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王宮医師はテキパキと私の足首に包帯を巻いた。


ただの捻挫で、安静にしていれば数日で良くなるとのことだった。


私が診察を受けているうちに、公爵家のメイドが着替えを持ってきてくれたらしく、薄紫のワンピースを渡された。



一見シンプルなデザインだったけど、すべすべの手触りですぐに高級品だとわかった。


医務室にあるベッドのカーテンを引いて、汚さないように細心の注意を払って着替える。


着替え終わった頃、医務室の扉がノックされた。

公爵は私が診察中、医務室の外で待っていてくれたらしく、中に入って来た。



「ありがとうございます公爵様。服は必ず綺麗にして返します。」


ぺこりと頭を下げれば、「必要ないよ。その服は君のだ。返されても困る。」と不機嫌そうな声が聞こえた。


「え?」


「気に入らなければ捨ててくれ。」



着替えのためにわざわざ買ってきてくれたと言うことなのか。

頂けませんと断ろうとして、以前公爵が、貰えるものは貰った方が良いと言っていたのを思い出して素直に受け取ることにした。


「…ありがとうございます。」




「ところで、君は何故噴水に落ちたんだ?」



私は医務室のベッドに座っていて、公爵は目の前に立っている。

見上げれば、公爵は無表情だった。

医師は手当が終わると、用事があると医務室を出て行ったから、ここには私と公爵しかいない。



「…バランスを崩したんです。」


「何故?」


透き通った紫の瞳は、全てを知っているようだったけど、私は答えなかった。


「何故バランスを崩したんだ?」


問い詰めるように公爵が尋ねてくる。


何故こんなにしつこく聞いてくるの。

答えたくないから黙っているのがわからないのか、と私は苛立った。


きっと護衛から詳細を聞いて知っているだろうに、何故わざわざ私から言わせようとするのだろう。


「何でもありません。気になさらないでください。」


これ以上話したくないと、顔を逸らした。

窓の外は夕陽が沈みかけていて、あたり一面優しいオレンジ色に染まっていた。



私は自分の口から王宮で嫌がらせを受けていることを彼に伝えるつもりはなかった。


何かして欲しいとも思ってなかったし、ただ放っておいて欲しかった。



「…私はいつも冷静なんだ。だけど、君はなかなか、私を怒らせるのが上手だよ。」



急に伸びてきた手に顎を掴まれて、無理やり見上げさせられた。嫌でも公爵と視線が合う。


公爵は無表情だけど、掴まれた腕の力は強かった。


私は両手で必死に腕を解こうとしたけどびくともしなくて、公爵を睨んだ。


「離してください。どういうつもりですか。」


「それは私が聞きたいな。王宮で受けた嫌がらせについて、一体君はいつになったら私に話すつもりだったんだ?足が折れた時?死にかけた時か?」



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