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甘々姉と嫉妬妹に愛されすぎる同居生活♡ ~親の再婚で幼馴染姉妹と家族になったけど、どっちも愛が重くて寝かせてもらえないのだが~  作者: みなもと十華@姉喰い勇者2発売中
第3章 甘々な日常

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第100話 過去

「うわぁああああああああああ~っ!」


 視界が目まぐるしく変わる。夜空へ、木々へ、地面へ。俺が転がっているんだ。


 ガンッ!

「ぐええっ!」


 後頭部に強烈な衝撃を受け、意識が異世界に飛びそうになる。いや、異世界じゃなくあの世か?

 嫌だ! 俺はまだ何もしていない!

 彼女をつくって制服デートとか、部屋で一緒にアニメを観ながらまったりとか、え、ええ、エッチとか。


「壮太! 壮太ぁああ! そうちゃん! そうちゃぁああああ~ん!」


 シエルの声が聞こえる。夢かな? そう、いつもの夢。

 いつもの?

 あれっ!? いつものは夢じゃないよな。 昔の記憶だ。


 ガサガサガサガサ!

「そうちゃん! そうちゃん!」


 シエルが斜面を下りてくる。

 危ないじゃないか。こんながけを。


 あれっ、背中に当たってるのは木の幹かな? そうか、木に引っかかって下まで転落しなかったのか。助かったぜ。

 代わりに後頭部を幹にぶつけたけどな。


「そうちゃん! そうちゃん! わぁああああぁ~ん! そうちゃんが死んじゃう!」


 死なねえって! 大袈裟だな。シエルのやつめ。


「そうちゃん、結婚してくれるって言ったぁああ! お嫁さんにしてくれるって! 死んじゃヤダぁああああ~!」


 言ってねえぇええ! 考えとくって言ったんだよ!

 あれっ? 何で俺は覚えているんだ?

 そうだ……思い……出した。

 全て思い出した。


 ――――――――――――

 ――――――――

 ――――



『そうちゃぁ~ん!』

 〇〇〇……そうだ、あの声はシエルだ!


『そうちゃん』

 〇〇〇姉……そう、こっちはノエルねえだ!


 俺は夢を見ている……じゃない、これは俺の記憶だ。子供の頃の記憶だ。

 それは安曇壮太と姫川姉妹の。

 運命に翻弄された俺たちの。




 ここは、俺の家か。まだ新しい。そうだ、過去の記憶だ。


『ギャアアアアッ! この出来損ない! 何でアンタは何もできないの! テストも85点だなんて、15点も間違えてるじゃない! 全く誰に似たんだか!』


 今日も母さんがヒステリーを起こした。この人はいつもこうだ。自分は勉強も運動も何もできないのに、人には完璧さを求めている。


『アンタがだらしないと私が恥をかくのよ! ああ、情けない! 母さん、情けなくて外を歩けないわ! ママ友のあの人は、旦那が一流企業で良い暮らしをしているのに! あの人は、お子さんが有名幼稚舎にお受験成功してエリートコースなのに! それに比べてアンタは!』


 もうこうなったらお手上げだ。ほとぼりが冷めるまで公園で時間を潰すしかない。

 俺は家を飛び出した。



『くそっ! 何で俺ばっか……』


 とぼとぼと肩を落とし歩いていると、いつも遊んでいる姉妹の家の前まできた。姫川家だ。

 家の中から喧嘩のような大声が聞こえてくる。


『あなた、やめて!』

『うるせぇええ!』

 ガシャーン!


 家の前の道路では、近所のオバサンたちが噂話に花を咲かせていた。


『またやってるわよ』

『嫌ねぇ』


 そのオバサンたちは、ニヤついた嫌な感じの顔で話し続ける。


『何でも姫川莉羅さんって、いいとこのお嬢様らしいわよ』

『そうなの?』

『そうなのよ。旦那さんが婿入りするような感じになったそうだけど、駆け落ち同然で家を出たらしいのよ』

『駆け落ちまでしたのに、旦那が酒飲んで暴れる穀潰ごくつぶしじゃ浮かばれないわねぇ』


 オバサンたちは『がはは』と声を上げて笑い合う。人の不幸は蜜の味なのだろう。


 やがて騒ぎの中に子供の泣き声が混ざった。


「うわぁああああ~ん! お父さんがぁ!」

「うるせえぞ、乃英瑠のえる! その手をどけろ!」

「ダメっ! 詩愛瑠しえるちゃんに手を出さないで!」

「あなた、やめてぇーっ!」


 ガシャーン!


 大きな音がして、俺は姫川家の玄関に向け走った。

 玄関の中には酒に酔って暴れる男。娘を守ろうとして突き飛ばされた莉羅りらさん。二人、身を寄せ合うようにした姉妹が見えた。


「どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがって! 俺は! 俺はな! この家の主だぞ! ちくしょぉおおおおっ!」


 男が拳を振り上げる。それを姉妹に向けて振り下ろした時、俺の体は勝手に動いていた。愛と正義の断罪天使のように。


「マジカルフラァアァーッシュ!」

 バキッ!


