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ヴィヴィアン・クックの宣誓



リラの花が美しく咲く中、私と公爵は入籍した。



日中の教会は人目が多いので、夜に司祭と私たち2人だけで誓いを立てる。


窓から差し込む月明かりと、淡い蝋燭の光だけに照らされた公爵は幻想的だった。



(相変わらず、彫刻みたいに綺麗な顔…)


キラキラ輝くアメジストの瞳も美しい。




公爵は普段通りの騎士服に身を包み、私も侍女服にレースのベールを着けているだけ。



私たち2人の姿を見て司祭は微妙な顔をしていたけど、余計な事は何も言わなかった。





お互い終始無表情だった。



公爵は相変わらず何を考えているのか分からないし、私も正直実感が湧いていなかった。



誓いを立てて、サインするだけで明日から公爵夫人になるなんて。現実味がなさすぎる。



公爵がベールを捲る。

俯きがちだった顔をそっと上げられて、アメジストの瞳と目が合った。




ゆっくり近づいて来る顔に瞳を閉じる。

そっと触れた唇が冷たくて、雪みたいだった。




貴族だから政略結婚は当たり前だとわかっている。

でもジョージと出会って、好きな人と結婚する未来を一瞬思い描いてしまった。

舞踏会でいつも楽しそうに見つめあって踊っている2人が幸せそうで、羨ましかった。




私たちの間には契約はあるけど、愛も信頼もない。

出会った頃より親しみを感じてはいるけど、それだけだ。彼が何を考えているのかは相変わらず分からないことが多いし、近くなったと感じている距離感もそう見せているだけかもしれない。

お互いを信頼できるほど私たちは本音で話すことはないし、踏み込んだりもしない。




私達の結婚は、アリスとジョージの結婚とはあまりに違う。




(私も公爵様も、お互い可哀そうね。誰に祝われるわけでもない形だけの結婚なんて。)








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