両親の馴れ初め話
「ねぇ、父さんと母さんってどうして結婚したの?」
唐突にごめんなさい。
私は都内在住の中学2年生。
最近クラスメートが彼氏できたーって言うのをよく聞くんだけど、私は14歳にして初恋もまだ。
ということで、両親の馴れ初め話に興味があるんです!
「ふふっ、唐突にどうしたの?」
そう言って朗らかに笑うのは私の母。
軽く四十路を超えているはずなんだけど、とても若々しい。とても美人でしかも優しい私の自慢の母です。
「そうか、優利もそんなお年頃か」
そう言ったのは私の父。
いわゆる正統派イケメンで学生時代には街を歩けばスカウトが来たほど。
愛妻家で今もなお母とはラブラブです。
「で、どうなの?」
前置き長くてごめんなさい。
「そうね、父さんとは中2でクラスが一緒になったのが出会いかな」
母さん達って同級生だったんだ。
「母さんは働き者でね、クラスのことを裏で支えていたところに興味を持ったのがきっかけだよ」
へぇー
「まぁそうなの?私は父さんと会った最初の方は引いていたんだけど」
「えっ?引いて…」
父さん、引くってだけで悲しみすぎでは?
でも、どうして母さんは父さんのこと引いたのかな?
それなのに何で結婚したのか気になる〜
「だって優利、考えてみて?父さんったら成績は学年一位で絶対音感があってピアノも上手、その上生徒会長やらサッカー部部長やらを務めていたのよ?しかも偉ぶらないし陽キャだし当時からイケメンだし」
父さんって…
「完璧すぎてちょっと怖かったのよ」
でしょうね!
「えっ、俺昔嫌われてたの?」
父さんって何でいつもキリッとしてるのにこういう時はしょげた顔してんのかな?
あと、母さんは別に父さんのこと嫌ってなかったと思うよ?
「まぁでも、父さんがその地位に甘えずかなりの努力をしているのを知ってね。私とは比べものにならないほど。そういうところを尊敬したのがきっかけかな。それに当時から父さんのこと嫌ってなかったわよ」
嫌ってなかったと聞いて嬉しそうに微笑む父はやはり母に弱いのだと実感する。
それにしても、母さんは父さんに対して飴と鞭の使い方が上手だな~
「それで付き合ったの?」
「いや、そのまま卒業してね、告白しないまま。まぁ俺は当時から好きだったんだけど」
父さん、奥手かよ!
「で、母さんに見合う男になろうと高校から株転がしたり、その金をもとに大学で起業したり」
父さんって好きな人(母さん)のために何でもできるんだよね…
でも周りから見たら怖いだけだからね?
「いつ再会したの?」
「再会したのが成人式よ。でもこの人再会してすぐに何て言ったと思う?」
え?なんだろう?
「この人ったら『あなたを養うために起業して社長になりました。付き合ってください』って言ったのよ?しかも元同級生がたくさんいる公衆の面前でよ?まず誰か分かんなかったのに!」
温和で寛容な母さんを怒らせる人っているんだ…
っていうか、もし母さんと会わなかったら父さんって社長にならなかったのかな?
聞いてみたい気もするけど、ちょっと怖いな…
「うっ、その時のことはもう謝ったじゃないか!」
父さん慌ててる、面白いなぁ。
愛妻家な父さんは母さんに勝てたことないんじゃない?
「あれ以降友人からからかわれる私の身にもなってちょうだい! プロポーズされた後に『どちら様?』って言ったのを未だに会話の種にされるのよ!?」
「まぁまぁ母さん、それで付き合ったの?」
父さん、助け舟出したからといって親指立ててグッジョブってしないで。
「まぁ父さんの熱意に押されて。それに有馬君に平謝りされて怒るに怒れなくて」
ほぅとため息をつく母さん。美人の物憂げな表情って美しいよね。
それにしても、
「有馬君って誰?」
「父さんの会社の副社長で私達の元同級生なの。
父さんに昔から振り回されてる不憫な人よ」
うゎ、絶対可哀想な人だ。
ごめんなさい、うちの父が。
「ま、まぁ当時から母さんはモテてたからな。成人式の時の母さんは狼の中に紛れ込んだ羊のようだったんだ」
父さんはたまによく分からないことを言う。
「再会してすぐに告白されて戸惑ったのよね。それで喧嘩して、それでも父さんのすごい努力するところとか、私に対して真摯なところとかを好きになってね。その後色々と父さんのこと知って、紆余曲折あって結婚したの。これが私達の馴れ初めよ。」
へぇ~父さんと母さんって色々あったんだな。
でも今はとても仲良しなおしどり夫婦だ。
それに考えたこともなかったけど、今もなお仲が良い両親は私の憧れだ。
「さっきから父さんのことボロクソに言ってるけどさ、母さんって父さんのこと好きでしょ?」
「もちろん。そうじゃなかったら結婚しないわよ」
その言葉に父さんが嬉しそうにしている。
母さんの言葉に一喜一憂する父さんはどこか可愛らしい。
「それにしても優利、あなたは好きな人いるの?」
母さん、唐突にしかも直球で聞くね。
「えっ、優利好きな人いるのか?どんな人だ?父さんに教えてくれ!」
父さん、慌てすぎ。
「好きな人はいないよ。最近、クラスメートに彼氏がよくいるから気になっただけ」
そう言うと父はホッとため息をついた。
どうしたんだろう?
母さんにそう聞くと、
「あの人は気にしないでいいから。
まぁいつか好きな人ができたら教えてね」
そう言ってにこりと微笑む母はとても美しく、恋というものに興味が湧き、いつか好きな人ができたら相談しようと思えた。
登場人物
優利∶語り手。
平凡だと自分では思っているが美男美女な両
親に似て美少女。
恋愛に興味がなく、男共にショックを与え続
けている。
母∶優利と同じくっきりとした二重まぶたと小顔を
持つ聖母系美女。
夫を尻に敷いている。
優しく温和だが怒ると怖い。
父∶優利と同じ地毛の茶髪と鼻筋の通った顔立ちを
持つ正統派イケメン。
中学時代から妻に片想いしており、成人式で自
分のものにした。
明るい性格だが、妻に想いを寄せる男共を蹴散
すなど腹黒い一面も持つ。