって」

「それはダメだよぉ」


 ちゃんと説明しよう。莉羅りらさんがショックで倒れそうな気もするけど。


「そうちゃん♡」


 ん? ノエルねえの目がとろんと蕩けてるような? 凄くエッチな顔だぞ!


「そうちゃん♡ する?」


 ポコッ!

 俺は容赦なくチョップを入れた。


「いたぁ~い! 酷いよぉ、そうちゃん」

「そういうとこだぞ、スケベねえ

「スケベじゃないもん♡ そうちゃんだって、そういうとこだよ。何度も何度もその気にさせて、おあずけばかりでぇ」


 それじゃ俺がエッチに焦らしてるみたいじゃないか。


「ノエルねえがエッチなだけだろ」

「そうちゃんだよ!」

「ノエルねえ!」

「そうちゃん!」


 またやってしまった。


「うふふふふっ♡」

「あははは」

「もうっ、そうちゃんったら♡」

「行こうか」

「うん♡」


 こうして俺はノエルねえと手を繋いで家路を辿るのだった。

 シエルのお仕置きを予感しながら。



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姉喰い勇者と貞操逆転帝国のお姉ちゃん!

書籍情報
ブレイブ文庫 第1巻
ブレイブ文庫 第2巻
COMICノヴァ

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