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婚約発表の前、兄が声をかけてきた。
「やあビビ、そのドレスとっても素敵だね。似合ってるよ。」
「兄さん!」
ずっと緊張して張り詰めていた心が少し緩んで、笑顔が浮かんだ。
公爵は相変わらず隣に居たけど、彼は別の貴族男性と話し込んでいる。
「あのね、ビビ。もしよかったらこれ、付けてくれないかな。」
照れくさそうに兄が掌に持っていた小さな箱を開けた。
中には小さなダイヤモンドが一粒ついた、ネックレスが入っていた。
「本当はもっと立派な物をと思ってたんだけど、これくらいしかできなくて。婚約おめでとう。」
私はアクセサリーを一つも持っていなくて、今日も装飾品は何も付いていなかった。
きっとそんな私のことを分かっていて、兄が用意してくれたんだろう。
「嬉しいわ、兄さん。本当にありがとう。」
兄が着けてくれたネックレスを、そっと撫でる。
それだけで、十分幸せな気持ちになれた。
ふと視線を上げれば、彼が私を見ているのがわかった。
一瞬目があったけど、私の方からそっと逸らした。
兄と別れた後、いよいよ婚約発表となった。
彼はさっきからずっと不機嫌で、私の手を握る力は強い。
微笑んでいるのに、ぜんぜん笑ってなくて終始無言だった。
虫の居所が悪かいのかな?でも今日まで彼の計画通りに進んでいて、今度は一体何が気に入らないというのだろう。
私は内心困惑していたけど、婚約発表は無事に終了した。




