表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

108/110

第107話 もう止められない

 ノエルねえの口から『好き』と聞こえた気がする。聞き間違いじゃないよな?


「そうちゃん♡」


 確認するかのように、ノエルねえは俺を見つめる。俺の心を揺さぶる熱い瞳で。


 ど、どどどどどどどど、どうしよう!

 それって好きってことだよな!? って、そのまんまだった!


 完全に頭がテンパった俺は、この重要な場面で非モテ仕草をかましてしまう。


「も、もしかして……割り下で牛肉を焼く……」

「すき焼きじゃないよ」

「ビジネスにおける事業計画が……」

「スキーム?」

「キャンプで使う厚手の鍋……」

「それはスキレット」

「罪と罰……」

「ドストエフスキー!」


 しまった、何を聞いてもノエルねえが返してくる。さすが学年トップの学力だぜ。

 普段ボーっとしてるおねえだから忘れてたけど、ノエルねえは優等生だった。


「ねえ、そうちゃん。ふざけてる? ふざけてるよね?」


 ノエルねえの目が迫力を増す。いつも優しいけど、こういう人を怒らせてはいけない。


「ご、ごめん。ついテンパっちゃって……」


 ぎゅっ!

 ちょっと拗ねた顔のノエルねえが、俺に回した両手に力を込めた。


「もうっ、しょうがないそうちゃんだな。私があんなにモーション掛けてたのに。全然気づいてくれないんだから」

「や、やっぱり、あれって……」


 前から距離が近いとか、やたら密着してくるとか、たまに彼女面してきたり、色々許してくれるって思ってたんだよ。

 でも、他の男には絶対密着しないし、意外と厳しいし。変だなとは思ってたけど。

 まさか、今までの全部が、好きってことだったのか。


「そうちゃん♡ 私は幼い頃からずっと好きだよ。そうちゃんは私の王子様だから。私を守ろうとして前に立った姿は、ずっと心に焼き付いてるんだからね♡」


 そんなの言われたら照れてしまう。興奮で体が熱くなる。小さい頃から憧れただった年上のお姉ちゃんが、俺のことを好きだっただなんて。


「ノエルねえが……俺を……」

「そうちゃんはどうなの?」

「えっ?」

「私のこと……好き?」


 首を傾けながら大きな目で真っ直ぐ俺を見るノエルねえ。この破壊力には抗えない。

 姉弟になったからとか、関係を壊さないようにと、必死に我慢してきたのだ。

 でも、もう無理だ。俺の中のブレーキは、ノエルねえの『好き』で壊されてしまったから。


「す、す、好き……だよ」

「そうちゃぁ~ん♡」


 バタッ!


 ノエルねえの強烈なGカップタックルを受け、俺たちはベッドの上に倒れ込む。もう合体待ったなしって感じに。


「そうちゃん♡ そうちゃん、そうちゃん、そうちゃん♡」

「ノエルねえ!」


 ああ、もうダメだ。ノエルねえの体も声も心地良すぎる。その笑顔も。その体も。匂いも。優しい雰囲気も。ポンコツなところも。全部、全部、俺のものにしたい! こんなの抗えないぞ。

 このまま俺は初めての……。


「って、ちょっと待った」


 もう限界のはずだったのに、何かが俺を止めた。

 ブレーキは壊れていたはずなのに。


「そうちゃん?」


 ノエルねえが不安そうな顔をしている。


「やっぱり……シエルちゃんを……」

「えっ! そ、それは……」

「見てれば分かるよ。だってそうちゃん、シエルちゃんと一緒だと楽しそうだし」


 どどどど、どしよう!? ノエルねえが落ち込んでしまった。もしかして、これ俺が振ったみたいになってるのか?

 こんなのダメだ。せっかく告白してくれたノエルねえを悲しませるなんて。


「の、ノエルねえ!」

「ふぇ、ふえぇ♡」


 つい、ノエルねえを抱きしめてしまった。もう戻れないぞ。


「お、俺はノエルねえが大好きだ」

「えっ、えええぇ~っ♡」

「ノエルねえが大好きなのに、シエルも同じくらい大好きなんだ」

「そうちゃん?」

「ごめん、こんなのダメだと分かってるのに、俺は片方を選ぶなんてできないよ」


 言ってしまった。この姉妹三角関係の修羅場まっしぐらな発言を。

 だってしょうがないだろ。俺は二人とも好きなんだから。


 この優柔不断で我儘な俺の発言に、ノエルねえは真剣な顔で考えている。


「うーん、私も分かるよぉ」

「えっ、ノエルねえも?」


 まさか3(ピー)な趣味が!? って、そんなはずはねえ!

