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甘々姉と嫉妬妹に愛されすぎる同居生活♡ ~親の再婚で幼馴染姉妹と家族になったけど、どっちも愛が重くて寝かせてもらえないのだが~  作者: みなもと十華@姉喰い勇者2発売中
第4章 愛とお仕置きと運命と

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第108話 家庭内三角関係

 甘えん坊のシエルを離した俺は、襟を正して深呼吸をする。

 今から伝えねばならぬのだ。この俺の、溢れそうな想いを。


「シエル、真剣に聞いてほしい」

「な、何を?」


 シエルが不安そうな顔をするが、俺は続けた。


「俺、さっきノエルねえに告白したんだ。好きって……っててて、痛い! 痛いって!」


 シエルが俺の腹をつねっている。凄い迫力で。


「そぉたぁああああ! 息の根……」

「待て、最後まで聞けって」

「やっぱりおねえを選ぶんだ?」

「違うって、俺はシエルも大切なんだ」


 何とか許してもらい事なきを得た。先が思いやられるぞ。


「はあ、はあ、はあ、つまりだな、俺はシエルが……す、すす、好きなんだ!」

「ふぇっ♡ ふえぇえええっ♡ すすす、スキー! ロズコフスキー?」

「それは異世界銀河勇者伝説のキャラだろ。マニアック過ぎて俺しか分からねえよ!」


 しまった。シエルの非モテ仕草が俺そっくりだ。しかもアニメのモブっぽいキャラに例えるとか、こいつのオタ知識は桁違いだぜ。

 でも、こうして通じ合えるのは、ちょっと嬉しい。


「えっ、ええっ♡ そ、壮太が、私を♡」


 目を白黒させるシエルだが、途中でハッと何かに気づいた。


「ねえ、さっきおねえにも告白したって言ったよね?」

「お、おう」

「もしかして、二股なの?」


 そこに気づいてしまったかシエルさん。


「こんなことを言うのはどうかと思うけど、俺はシエルもノエルねえも、どっちも凄く大切なんだ。どちらか片方を選ぶなんてできない。だから、もうちょっと待って欲しい」


 よし、言えた。

 これで安心――と思いきや、シエルは納得していない顔だ。


「待つっていつまで? 子供の頃も待つって言ったよね? ねえ? いつまで? ねえ?」

「ちょ、圧が凄いって」

「壮太が悪い」

「ですよね……」


 綺麗な顔でグイグイ迫るシエルにたじたじだ。結婚したら、確実に尻に敷かれそうな気がする。


「ねえ、いつまで?」

「もう少し、卒業までにはハッキリさせるよ」

「そう、分かった」


 やっと引いてくれた。今度こそ一件落着かと思いきや、シエルはモジモジと何か言いたそうだ。


「どうした、シエル?」

「えっ♡ だ、だって♡ す、すす、ごにょごにょ……」

「何か言ったか?」

「ももも、もう一回言って!」

「えっ?」

「だからもう一回、好きって言って」


 シエルの顔は真剣だ。

 しかし、こう面と向かってだと恥ずかしい。


「そんな何度も言うもんじゃ……」

「何度も言うものなの。愛情表現の欠如は離婚の危機」

「まだ結婚してないよね!?」


 くっ、これは言わなきゃダメなやつか。


「す、すす、好き」

「ぬふっ♡ うふふっ♡」


 シエルがデレた……だと!

 さっきまで氷の女王顔だったのに、今はデレデレじゃないか。意外とチョロいのか?


「も、もう一度」

「はあ? もう良いだろ」

「だぁめ♡」

「ううっ、す、好き」

「ふへへっ♡ えへへへっ♡」


 にへらぁっと笑ったシエルがクネクネしている。

 な、何だこいつ。顔は超美人なのに、動きが変だぞ。


「じゃあ、そういうことで……」

「待って、もう一回」

「もうお終いだ」

「もう一回」


 今度は潤んだ瞳で見つめてきた。やっぱりシエルの魅力には抗えない。


「もう一回だけだぞ。す……好き」

「きゃぁ♡ 壮太が私を好きだって♡ うふふぅ♡」

「おい、調子に乗るな。お前はどうなんだよ?」


 逆に問い詰めてみると、シエルの様子がおかしくなる。


「えっ、そそ、それって」

「シエルは俺のこと好きなのかよ? まだ聞いてないけど」

「ううっ♡ うくぅ♡」


 シエルめ、こいつ攻撃力は激強だけど、防御力はからっきしだな。攻められるとよわよわじゃないか。


「ほら、シエル。好きって言ってみ?」

「ううぅ♡ は、恥ずかしい♡」

「ほらほら、言えよ」

「くぅううっ♡ す、すす……」

「ほら、もうちょっと」

「す、す……すき焼き」


 くっ! こいつ、やっぱり俺にそっくりじゃねーか! 肝心な時にすき焼きとか、まるで俺じゃないかぁああ!

