第123話 もう限界だ!
すぐ扉の向こうにクラスメイトが居るのに、俺たち三人はキスで昂ってしまう。もう止まれないくらいに。
「そうちゃん♡ んっ♡」
ノエル姉が愛情たっぷりのキスをする。柔らかなくちびるが天にも昇りそうな心地よさだ。
「壮太♡ ちゅ♡」
負けじとシエルもキスをする。恥ずかしくてたまらないくせに、ちょっと大人ぶっているのがいじらしい。
「う~ん♡ そうちゃぁん♡ もっとご褒美ぃ♡」
ノエル姉がキスをおねだりだ。ただでさえ色っぽいのに、浴衣姿でブーストしてからの、蕩けた顔でキスとか最強すぎるだろ。
「こら、壮太♡ 私にもご褒美だよ♡」
更にシエルがキスをおねだりする。こいつ、段々エスカレートしているような?
さっきまで緊張でガチガチだったのに。
外ではクールな女王様なのに、こんな甘えた顔をされたら歯止めが利かなくなりそうだぞ。
「そうちゃん♡ んっ♡」
「壮太♡ ちゅ♡」
「そうちゃん♡ あむっ♡」
「壮太♡ はむっ♡」
「そうちゃん♡ んぁ♡」
「壮太♡ んちゅ♡」
おぉおおぉい! これどうなっちゃうの!?
このままだと止まらなくなっちゃう!
俺は莉羅さんと約束したんだ。二人同時に……しちゃダメだって。
こんなにキスされたら最後まで行っちゃいそうだ!
二人同時に朝チュン展開しちゃうだろぉおおおお!
「すす、ストーップ!」
俺が二人を止めようとしたその時だった。
ガチャ!
倉庫の扉が開き、星奈と明日美さんが顔を覗かせる。
「そうちゃむ!」
「壮太君!」
あっぶねぇええええ! ギリギリのタイミングだった。
ちょうど俺が二人を離したから、キスしているのが見られなかったはず。
ただ、サンドイッチ状態で密着しているのは見られたのだが。
「そ、そうちゃむ……大丈夫?」
「壮太君……汗びっしょりだよ」
明日美さんが言うように、俺もシエルもノエル姉も汗びっしょりだ。
特に二人は汗でしっとりした浴衣が乱れ、ダークブロンドの髪が顔にかかり色っぽい。キスで昂った火照った顔が、余計に色気を増している。
「だ、大丈夫だよ。倉庫の中が暑くて」
何もないと主張したい俺だが、二人は完全に何かあった顔だ。
「うぅ♡ 恥ずかしいよぉ♡」
「うくぅ♡ そ、壮太、浴衣が乱れちゃった。ばかっ」
ノエル姉は蕩け顔でポエポエしているし、シエルは真っ赤になって浴衣を治している。
やっぱり事後っぽい。
「はううっ♡ 大人の階段上っちゃったかもぉ♡」
「壮太のエッチ♡ スケベ♡ ヘンタイ♡」
更に追撃だ。ノエル姉は恥ずかしそうに赤い顔を両手で隠し、体をプルプル震わせている。
シエルといえば、照れ隠しなのか拗ねた顔で俺の腹を指でツンツンしているのだが。
「そぉおおおおぉちゃぁああぁむぅうう!」
「そぉおおおおぉたくぅううううぅん!」
眉をひそめた星奈と明日美さんの声が響いた。
◆ ◇ ◆
俺たちは神社の隅にあるベンチに、三人で並んで座った。
「はい、ジュース買ってきたから」
途中で買ったジュースを二人に手渡す。
熱中症になったら困るからな。
「あ、ありがとね♡ そうちゃん♡ はぁう♡」
「うむ、大儀である」
相変わらずノエル姉は赤い顔で俯き、シエルは意味不明だ。
これ、キスしてた時は興奮状態で暴走してたけど、今になって恥ずかしくなってるんだよな。
俺もだけど。
「壮太君、中で何をしていたのかな? してたのかな?」
俺の前に仁王立ちした明日美さんが問いかける。笑顔で首を傾けて。
目が笑ってないぞ。
「な、何もしてないよ」
弁解しようとするが、目が泳いでしまった。
そんな俺の動揺を、明日美さんは見逃さない。
「そうかな? 私、勉強したから火照った肉体には詳しいんだ。姫川さんも先輩も性的興奮後の反応だよね。壮太君が何かしたんだよね?」
何を勉強したんだ!? 何を!?
明日美さん、夜の勉強ばかり捗って耳年増になってないかい?
