第122話 止まらないキスの応酬
暗闇に目が慣れたのか、徐々に状況が分かってきた。
どうやら俺たちが入っている場所は、祭り用に仮置きされたプレハブ倉庫のようだ。
長テーブルや折り畳み椅子などがギッシリと置かれ、小窓から微かな月明かりが注いでいる。
ただ、問題なのは、俺の顔が柔らかくて弾力のある大きな膨らみに埋まっているのだが。
「あの、これってノエル姉の――」
「ああぁん♡」
話し出した俺の言葉は、ノエル姉の甘い声に掻き消された。
「えっ!? これ、どういう状況?」
「だめぇ♡ そうちゃん、息を吹きかけないでぇ♡ くすぐったいよぉ♡」
目の前にはノエル姉が着ていた朝顔の浴衣が見える。汗でしっとりして、たまらなく良い匂いだ。
モゾモゾモゾ――
「はわぁあぁん♡ そうちゃん、動いちゃダメだよぉ♡」
「ご、ごめん、ノエル姉。この位置は危険が気がする」
むにゅむにゅむにゅ――カポッ!
少し動くと、今度は白く艶やかな肌の感触行きついた。
どうやら危機は脱したようだ。
さっきの感触は、間違いなくノエル姉のGカッ……こ、これは知らなかったことにしよう。
「そうちゃん……首筋に息を吹きかけないでぇ♡」
「えっ! これって……」
危機は脱していなかった。
目の前に見えるのは、ノエル姉の鎖骨と首筋だ。俺はノエル姉の鎖骨に顔を寄せていた。
「ごめん、変な体勢で」
「あんっ♡ だからくすぐったいのぉ♡ ダメぇ♡」
このままではマズい。まるでノエル姉の首筋にキスするような体勢なのだが。
「ちょっと待って。今、体勢を入れ替えるから」
むにっ!
「きゃっ♡ そそそ、壮太ぁ! エッチ、スケベ、ヘンタイ!」
シエルが変な声を上げた。顔は見えないけど、何となく表情は想像できる。
「すまん、シエル。暗くてよく分からん。我慢してくれ」
体を捻りシエルの方を向くと、俺の手がムチッとしなやかな脚線美のようなものに行き当たる。
「これって……もしかしてシエルの脚か?」
「ばかばか♡ エッチ♡ 浴衣がはだけちゃう!」
どうやら俺の体にシエルの脚が引っかかっているようだ。どんな状況だよ。
「すまんシエル、立ち上がるから、ちょっと我慢してくれ」
モゾモゾモゾモゾ――
「んくぅ♡ だ、だめぇ♡」
シエルの体を掴みながら体勢を入れ替える。
やっと立ち上がることができ、三人で並ぶ形になった。今なら月明かりに照らされた二人の顔も見える。
「ふうっ、やっと楽な姿勢になったぜ」
「はうぅっ♡ そうちゃんのバカぁ♡」
「うくぅ♡ 壮太のエッチ♡」
何故だか二人が色っぽい吐息を上げているのだが。
体勢が楽になったことで、外の状況が理解できてきた。
外からは、星奈と明日美さんが、クラスの女子と会話する声が聞こえてくる。
「あっれぇ、星奈じゃん、どしたん? 蜷川さんと一緒で」
「一緒にお祭りに決まってるっしょ」
「ふーん、ナンパ目当て? って、そりゃ無いか。真面目な蜷川委員長とじゃ」
どうやら二人は、俺たちを匿ってくれているようだ。
「そういやさ、さっき姫川さんっぽい金髪を見た気がしたけど」
「私たちは見てないよ」
明日美さんが誤魔化してくれている。
このまま何処かに行ってくれれば良いのだが。
「でもさ、星奈も委員長も超可愛いじゃん。それってナンパしてくださいって言ってるようなもんだよね」
笹野が余計な話を振ってきた。
ナンパとかどうでもいいだろ。狭くて暑いんだから、早くどっかに行ってくれ。
「はぁ、何処かに良い男いないかなぁ? 良いよね、星奈はエッチな体してて。男釣り放題っしょ」
「ひ、人聞きの悪いこと言うなし! 釣らないし」
「むしろ委員長の方が釣り放題じゃね? その小柄で清純な感じなら、男が入れ食い状態だって」
今度は赤堀が明日美さんに絡んでいる。男の話ばかりじゃないか。
だから早くどっかに行けって。
姉妹と抱き合う格好で俺もヤバいのだが。
「んんっ♡ そうちゃん♡」
「んぐぐっ♡ 壮太ぁ♡」
マズい、二人も限界なのか苦しそうな表情だ。
「だ、大丈夫? ノエル姉」
「もうダメぇ♡ お姉ちゃん限界かもぉ♡」
目の前のノエル姉が、苦しそうな声と色っぽい吐息をする。目が潤んでいて悩まし気な眉だ。
「そうちゃん♡ もうムリ♡ 良いよね?」
「えっ?」
「そうちゃん♡ 好き♡ 大好き♡ んっ♡」
えっ!? ええっ!? 何が起きた?