 必殺技を叫びながら飛び込んた俺は、男のパンチをくらってよろめいた。

 当時の俺はカッコよく登場したつもりだが、今思い返すと恥ずかしい。


「いってぇええ!」

「あっ、ああっ、俺は、俺は悪くねえ。俺を認めねえ奴らが悪いんだ。そ、そうだ、きっと社会が悪いんだ! 俺のせいじゃねえ」


 男は意味不明な言い訳をしている。殴ったのは誰のせいでもなくお前のせいだろが。


「ああ、あああぁ、ごめん、ごめんなぁ。父さん、こんなで。もう酒はやめるから許してくれぇ! おおおおぉ!」


 今度は泣き落としかよ。それとも酒が抜けたのか? 面倒なオッサンだな。


「だ、大丈夫? 壮太君!」


 莉羅りらさんが駆け寄ってきた。その優しい手で俺の頬を撫でてくれる。


「ごめん。ごめんなさいね。壮太君。そして、ありがとう、娘を守ってくれて」

「どうってことねえぜ! この程度で断罪天使は負けない」


 本当は痛いのに強がる俺。だから断罪天使はやめろ。


 どうやら聞いた話では、この親父さん。普段は気弱で大人しいのに、酒が入ると手が付けられない困った人らしい。

 何度か離婚を話し合っているのに、その都度『もう一度頑張るから』と言われて踏みとどまっているとか。


「そうちゃん素敵ぃ♡」


 ふと、後ろを見ると、ノエルねえが目をキラキラさせていた。

 俺のマジカルフラッシュが決まったからか。


「カッコイイ♡」


 シエルも目をキラキラさせていた。

 きっと断罪天使に憧れているんだな。たぶん……。




 ところ変わって、いつもの公園。流れ的に何日か後かな?

 目の前には泣いた少女が居る。シエルだ。


『ううっ……ひぐっ……。そうちゃん……私、引っ越すことになっちゃったの……』


 そうだ。これは姉妹が引っ越す話だ。

 ここで俺は、ずっと一緒だって言うんだよな。


『離れ離れになっても、俺は絶対にシエルを忘れない! また絶対会えるから! いつかまた一緒になろう! 約束する。俺はずっとシエルを守ってやるって! だから泣くな! 俺たちはずっと一緒だぞ!』


 くぅ、恥ずかしい。これ完全に告白じゃないか。子供の頃の俺って暴走し過ぎだろ。

 シエルが目を輝かせて俺を見つめているのだが。


『嬉しい。じゃあ大きくなったら私……そうちゃんのお嫁さんになる』

『えっ、お嫁さんは……ちょっと』


 だから、そこで断るんじゃねえ、子供の俺ぇ!


『ううっ……やっぱりおねえの方が好きなんだ……』


 そうなるんだよな。まあ、俺が『返事は高校生になるまで待て』って言ったんだけど。


『えへへぇ♡ そうちゃんのお嫁さんだぁ♡』


 シエル……本気なのか? 俺は…………。



『そうちゃぁ~ん!』


 そこにもう一人の女の子が走ってきた。いつもお日様のような笑顔の美少女、ノエルねえだ。

 今は悲しそうに涙で目をはらしているけど。


 あれっ? この話って続きがあったんだ。


『そうちゃん、私たち、遠くに引っ越すことになっちゃったの』


 ノエルねえは続ける。姫川家が他県に引っ越す話を。

 親父さんが住み込みで働ける仕事を見つけたらしい。酒を断って一からやり直すと謝ってくれたとか。

 大丈夫なのか?

 まあ、大丈夫じゃないから離婚になったんだろうけど。


『そうちゃんと離れたくないよぉ』


 ノエルねえも、シエルと同じ気持ちだった。潤んだ目で俺を見つめる。


『あ、安心してくれ。離れ離れになっても、俺は絶対にノエルねえを忘れないぞ! 俺とノエルねえは、ずっと一緒だ!』


 小さい俺は力説する。シエルに言った告白とほぼ同じ内容を。これ、ヤバくないか?

 そのノエルねえは、キラキラした目になって俺を見つめるのだが。


『ほわぁ♡ 嬉しい♡ じゃ、じゃあ、大きくなったら、そうちゃんのお嫁さんになりたいな♡」

『お、おう』

『良いの?』

『い、良いぜ』


 良いのかよ! あっさりOKしちゃうのかよ!

 アホか!? アホなのか!?


『やったぁ! そうちゃん、大好き♡』

『おっ、おう……』


 ノエルねえに抱きつかれて照れる俺。何やってるんだか。

 婚約成立かな?


 まあ、昔からノエルねえのお願いは断り辛いんだよな。ノエルねえマジックだろ。


『むぅううううううぅぅうっ!』


 案の定、くしゃくしゃに顔をしかめたシエルが、目に涙を溜めているのだが。


『うわぁああああ~ん! そうちゃん酷いぃいいっ! おねえだけOKするんだぁああああ~!』


 まあ、そうなりますよね。

 昔の俺って、何気に酷くないか?




 また場面が変わった。数日後かな?


 ガシャァアアアアアアアアアーン!

『そうちゃん! そうちゃん! 死んじゃヤダぁああああああ! そうちゃぁぁぁぁーん!』


 そうだ、あの日だ。

 あれが俺たちの運命の分かれ目だったのか。



 ついに記憶を取り戻した壮太。果たして、どうなってしまうのか?

 ノエルルート? シエルルート? それともリラちゃんルート……は無いか。

 待て、星奈と明日美はどうなる!?

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姉喰い勇者と貞操逆転帝国のお姉ちゃん!

書籍情報
ブレイブ文庫 第1巻
ブレイブ文庫 第2巻
COMICノヴァ

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