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甘々姉と嫉妬妹に愛されすぎる同居生活♡ ~親の再婚で幼馴染姉妹と家族になったけど、どっちも愛が重くて寝かせてもらえないのだが~  作者: みなもと十華@書籍&コミック発売中
第4章 愛とお仕置きと運命と

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第127話 プロポーズ?

 観光客や修学旅行の学生で混雑する祇園の街。

 その人混みの中、俺は勢いよく地面を蹴りつけ走り出した。岡谷の声を背に受けながら。


「行け、安曇! 男を見せろ! 美少女ゲームの主人公のようにな!」

「おう! やってやるぜ!」


 美少女ゲームの主人公かどうかは分からないが、俺の心は燃えていた。省エネモードとか言ってたのが嘘みたいに。


「何処だ! 確かこの辺りの店に……」


 シエルの入った店を覗いてみるが、別の店に移ったのか姿が見えない。

 俺は手当たり次第に店を覗いてゆく。


「クソッ! 俺は何をやってたんだ!」


 今頃になって気づくなんて。いや、ずっと前から気づいていたはずなんだ。

 いつもふざけてばかりいたけど、もっと真面目に向き合うべきだったって。


「あっ!」


 何件目か忘れたが、和菓子屋の中から出てきた煌めくダークブロンド女子を見つけた。

 その後ろ姿だけでシエルだと分かる。


 ただ、何故か隣に須坂すざかまでいるのだが。


 ドクンッ!


 俺の胸がドキッと鼓動する。

 シエルが他の男と一緒の光景を見て、形容し難い不安と胸の痛みが湧き上がった。

 背の高い陽キャイケメンが超美形のシエルと並び、一瞬だけお似合いだと思ってしまったから。


 何で須坂が! ダメだ! 俺のシエルに近づくな! シエルは俺のだ! 誰にも触れさせない! 誰にも渡さない!


「シエル!」

「えっ?」


 声をかけると、シエルはキョトンとした顔で振り返った。


「おっ、安曇じゃん。どうした? 怖い顔して」


 須坂も俺を見る。戸惑った顔になって。


「須坂、ちょっとどいてくれ。シエルに用があるんだ」

「お、おう。って、姫川さんとは偶然会っただけ――」


 何か言いかけている須坂を強引にどけると、俺はシエルと真っ直ぐ向き合った。


 ドクンッ! ドクンッ! ドクンッ!


 心臓が飛び出そうなくらい胸が弾んでいる。色々と伝えようとしていたはずなのに、全部頭から飛んでしまった。


 あれっ? な、何を言おうとしてたんだっけ? お、落ち着け! とにかく伝えるんだ。俺の気持ちを。


「す、好きだ、シエル! 大好きだぁああああ!」


 い、言った。ドストレートに。

 周囲からどよめきが起こっているうような?


「そ、そうちゃむ!?」

「壮太君!?」


 星奈せいなと明日美さんの声が聞こえた気がする。きっと気のせいだろう。


「そ、それで……その……」


 しまった! この後、何を言うか完全に忘れた! でも伝えないと! 俺の想いを!


「だから、シエル! 俺は気づいたんだ! 俺にはシエルが必要だって! 俺の気持ちは変わらない! あの幼いころからずっと! ずっとずっと!」


 興奮で頭がボーっとしている。脚が震えて自分の脚じゃないみたいだ。

 こんなの今までの人生で無かったぞ。

 でも、もう戻れない。突き進むしかない。


「いつもあの公園で遊んでたよな。家に居づらいからって、いつも公園に行って。俺がマジカルメアリーごっこをして。シエルが俺の後をついてきて。そうだ! あの時間が俺には宝物のように大切な時間だったんだ! 辛くて悲しいことがあっても、シエルと一緒なら笑顔になれたんだ! 一時は事故で忘れちゃったけど。でも、今なら分かる。俺にとって一番大切な記憶なんだって!」


 もう止まらない。次から次へと想いが溢れてくる。


「だから何処にも行くな! 俺の側に居れくれ! シエルが好きだから!」


 言え! 言うんだ!


「俺と、俺と結婚してくれ!」


 あっ、ヤベッ! 間違えた!

 付き合ってくれって言おうとしたのに、いきなり結婚を申し込んでしまったのだが!


「え、えっと……」


 俺は頭を下げ手を伸ばした求婚ポーズのまま、恐る恐る薄目を開ける。

 シエルは目を潤ませながら俺を見つめていた。


「は、はい。不束者ふつつかものですが……よろしく」


 シエルは真っ赤な顔で、俺の伸ばした手に自分の手を重ねた。

 まさかのOKだと!


「えっ、あれっ? け、けけ、結婚?」

「うくぅ♡ そ、壮太、大胆♡」


 あれれ? これ、結婚決定なの?


 ザワザワザワザワザワ――


 周囲からざわめきが起こる。いつの間にか凄い人だかりができていた。

 その中にはクラスメイト多数、観光客多数、外国人観光客も多数。皆が俺たちの結婚を祝福するかのように盛り上がっている。

 フラッシュモブじゃねえぞ!


