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言い返そうとして顔を上げると、無表情だけど確かに怒っている公爵が見えた。

婚前契約の時も苛立っていたけど、今ほどじゃなかった。


私はこれ以上何か言い返すのは得策じゃないと思い、口を継ぐむ。


「君は私と契約した時点で私のものなんだよ。私に隠し事をすることも、勝手に傷を作ることも許されない。」


暗い紫の瞳がうっすらと微笑む。

言い聞かせるように優しい声が、すごく不気味に感じた。


「…私は、ものじゃありません。」



彼とは身分差があるけど、契約は対等なはずだった。私はずっと彼の協力者のつもりでいたのに。


「でも君は、その命を賭けて私の優秀な駒になってくれるんだろう?優秀な駒なら、主人に楯突いたり嘘を吐いたりはしないはずだ。」



それは、そうだけど。

じゃあ私の気持ちや考えは、全部必要ないということ?


彼が一言終わりだと言えば、この契約は簡単に終わる。

どれだけ正式な契約書を交わそうと、彼ならその存在をもみ消すことすらできるんだから、あんな契約書一枚には何の力もない。



こんなに虚しいことはないな、と感じた。

この国の全ての人に愛し愛されていると嘘をついて、その実、私はただの駒としての価値しかない。



ジョージやアリスのように愛が芽生えなくても、せめてお互い協力者として尊重し合えればと思っていのに。


悲しくて、悔しくて、涙が出そうだった。


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