「ま、まあまあまあ。そうちゃむだって男なんだよ。あんな狭い倉庫で女子と密着してたら、そりゃエッチしたくなっちゃうよね。許してあげよっ」
星奈がフォローしてくれるも、それ完全に俺がエッチなことしたみたいだよね。
「そうか。その手があったんだね」
明日美さんは、何かに気づいた顔をする。
「壮太君と一緒に教室のロッカーに入れば、強制的にエッチの流れに……?」
明日美さんアウト!
「興奮した壮太君の息子をアレすれば、私が壮太君の息子を産むことに? きゃっ♡」
完全アウトぉおおおお!
それ冗談なのか? 息子に息子を掛けてもアウトだから!
この子、可愛い顔して凄いこと言うよな!
「明日美さん、そういう冗談は……」
「冗談だと思う?」
「えっと……」
「私ね、歳の近い親子に憧れてるんだ」
思い切り本気っぽいのだが!
「うふふっ、冗談だよぉ。壮太君のドギマギしてる顔みてると、何だか体がゾクゾクしちゃうの♡」
最後にドSっぽい言葉を残して、明日美さんは星奈と一緒に歩いて行く。
「じゃあ私たちは戻るね」
「そうちゃむ、またね」
「今日はありがとう。また学校で」
俺が手を振ると、二人は大きく手を振りながら人混みに消えていった。
何だかんだいっても、俺たちの秘密がバレないように気を遣ってくれてるんだよな。
明日美さんのアレは本気っぽいけど。
「えっと、少し休憩したら屋台を回ろうか? 少し経てばクラスメイトもどっか行きそうだから……えっと」
両側に座る二人に声をかけてみたが、急激に恥ずかしさが込み上げてくる。しどろもどろだ。
さっきの熱烈キスを思い出しちゃったじゃないか。
それは二人も同じなようで――――
「は、はあぁああぁ♡ ち、違うんだよ。スケベじゃないからね。あの時は盛り上がっちゃったの。何かこう胸がキューってなってね。夢中でキスしちゃったのぉ♡」
ノエル姉は真っ赤な顔を両手で隠しながら、スケベじゃないと主張する。
「そ、そそそ、壮太! か、勘違いしないで。あれはお姉のキスが、ドルバンゲイン11話のセシリアみたいにエッチだったから。エッチなお姉に影響されただけで……うくぅ♡」
シエルに至ってはアニメの話と混同している。これは完全にテンパってるな。
「エッチじゃないからぁ」
エッチじゃないと主張するノエル姉。どこからどう見てもエッチだけど。
「確かに……ノエル姉はエッチだよな。こう雰囲気とか体つきとか」
「そう、お姉はエッチ。偽らざる真実」
俺とシエルはエッチなテンションなのをノエル姉のせいにする。
これにノエル姉は、真っ赤な顔で手をブンブン振るのだが。
「もうっ、もうっ、もぉおおおっ! シエルちゃんもノリノリでキスしてたでしょ!」
「うくぅ♡」
図星でシエルも真っ赤になる。
ついでに俺まで顔が熱い。
三人並んで黙り込んでしまった。キスの熱を冷ますように。
サラサラサラ――
吹き抜ける風が心地いい。
汗で濡れた体を乾かすように。
汗…………シエルとノエル姉に密着され、キスをしながら二人の汗が……。
何だか大人の関係みたいで気恥ずかしい。
本当に事後みたいだ。
頭がカーっと熱くなり何も考えられない。
恋人同士になって、そういう関係になれば慣れるのか?
今の俺には大人の関係とか想像できねえぞ。
恋人同士の想像で、姉妹二人を同時に思い浮かべてしまった。
「あああっ! 冷静に考えて、これはヤバいのでは。義理の姉弟で、同居クラスメイトで、しかも姉妹を同時に好きになっちゃうとか。もう完全に修羅場直行なのでは?」
頭を抱えた俺に、両側から甘い声が響く。
「そうちゃん♡ お、お姉ちゃんはいつでも良いからね♡」
「そ、壮太♡ 血が繋がってないから合法だよ♡」
どうしよう。二人とも本気だ。
このままでは本当にエッチしちゃいそうだ。
今までは家族になったからブレーキを掛けようとか、好きなのは俺だけだと思ってたから我慢できたんだよ。
「ヤバい。我慢の限界だ。もう時間の問題かも……」
体の奥がゾクっと疼き、俺は肩を抱える。
すると、両側から二人が体を寄せてきた。
「そ、そうちゃん♡ する?」
「壮太♡ わ、私も容赦しないから♡」
ぎゃああああああああ! もう本当に限界だぁああ!
毎日のように甘々な催眠と密着と意味深な態度で、俺の貞操は崩壊寸前だぁああああ!
この後、みっちり密着されたまま姉妹デートした俺は、莉羅さんのお土産を買って帰るのだった。
また莉羅さんの心配と欲求不満を増大させそうな気がする。




