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彼は戦争の英雄で、若くして騎士団の団長だ。
当然頭も切れるし、権力もある。
自分の価値も十分理解しているだろう。
そんな彼が、私みたいな弱小貴族で後ろ盾のない令嬢を婚約者にした理由。
王宮という目立つ場所で、毎日お茶や食事に誘いに来て、こんなにひと目につく場所で私に笑顔を向ける理由。
王宮で彼の噂話を集めていて、彼を恐れる人や妬む人が多いことも知った。
ーーーー彼は、私をエサにしようとしている。
彼の笑ってない瞳を見て、彼の考えがわかった気がした。
その瞬間、全身が冷えていくのを感じ、無性に家族に会いたくなった。
私の容姿は凡庸だけど、頭はそんなに馬鹿じゃない。
そうじゃなければ、13歳で王宮侍女の試験に受かることなんてできなかった。
5年前領地で起こった戦争でも、賢くなければ生き残れなかった。
その日のお茶会は、その後和やかに終わった。
私は最後まで笑顔だったけど、彼と会話しながらずっとジョージとアリスのことが頭に浮かんでいた。
身分差を乗り越えて、互いに愛し合ってついに結婚した2人。ジョージも、優しく有望で社交界で人気者だった。きっと様々な困難があっただろうけど、あの優しく実直な男は自分の愛する人を全力で守ってきたことだろう。
喉の奥が詰まったように震えて、もう笑顔でいることしかできなかった。
私は公爵と別れた後、街に出て銀のスプーンといくつかの薬草を購入した。
王宮内の侍女用の自室へ戻ると、急いで調合して薬を作り始める。
薬が出来上がる頃には、すっかり日が暮れて夜になっていた。
この時間ではもう食堂はやっていないし、適当に置いてあったリンゴを齧ってから、眠ることにした。
狭い室内に置いてある小さなソファには、いくつか可愛らしい動物の人形が置いてある。
それらは王宮に来る前に13歳の私が寂しくないようにと、家族が持たせてくれた宝物だった。
私はもう18歳で子供ではないけど、今でも大事にしていた。
その人形たちと、クローゼットに数着だけ入ってた服を適当に丸めて布団の下に入れる。
自分は薄いシーツをかぶってベッドの下に潜り込んだ。
手には小さな薬瓶2つと、小型ナイフを握りしめる。