「おお、プロポーズか!」

「おめでとう!」

「結婚おめでとうございます!」

「おめでとさん」

「良いものを見せてもらったよ」

「Congratulations on your marriage!」


 ぎゃああああ! 凄い注目が!

 クラスの女子も注目してるぞ!


「ちょっと、あれ安曇君でしょ」

「修学旅行で求婚とかどうなの?」

「学生結婚じゃね」


 ぎゃああああ! もう噂が独り歩きしてる!


「俺たちの憧れ姫川さんが……安曇に」

「あいつ蜷川にながわさんと付き合ってるんじゃねえのかよ!」

「俺は知ってたぜ! 安曇が姫川さんとお祭りデートしてたのを」


 ぎゃああああ! 男子にも噂が!

 てか、須坂! ペラペラ喋るんじゃねえ!


「そうちゃむ……やっぱりやる時はやる男だねぇ♡」


 星奈せいながニマニマしている。何だその『してやったり』みたいな顔は。


「壮太君♡ 一生恨むね♡ えへっ、冗談だよ♡」


 怖っ! 明日美さん怖っ!

 半分くらい冗談じゃない気がするぞ!


 こうして俺の告白……もとい、プロポーズは成功したのだった。



 ◆ ◇ ◆



 俺たちはフラッシュモブさながらに盛り上がる人混みを抜け、やっとのことで三条大橋まで移動した。

 擬宝珠が付いた欄干から見える鴨川が、まさに京都って感じの風景だ。


「ふへへぇ♡ 壮太ぁ♡」


 さっきからシエルがデレデレなのだが。

 俺の腕に抱きついたまま離れない。

 あの塩対応だった頃が嘘みたいだぞ。


「しかし、まんまと俺は作戦に乗せられていたのか……」


 ここに来る途中でネタ晴らしをされた。

 昨日からシエルが冷たかったのは、星奈せいなと明日美さんの入れ知恵だったのだと。


 ハッキリしない俺に痺れを切らしたシエルが、星奈せいなに相談したのが始まりだそうで。

 そこで星奈せいなは、『急に冷たくしたら、そうちゃむ超焦るんじゃね?』と作戦を発案したそうだ。

 まさか、作戦がもう一つあったなんて。


「ヤバっ♡ まさかこんなに簡単に引っかかるなんて。そうちゃむは素直で可愛いのぉ♡」


 そう言って発案者の星奈せいなが笑う。若干、バカにされている気もするけど。

 明日美さんに至っては、さっきからちょくちょく棘のある物言いだ。


「まさかプロポーズするなんて思わなかったけど。壮太君って気が早いんだね。私には手を出さなかったくせに」


 そう言われましてもですね。明日美さんのエッチな誘惑を、俺は必死に堪えていたのですけど。


 岡谷と伊那も追いついた。

 ただ、俺がシエルに求婚したと聞いて、二人とも放心状態だが。


「お、おまっ、安曇よ。お前、姫様と結婚を決めやがったのか。俺は美少女ゲームのように、ヒロインの好感度が上がったら告白しろとは言ったが……。まさか求婚するとは思わなかったぜ。やはりお前は只者じゃねえ」


 そう言った岡谷は、あんぐりと口を開ける。

 俺だって驚いてるよ。どうしてこうなった。


「さ、さすが安曇氏でありますな。麗しき姫様を嫁にするとは。ううっ、クラスの癒しシエル姫が……。この伊那宗助……感服いたしましたぞ」


 何だか知らんが伊那がショックを受けている。お前は二次元オンリーじゃなかったのかよ。



 そんなこんなで、俺たちのすれ違いは一件落着したのだった。

 皆がお見合いの席みたいな感じになりながらな。


「ぬっへへぇ♡ 後は若い者同士で」


 星奈せいな、お前は仲人さんか。


「ほら、皆も行こっ」

「壮太君、私は諦めてないからね」


 最後まで俺に刺すような視線を送っていた明日美さんを、星奈せいながズルズルと引きずってゆく。

 この場には、俺とシエルだけが残された。


「えっと、鴨川を散歩するか?」


 横のシエルに声をかけると、彼女は最高の笑顔で答えてくれる。


「うんっ♡」


 ヤバい。めっちゃ可愛い。何だこのシエルは。

 前はクールな女王様だったのに。

 まるで小さい頃のシエルみたいだな。


「良かったよ。シエルと仲直りできて。一時はどうなるかと心配だったんだぞ」


 シエルは俺に身を寄せながらジッと目を見つめてくる。


「嬉しい♡ 私を選んでくれたんだ♡」


 ん!? あれっ?

 ヤバい、ノエルねえに何て説明しよう?

 シエルと婚約しましたなんて言ったら大泣きされそうだよな。

 ど、どどど、どうする?


 そんな俺の心を読み取ったのか、シエルは妖艶なほどに美しい顔を近づけてきた。


「もう取り消せないからね♡ あ・な・た♡」


 シエルの態度が完全に新婚さんになっている。

 ハッピーエンドっぽいけど、帰ったら完全に修羅場なのでは……。



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姉喰い勇者と貞操逆転帝国のお姉ちゃん!

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ブレイブ文庫 第1巻
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