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フォックス伯爵夫人を思い出したのか、兄が不快そうに顔を顰める。
私は大事な兄をあんな性悪女に差し出す気はないし、みすみす領地を取られるつもりもない。
「兄さん、きっと何もかも上手くいくわ。大丈夫よ。」
自分に言い聞かせる様に、私は笑った。
「1週間後の舞踏会で、婚約を発表するですって?」
国王からの承認は公爵が取ってくれるらしい。
私はとりあえず、姫様にこのことを伝えておくことにした。
「そうなんです。早い方が良いと思いまして。」
私は姫様の食器を下げながら、話していた。
「随分急なんじゃ無くて?それに公爵ほどの人が、お茶会も舞踏会も開かずに、王宮の舞踏会でついでに発表して終わりだなんて。簡易的すぎるわ。もっと大々的にやったらいいのに。」
「お互い仕事がありますし、忙しいですから。こんな素敵な縁を結べただけで十分です。」
姫様は不満そうだった。
柔らかそうなすべすべの頬が膨らんで、小さな唇が少し尖っている。
可愛らしくて、私は少し笑ってしまった。
「…ところで、ビビ。ドレスはどうするの?」
「手持ちのものがありますので。」
この前の舞踏会で着た薄緑のドレスを着ようと思っていた。
買い直すお金もないし、時間もない。
「あら、そんなのダメよ。今度の舞踏会の主役は貴女なんだから。うんと輝くドレスでないと。私のドレスを少し直して着たらいいわ。私からのお祝いよ。」
柔らかく微笑んで、姫様が言う。
その気持ちが嬉しくて、有り難く頂くことにした。




