第104話 俺の彼女だ!
太陽が眩しいぜ。冗談でも比喩表現でもなく、姉妹のネットリお仕置きを受けた俺には、お日様の下は眩しすぎるのだ。
朝食のため、リビングに顔を出した俺は足がふらついていた。朝っぱらから姉妹ダブルお仕置きを受けりゃそうなるよな。
あの後、実の母親に嫉妬した姉妹は暴走。俺を二人の部屋に連れ込み監禁プレイだ。
シエルは美脚を俺の首に巻き付け、細く綺麗な指でコチョコチョくすぐり。
ノエル姉はムッチリ尻で俺に乗り、脚をマッサージ。
それ、お仕置きじゃなくご褒美だから!
「ふうっ、朝っぱらからヘロヘロだぜ」
そんなつぶやきをしながら椅子に座る俺に、ノエル姉は当然とばかりに隣を確保する。
「そうちゃん大丈夫? まだ頭が痛むのかな?」
「大丈夫だよ。もう痛みも無いし」
疲れてるのは怪我のせいじゃなく、お仕置きのせいなんだけどな。
そんな俺を見逃してくれない女子が一人。そう、明日美さんだ。
「壮太君♡ 何だか疲れているみたいだね」
「えっ、そうかな」
「そうだよ。くんくん……何か女の匂いがするよ」
ギクッ!
明日美さん鋭い。
「どうしたのかな? 壮太君、朝からエッチなことしちゃったのかな? だから言ったのに。我慢できなくなったら私が手でするって」
なななな、何を言い出してるんだ、この娘は。最近、ますます危険な香りがするぞ。
今日は莉羅さんも居るのに。義理とはいえ親の前で変なこと言うんじゃない。
「ふーん、そうちゃむってば、朝っぱらから溜まってるんだ。言ってくれればアタシがご奉仕するし♡」
星奈まで問題発言だとっ! ドMっぽい表情を浮かべて、しなをつくっているのだが。
そんな叩いてくれと言わんばかりのケツを振られたら、ドSじゃなくてもペンペンしたくなるだろ!
案の定、話を聞いていた莉羅さんが、困った顔をしている。義理の息子の夜生活を知ってしまったような。
「あらあら、心配ね。壮太君、ちゃんと避妊はしないとダメよ」
「やってませんから! ぜっんぜんエッチしてませんから!」
「若い時は我慢できないかもしれないけど、節度は守らないとね」
「って、聞いてないし」
莉羅さんって、普段はエッチで性に寛容なのに、あるラインからはちゃんとしてるんだよな。
まあ年頃の娘を持つ親だからか。
ぐぬぬぬぬぬぬ!
もう通常運行だが、やっぱりシエルが暗殺者みたいな目で俺を睨んでいた。
あれからシエルと話していないんだよな。
記憶のこととか……昔のこととか……。一度ちゃんと話さないと。
◆ ◇ ◆
照り付ける夏の太陽! 太陽に反射して輝く青い海! はじける水しぶきに揺れるビキニの胸!
別荘からほど近いビーチには、若く瑞々しい体を躍動させるJK(内一人が人妻)がはしゃいでいた。
包帯を頭に巻いた俺は、ビーチパラソルの下で留守番だが。
「くっ、このくそ暑い砂浜で待機とかどうなってやがる」
「それはこっちのセリフだぜ、このマダムキラー安曇め!」
横から岡谷がツッコんできた。だれがマダムキラーだ。
「くっそぉおおっ! あんな若くて美人の母姫様と一つ屋根の下とか、羨ましすぎて血涙を出しそうだぜ」
「大袈裟な。莉羅さんとは何もないぞ」
「安曇」
そこで岡谷は真剣な顔になった。
「水くさいじゃねえか。親が再婚して姫様と家族になったんなら言ってくれよ」
「それは……そうだよな。すまん。色々事情があって、学校で噂になる訳には……」
「それは分かるけどよ。俺たち友達だろ」
「岡谷……」
人間関係が苦手な俺だが、岡谷とは続いてるんだよな。数少ない友人は大切にしないとな。
「それで、安曇よ。姫様の下着姿とか見たのか?」
「おい!」
「冗談だよ。怖い顔するなよ」
怖い顔するつもりはないが、姉妹のことになると、つい本気になっちゃうんだよな。
「それで、どっちにするんだよ?」
「は? 何のことだ」
「姫様と姉姫様だよ。好きなんだろ?」
「なっ! ななっ! 誰が好きだって!?」
「バレバレじゃねーか」
しまった。顔に出てたか。バレないよう平静を装っていたはずだが。
「因みに安曇よ、血のつながってない姉弟は結婚できるそうだぞ」
「ななっ! なんだと!」
話が結婚に差し掛かった時、岡谷は三条先輩に呼ばれて行ってしまった。
命令されると『喜んで!』と嬉しそうに。忠実なる下僕みたいだ。本当にそれで良いのか?
「結婚か……。結婚できるんだよな……」
「ついにリラちゃんと結婚を前提に!?」
突然、目の前に金色のブラジリアンビキニ美女が現れた。目のやり場に困るやつだ。
「莉羅さん、いくら何でも露出多過ぎませんか? 歳を考えてください」
「はわわぁ~ん! 壮太君ってば、オバサンには似合わないって言いたいのねぇ!」
ブラジリアンビキニのグラマラスボディを揺らす莉羅さん。やめろ。巨乳が零れそうだし、布面積が少ない尻が見えそうだ。
「水着レンタルしたらぁ、これしかサイズ合うのがなかったのよぉ」
ぼよんっ! ぼよんっ! ぼよんっ!
