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「…君は彼が好きなのか?」
探る様な瞳で見つめられて、居心地が悪くなった。
勘の鋭い人だから、私が否定しても信じないだろう。
契約とはいえ、来月には結婚する相手に自分の失恋について知られるなんて。
「以前は。今は、彼等の幸せを祈っています。」
嘘じゃない。でもまだ胸は痛むから、あんまり会いたくはない。
それ以上は話したくなくて、私は黙った。
「…来月、籍を入れようと思う。君には私の屋敷に来てもらいたい。」
紅茶を飲みながら、淡々と彼が言った。
不機嫌そうに眉間には皺が寄っている。
さっきまでの和やかな雰囲気ではなくて、私はずっと居心地が悪かった。
何が彼の琴線に触れたのか分からないけど、私達の間には度々こういう殺伐とした雰囲気が流れる。
例えば親しい友人とかジョージ相手なら、私は迷わず何が嫌なのか聞くタイプだけど、公爵にはそんなに気安く聞けなかった。
だから彼が不機嫌でも、怒っていても、私はいつも理由を聞かずに、ただ黙ってやり過ごすしか無かった。




