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「君は一見すると後ろ盾の無いか弱いご令嬢だけど、医学や薬学に精通していて教養があり、頭も切れる。戦争を実際目の当たりにして度胸もある。君が今1番必要としているのは領地立て直しのための金で、家族や領民というわかりやすい弱点がある。実に理想的な婚約者だよ。こんなに気が強いじゃじゃ馬だとは思わなかったけどね。」
こてんと彼が首を傾けて楽しそうに笑う。
サラサラと流れたシルバーブロンドが、照明に反射して綺麗だった。
別に何も不思議なことじゃなかった。
今までにも王宮侍女の私を懐柔しようと、家族や領地の件で脅してくる人、大金を積んでくる人は度々居た。
姫様を裏切ることや、犯罪に関わることは絶対に避けてきたけど、今回の件はそのどちらでもない。
「囮になることは構いません。好きに使ってください。でも私は大人しく相手にやられて死ぬつもりはありません。護衛を付けてください。」
当然の要求だった。
またいつ命を狙われるかわからない。
「勿論。婚約を申し込んだ日から、君の周りに護衛はつけていた。ただ、婚約式もまだのこの時点で命を狙ってくるとは思わなかったんだ。」
「すまない。」と小さく謝られて驚いた。
私は「もう、いいです。無事でしたから。」と謝罪を受け入れておく。
これから協力関係になるのに、いつまでも怒っているわけにはいかない。
ふと、彼が私の足元に目を走らせたのがわかった。
一瞬顔を顰めた後、何も無かったかのように笑顔を浮かべている。
「あと、私に何か言っておきたいことはありますか?」
私は意図が読めなくて怪訝な表情になる。
「いえ、特にありません。」
私が答えた後も相変わらず彼は笑顔だったけれど、ほんの少し不機嫌になったような気がした。