 自分で言ってて恥ずかしくなってきたぜ。


「はぁ、やっぱりシエルはオコチャマだぜ」

「ちょっと、壮太と一緒にしないで」

「誰がオコチャマだ」

「壮太ですぅ」


 くっ、シエルめ、腹立つ。

 よし、もっと恥ずかしがらせてやるぞ。


「ほら、言えって。3、2、1、はい」

「ううぅ♡ だ、だめぇ……」

「ほらほら、言えよ。3、2、1、はい」

「うくぅ♡」


 こいつ、やっぱり面白いぞ。


「何だ、言えないのか。悲しいな。シエルの想いはそんなもんだったのか?」


 ガシッ!


 俺の一言でシエルが豹変した。今までの女王タイプとも甘々タイプとも違う、何か強烈な執着のようなドロドロタイプに見える。


「良いの? 私が本気の感情を出したら後悔するかもよ」

「へっ? し、シエル?」

「私には壮太だけなんだよ。小さな頃からずっと。もう戻れないよ。私が全てを見せたら」


 シエルの腕が絡まり逃げられない。まるで茨の鞭で拘束されたように。美しいバラには棘があるのか。

 宝石のように輝く瞳が俺を捕らえて離さない。シエルに見つめられ、一歩も動けなくなってしまった。


「壮太……子供の頃からずっと壮太した見てなかった。壮太は私のヒーローだから。そう、私のもの。壮太は私のもの。誰にも渡さない。たとえそれが、おねえでも。言ったよね? ずっと一緒だって。私はずっと信じて生きてきたんだよ。そうちゃんと一緒になれるようにって。私には壮太だけなの。壮太がいれば、他に何も要らないよ。世界を敵にだってできる。だって壮太が好きだから。積もりに積もった十年の想いを受け止めてくれる? 好きだから。大好き。ずっとずっと好きなの。狂おしいほど好きなの。だってしょうがないよね。約束したんだから。裏切ったら息の根止めるよ。私は壮太に振り向いて欲しくて深夜に催眠しちゃう子なんだよ。もし裏切ったらどうなるか――」


 怖っ! 怖いって!


「待て待て待て! 長いって! めっちゃ早口だな。お前は専門分野になると早口になるオタクか!?」

「だ、だって、こんなんじゃ私の想いは伝えきれないよ」

「伝わった。十分伝わったから」

「そう? でも、やっぱり催眠をしようかな?」

「あれはキツいからやめてくれ」


 シエル……こじらせてるな。どうしよう、俺のせいなのか?


「うくぅ♡ そ、そういう訳で……すき♡」

「お、おう」


 色々問題あるけど、最後の照れたシエルの顔で全てを許してしまう。やっぱり可愛いな。オタクなところも最高だぜ。


「う、嬉しいよ。俺を好きでいてくれて」

「うん♡」

「しかも立派なオタクに育ちやがって」

「オタクじゃない。ただのアニメ好き」


 まだ言ってるのか。その設定。


「泣きながら俺の後をついてきた少女が、部屋でこっそりコスプレする女に育った……って、だからつねるな!」

「壮太が悪い」


 こいつめ、デレているのにアタリがキツいじゃないか。


「まあ、マジカルメアリーは俺だけどな」

「はあぁ? メアリーは私!」

「シエルはマジカルブレンダだろ」

「もうっ! 何で昔から私をブレンダにするの!」

「何となく面白いから」

「むぅうううっ!」


 何だか小さな頃みたいだ。シエルのふくれっ面が面白い。

 昔もこんな感じだったよな。


「じゃあ、そういうことで」

 ガシッ!


 俺が部屋を出ようとすると、逃がすまいとシエルが手を掴む。


「どうした?」

「壮太……分かってない」

「は?」

「私の秘密を知ったからには逃れられない」

「何のことだ?」

「古の盟約に従い、共に現実世界での逢瀬おうせを」

「つまりデートしたいのか?」

「うくぅ♡」


 こいつは何をしたいんだ!?

 まあ、ちょっと変わったところも好きなんだけど。


「じゃ、じゃあ行くか? デート」

「うんっ♡」


 こうして俺たちはデートをすることになった。

 それが新たな試練の始まりとも知らずに。




「お待たせ、壮太♡」


 リビングでしばらく待っていると、お洒落したシエルが現れた。

 大人っぽいノースリーブに短めのスカート。長い脚がスラっと伸びていて眩しい。


「じゃあ行こうか」

「うん♡」


 俺たちが玄関に向かうと、トタトタと足音が聞こえてくる。


「そうちゃん、シエルちゃん……デートするんだ?」


 振り向くと、寂しそうな顔のノエルねえが立っていた。ギュッと手を握って俺たちを見つめながら。


「ノエルねえ……」


 しまった! ノエルねえが悲しそうな顔を……。

 俺はやってしまった。あれほど気を付けようとしていたはずなのに。

 姉弟間の色恋沙汰。しかも家庭内三角関係を。



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姉喰い勇者と貞操逆転帝国のお姉ちゃん!

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ブレイブ文庫 第1巻
ブレイブ文庫 第2巻
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