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「そんなことは起こりません。彼女たちには殺意なんてありませんから。本当に、大したことではないんです。」


大袈裟だと溜息をつけば、公爵の腕がぴくりと動いた。


「大したことない?…本当にそう思うのか?」


紫の瞳が暗く光った気がした。

そのまま肩を押されて、ベッドの上に押し倒される。


あっという間に両手を纏められて、覆い被さるように上に乗られて、悲鳴すら出なかった。



「な、何をするんですか!離してください!」


一瞬の驚きの後、恐怖がじわじわと浮かんできた。


公爵は無表情で、私の足首を掴むとぐいっと上にあげた。

私は今薄紫のロングワンピースを着ているけど、足を持ち上げられたことで、裾が膝上まで捲れている。


異性の前で足を晒すことなど今まで一度もなかったため、羞恥心が湧き上がる。

これ以上足を上げられたら下着すら見えそうだった。


「離してください!」


羞恥心と怒りで顔を真っ赤にしながら、私は蹴っ飛ばしてやろうと足を動かすけど、やっぱりびくともしなかった。


公爵は冷静に、ワンピースが捲れた私の足を見つめている。


「君の目には、これが大したことないと思うのか?」


何のことかと公爵の視線を追えば、私の足は痣や傷で埋め尽くされていた。


たしかに醜いけれど。どれもすぐに治る傷だった。



「こんなのすぐに治ります!離してください!」


私は必死で抵抗して、身体を捩っていた。

足首を離されて、慌てて足を下ろす。


傷を見てからどんどん公爵が不機嫌になっていくのがわかる。


「さっき、君はどんな姿だったか分かるか?」


さっき?びしょ濡れだった時のことだろうか。

暴れすぎて酸欠になった頭はややぼーっとしていた。はあはあと息切れしてしまう。



「濃紺の侍女服がピッタリ身体に張り付いて、随分扇情的だったよ。あそこは騎士団の宿舎の近くだ。そんなところを君1人で、あんな姿で歩いていたら、どんなことが起こると思う?」


両手を押さえられて、公爵のもう片方の手は私の腰に添うように触れられている。



暗殺者に狙われるようになって、私は自衛のために即効性の睡眠薬や痺れ薬など幾つかの薬品を持ち歩くようにしていた。


いざとなったらそれを使えばいいし、護衛が着いているのだからそんなことにはならないとわかっていた。


公爵だってそれはわかっているはずなのに。





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