ノエル姉のくちびるが、俺の口に?
プルッと柔らかくて蕩けそうに気持ちの良い感触が。
キス…………されているのか!?
「んんっ……」
「んっ♡ ちゅっ♡ えへへぇ♡ キスしちゃったね♡」
キスしたくちびるを離したノエル姉は、はにかむような笑顔で上目遣いになる。何だこの破壊力は。
「えっと……ノエル姉?」
「い、イイでしょ♡ 私だって、ご褒美欲しいな♡」
熱い瞳でノエル姉が俺を見つめている。
暗闇の中で月明かりを反射する瞳がキラキラし、まるで夜空に煌めく星のようだ。
「お、俺は……」
「そぉおおぉたぁああ!」
その時、背中に悪寒が走った。
すぐ後ろのシエルが嫉妬でプルプルしている。
吐息が首筋にかかってこそばゆい。
「待てシエル、今のは」
「こっち向いて」
グイグイグイ!
無理やり首の向きを変えさせられ、俺はシエルと向き合う格好になった。
「壮太は誰にも渡さない♡ たとえお姉でも大人気ヒロインのセシリアでも」
「お、おい、何でドルバンゲイン?」
相変わらずよく分からんシエルだが、綺麗な顔が迫ってきて俺は息を呑んだ。
「んっ!」
「壮太ぁ♡ はむっ♡ ちゅ♡ んちゅ♡」
えっ!? ええっ!? これどうなってるの?
今度はノエル姉の目の前でシエルとキスだと!?
「そ、そうちゃん! ヒドいよぉ。わざとお姉ちゃんに見せつけるんだぁ」
ノエル姉まで嫉妬が爆発した。
Gカップをプルプル揺らしながら駄々をこねる。
だから揺らすんじゃない。その破壊力は我慢できないから。
グイッ!
ノエル姉の手が俺の首を掴むと、自分の方に引き寄せるように抱きついた。
「そうちゃん♡ もっとキス欲しいな♡ あむっ♡」
再びノエル姉の柔らかなくちびるが俺を包む。
今度は情熱的に時間をかけたキスだ。
「んんっ♡ んちゅ♡ んっ♡ んぅーん♡ ぷはっ」
「えっ、えっと……あの……」
ゆっくりとくちびるを離したノエル姉が、トロンっとした目で俺を見る。
「えへへ♡ えっちなキスしちゃった♡」
「ノエル姉が――」
「スケベじゃないもん♡」
読まれていた。スケベ姉と言おうとしたのを。
照れ隠しのつもりだけど、先回りして塞がれた形だ。
「そそそ、壮太! お姉とのキスを見せつけるとか何なの。もう息の根止めるぅ♡」
「それをお前が言うのか」
「問答無用ぉおお! んっ♡」
またシエルがキスをしてきた。今度は舌をインで。
「ちょ、待て! それはヤバい」
「だぁめ♡ 私も大人のキスするの♡ あむっ♡ ちゅ♡」
ぎこちないシエルのキスだけど、初々しくて少し無理しているのが伝わってくる。
俺の首に回した両手からは微かな震えを感じ、無理に出した舌は緊張なのか固まったままだ。
「シエル……」
「ううぅ♡ 恥ずかしい♡」
これに刺激されたのがノエル姉だ。シエルと同じように、俺の体に腕を回してきた。
「そうちゃん♡ すきぃ♡」
「壮太ぁ♡ すき♡」
「そうちゃん♡ 大好きだよ♡」
「壮太♡ 私も大好き♡」
二人がキス顔で迫る。
えええええええっ! 二人の嫉妬が止まらないのだが! エンドレス嫉妬キスなのか?
キスの永久機関かな?
一人とキスをすると、もう一人が触発されて激しくなるんだけど!
これじゃ、どんどんエスカレートしちゃうだろ!