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「そう言ってくれるのは嬉しいわ。私も貴女とずっと一緒に居たいけれど… せめて貴女が幸せになるところを見届けてから嫁ぎたいわね。」
そう茶化すように笑いながら姫様が言った。
それに私は答えられず、苦笑するしかなかった。
私だってまだ18歳で、恋愛や結婚に憧れがないと言えば嘘になる。
王子様のように優しくて素敵な男性に恋をして、愛されて結婚したいけれど。
貴族の娘として政略結婚は義務だし、特に私の家は持参金すらろくに用意できない貧乏貴族だ。
貴族の結婚はビジネスに近い。
結びつくことでもたらせる利益がほぼない、なんなら実家の借金や立て直しの支援をしなければならない私のような女を、嫁にしたがる貴族はまずいない。
まともな人に嫁ぐのは難しいだろうから、大方歳の離れた貴族の後妻か、色々問題ある男に嫁ぐか。
どちらにしろ碌なもんじゃない。
そういった私の事情を察している姫様は私に色々嫁ぎ先を紹介してくれようとするけれど、実際そこまで条件の良い相手は極端に少ないのが現状だった。
大体の高位貴族は10歳になる前から婚約者がいるものだ。
婚約者がいない貴族もいるが、いくら姫様からの話とはいえ、潰れかけてる伯爵家の女を嫁にしたがる人も少ない。
稀に居たとしても、相手の家格が低かったり金銭的な援助を期待できないとなると、今度は私の実家が文句を言ってくる始末だ。
結局この5年で私の婚約は一度も纏まらず、そうこうしているうちに健康になられた姫様が隣国に嫁ぐことが決まった。