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「そういえば、私と公爵様にはだいぶ身分差がありますけど、本当に結婚して大丈夫なのですか?」
ずっと疑問に思っていたことを、公爵に聞いてみた。
今は3日に一度の彼とのお茶の時間だった。
王宮の庭園の一角で、お互いに紅茶を飲む。
私の質問に、公爵は少しだけ考えるように黙った後、口を開いた。
「私はずっと婚約することを拒否していたからね。国王は、最早結婚してくれるなら誰でも良いそうだよ。それに私はこの国の準王族だから、例えどれだけ貴族たちが反対しようが、国王以外に私に命令できる者はいない。」
ジョージはアリスを婚約者にするのに苦労していた。
私たちは彼等以上に身分差があるから難しいんじゃないかと思っていたけど、身分が高すぎるといっそ楽に進むらしい。
「ビビ!こんなところで会えるなんて!」
急に後ろから声をかけられて、驚いた。
振り返れば、後ろの茂みから顔を出しているジョージがいた。
「ジョージ!こんなところで何しているの?」
彼と直接話すのは、だいぶ久しぶりだった。
嬉しさと懐かしさで笑みが浮かぶ。
「昼休憩でちょっと散歩してたんだよ。久しぶりだね。君は…」
ニコニコしながら走り寄って来たジョージは、やっと私の前に座っている公爵に気がついたらしい。
公爵は無表情で、ジッとジョージを見つめている。
美しい紫の瞳が、暗く光った気がした。
「ユリウス団長!お疲れさまです!
お邪魔してしまい、申し訳ありません。」
ばっと頭を下げたジョージの顔には、焦りが見てた。
「構わないよ。君は、第三部隊副隊長のジョージ・ギルフォード君だね。彼女と知り合いなのか?」
「ジョージは私が王宮に来た時に知り合ったんです。その頃は、お互い騎士見習いと侍女見習いだったので。」
戸惑っているジョージの代わりに私が答えた。
いつも王宮の裏手にある森で会っていたから、あんまりジョージと私が仲が良いことは知られていない。
「久しぶりに会えて嬉しかったよ、ビビ。婚約おめでとう。君も幸せになってね。」
ふわっと子犬みたいに笑って、ジョージが言った。
幸せにという言葉に少し切なくなってしまう。
かつては、貴方と幸せになりたいと思っていたのに。
「ありがとう。貴女もアリスと幸せにね。」
そう返すと、ジョージは本当に嬉しそうに、幸せそうに笑った。
公爵に挨拶をして彼が立ち去っていく。
それを見送って席に座ると、目の前の公爵は不機嫌そうな無表情で、テーブルをトントンと叩いていた。