莉羅さんが体を揺らすと音が鳴るかのよう。まるで肉の祭典。むっちりナイスバディ恵体好きにはたまらない光景だぞ。
まあサイズが無いのは同意する。こんな欧米のグラビアモデルみたいな人は、日本になかなかいない。
「さっきもナンパされちゃってね。気を付けた方が良いわよね。うちの娘とか」
「ナンパ!?」
ナンパと聞いて浜辺に視線を移すと、ちょうどノエル姉が遊び人っぽい男に囲まれているところだった。
「あれは!」
「まあ大変だわ!」
「俺、行ってきます!」
「がんばってね、壮太君♡」
俺は焼ける砂を蹴って走る。
色々許してくれそうなノエル姉は、ナンパ男に狙われやすいのだ。
「めっちゃ可愛いじゃん!」
「ねえねえ、遊びに行こうぜ」
「やめてください」
ナンパ男の手が、白く艶やかな肩に触れそうになった時、俺は後ろからノエル姉を引き寄せた。
「ちょっと待った! この娘、俺の彼女なんで」
「ふぇ♡ ふえぇ~♡ そ、そうちゃん?」
ドギマギしているノエル姉を抱きしめる。Gカップ巨乳が当たっているのもお構いなしに。
「お、遅くなってごめん」
「ふあぁ♡ そうちゃぁ~ん♡」
抱き合う俺たちを見たナンパ男が、見る見る嫌そうな顔になる。
「チッ、っんだよ! 男がいんのかよ」
「しゃーねえ、他行こうぜ」
捨て台詞を残して背を向けるナンパ男たち。危機は去ったぜ。
「そそ、そうちゃん♡ お姉ちゃんって、そうちゃんの彼女だったんだね♡ んふっ♡ んふふふふっ♡」
危機は去ってなかった!
完全にノエル姉が誤解している。
「ノエル姉、今のはナンパ男を撃退する作戦でね」
「そうかそうかぁ♡ そうちゃんはぁ、お姉ちゃんをぉ♡ ぐへへへぇ♡」
「ダメだ、このポンコツ姉、グヘッてやがる。もう手遅れだぜ」
からかってやると、ノエル姉は頬を膨らませプク顔になった。
「もうっ! 私は年上なんだよ。先輩だよ。そうちゃんは、私の威厳とかを守らないとだよ」
「ポンコツ姉に威厳とかあったのか?」
「もうっ! もうもうっ!」
プリプリしているノエル姉にチョップを入れてやるぜ。
ぽこんっ! ぽこんぽこんぽこんっ!
「くらえ、お仕置き姉」
「きゃっ♡ やぁああ~ん♡」
最初は頭に入れていたチョップを徐々に下げてゆく。尻……はマズいので、微妙なラインで腰に。
文句言いながらもノエル姉が嬉しそうなので、セーフということで。
やっぱり楽しい。ノエル姉と一緒にいると楽しい。
ずっと俺を信じていたシエルを大切にしたいのに、ノエル姉も手放したくない。
「ほらほら、皆のところに戻ってくれ。一人だとまたナンパされちゃうから」
「もおぉ~っ♡ そうちゃん、私の扱いがヒドいよぉ」
ノエル姉を届けてから砂浜を戻ると、今度はシエルがナンパ男に絡まれていた。
「たく、この母娘三人、さすがにナンパされすぎだろ!」
再び俺は焼ける砂浜を蹴り駆け出す。
「めっちゃ可愛いじゃん!」
「ねえねえ、遊びに行こうぜ」
「うっ、やめてください……」
ナンパ男の手が、細く綺麗な手に触れそうになった時、俺は後ろからシエルを引き寄せた。
「ちょっと待った! この娘、俺の彼女なんで」
「えっ? う、うくぅ♡ そ、壮太ぁ?」
ドギマギしているシエルを抱きしめる。白くすべすべな肌が密着するのもお構いなしに。
「お、遅くなってごめん」
「ええっ♡ 壮太? ええっ?」
抱き合う俺たちを見たナンパ男が、青筋を立てピクピクしている。
「オイッ! お前、さっき別の娘を彼女って言ってただろ!」
「そうだそうだ! 浮気か? コラッ!」
このナンパ男どもは何を言ってやがる。俺は本気だ。ナンパ男が浮気を語るんじゃねー!
「この娘は俺のなんで」
「ふえっ? ええええーっ!?」
俺は困惑するシエルの手を取り連れて行く。誰にも渡さないとばかりに、強く抱きしめながら。
危機は去ったぜ。
「って、危機は去ってなかった!」
公衆の面前で思い切りシエルを抱きしめていた。しかも水着姿のシエルを。
すべすべの肌が密着して理性が飛びそうだ。
「えっと、ご、ごめん……」
「壮太……私を彼女だって……ううっ♡」
謝ってはもたものの、シエルは恥ずかしそうに俯くばかり。
「って、ちょっと待って!? さっき他の娘も彼女って言ってなかった?」
恥ずかしそうにしていたシエルが一転、今度は威圧感を増し俺を睨む。
「もしかして、お姉にも言ったの?」
「ヤベッ」
「むぅううううっ!」
またシエルがご立腹モードに。
もう説明するしかないか。正直に。
「シエル、大事な話があるんだ」
俺は真剣な顔をして、シエルを人気のない岩場に連れ込んだ。