 ノエルねえはシエルも大好きなんだよな。ずっと仲良し姉妹だったのだから。


「だってぇ、そうちゃんが大好きだけど、シエルちゃんも大切なんだよ。シエルちゃんを悲しませたくないのに、そうちゃんを諦めたくなんいんだよぉ~」


 やっぱりそうだった。


「うぅ~ん、シエルちゃんが大切なのに、そうちゃんのことになると、つい本能が求めちゃうというか、体が勝手に動いちゃうというかぁ」

「ノエルねえって、意外と抜け目ないからね」

「もぉ、そんな人を悪い女みたいに言わないでぇ」


 悪女のノエルねえを想像するとゾクゾクくるものがある。実際に目の前にいるおねえは、ポンコツっぽいのだが。

 その証拠に、今もブツブツと変な話を続けている。


「ううっ♡ ごめんね、そうちゃん♡ たまにシャツを拝借してエッチなことしちゃったり、添い寝してる時に胸に顔を埋めてゴロゴロしちゃったり、あれがあんなでこんなことになって……」


 ん? 今、ヤバい単語が聞こえたような?

 気のせいかな?


「はははっ、まさかスケベねえが本当にドスケベなんてないよな」

「はわわわわわぁああっ! いい、今の無し! 今のは無しだからね!」


 今度は慌てて手をブンブン振っている。

 本当にノエルねえはダサ可愛いな。


「ううっ♡ もう私がエッチな子だってバレちゃったし、開き直るしかないのかな?」

「おい、何を言い出してるんだ」

「そうちゃん♡ もうお姉ちゃん、手加減できないかもぉ♡」

「うわぁああああぁ! わぷっ!」


 ノエルねえが、全力で抱きついてきた。そのボリューミーなGカップを、俺の顔に押し付けるように。


「ぷはっ! や、やめろぉ~! それ以上されると、本当に我慢できなくなるぞ」


 もう頭の中がグチャグチャだ。ノエルねえと俺は相思相愛だったとか。姉妹で三角関係まっしぐらとか。ついでにGカップは凄く柔らかいとか。


 取り合えず、悪いおねえはお仕置きしておこう。

 この甘酸っぱい空気に耐えられない童貞を許してくれ。こうやって誤魔化すしかないんだ。


 ペチンッ! ペチンッ! ペチンッ!


「やぁああああぁ~ん♡ またそうちゃんがぁ!」

「ノエルねえが悪いんだ。俺を刺激するから」

「そうちゃんが悪いんだよ♡ そうやって私を刺激するから」

「ノエル姉!」

「そうちゃん♡」

「ノエル姉!」

「そうちゃん♡」


 ペチンッ! ペチンッ! ペチンッ!

 ガチャ!


「ちょっと、ノエル、壮太君!」


 この毎回のようで少し過激なイチャイチャをしている部屋に、血相を変えた莉羅りらさんが飛び込んできた。


「避妊をしなさい…………って、たたた、大変よぉおお! 娘と壮太君が○○プレイを!」

「してません! ○○プレイはしてませんから!」


 いつものように心配性の莉羅りらさんだったが、俺がノエルねえの尻を叩いているのを見て誤解したようだ。

 確かに、ノエルねえの尻を高く上げさせてペンペンしている様は、どう見てもアブノーマルにしか見えない。


莉羅りらさん、誤解ですよ。これはふざけてただけで……」

「壮太君って、ドSプレイもイケちゃうのね♡ もしかして、リラちゃん、躾けられちゃう?」

「躾けませんから!」


 欲求不満っぽい人妻はスルーして部屋を出る。何も問題は解決していないけどな。

 そしてもう一つ問題が。

 暗殺者ヒットマンみたいな目をしたシエルが手招きしているのだ。


「壮太、こっち来て。ハリーアップ」

「やっぱり、そうなりますよね……」


 あれだけ派手に騒いでいたのだ。シエルの部屋にも騒ぎは伝わっていただろう。


「シエル、できれば踏むのは勘弁してくれ」

「ダメ、息の根止める」

「ぐはぁ!」


 俺がドMになりそうで怖い。シエルの女王様は洒落にならんからな。


「ほら、ボサッとしない」

「へいへい」


 ガチャ!


 覚悟を決めてシエルの部屋に入った。

 できれば、お仕置きは優しめでお願いしたい。


「壮太♡」


 しかし、二人っきりになった途端、シエルが豹変する。


「壮太ぁ♡ ずるいずるい♡」

「えええっ!?」

「もうっ♡ おねえとばかりイチャイチャして」

「さすがに変り過ぎでは?」


 甘々なシエルになって調子狂うが、ここはハッキリさせないと。

 俺は、このグチャグチャだけど真っ直ぐな想いを伝えようと決心した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

-


姉喰い勇者と貞操逆転帝国のお姉ちゃん!

書籍情報
ブレイブ文庫

-

Amazonリンク

i903249
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