ヴィヴィアン・クックの日常
私、ヴィヴィアン・クックはガリア王国王宮の侍女である。
私はガリア王国北部にある小さな領地、クック伯爵家の娘として生まれた。
家柄こそ伯爵だけど、我が家は常に貧乏で13歳には私は王宮の次女として働き始めた。
侍女として働いて早5年。
お仕えしている第二王女のソフィア様は、小さい時は身体が弱く寝込みがちだったけれど、16歳に成られた今では輝く美貌を持った美しい姫に成長した。
体調をすぐに崩してしまう王女の看病を行っていたおかげで、簡単な医学知識や看護についての知識はそれなりに身についている。
すっかり健康になった姫様はつい最近、隣国の王子との婚約が成立した。
あと二年もすれば隣国に嫁いで行ってしまう。
「ねぇビビ、いい人はいないの?」
ソファに腰掛けてお茶を飲んでいる姫様がふと、私に問いかけた。
「おりません。」
毎度のことなので、私もいつも通り同じ答えを返す。
「貴女は美しいし、若く優秀なのだからアプローチはたくさん受けているはずよ。なぜいい人をつくらないの。」
少し呆れたように、そして困ったように姫様はため息をついた。
「姫様にお仕えするのが私の幸せなのです。」
これは本心で、私は姫様の人柄を尊敬しているし、できることなら一生お仕えしたいと思っている。
だけど、私は一応伯爵令嬢だ。
実家を立て直すには私が条件の良い家に嫁ぐ事が1番の近道で、家族には散々早く嫁ぎ先を見つけろと言われている。
それに他国に嫁ぐ姫様に着いて行けるのは数人の侍女だけ。
仕えて5年程度の私よりも姫様が生まれた時から仕えている侍女頭や先輩達が選ばれるはずだ。
私は姫様と1番年が近いし、そもそも病弱な姫様の話し相手として雇われたため姫様とは友人のように近しい関係を築けているけど、それでも現実的に考えてきっと一生お仕えすることは難しいだろう。