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近代革命魔法少女レース=ノワエ  作者: 八島唯
第3章 豪華客船『パークス=ブリタニア』
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『敵艦見ゆ』

 オフィーリアの長い金色の髪が風でたなびく。それはまるで黄金の軍旗が迫りくる敵を迎え撃たんとする意志を感じさせる。

 豪華客船『パークス=ブリタニカ』を遥か下に見下ろし、オフィーリアはその両腕を虚空に広げじっとその時を待っていた。

(一つ......二つ......)

 神経を研ぎ澄ますオフィーリア。船内の無人の環境のいくつもの装置を『魔法少女』の能力で遠隔操作する。この船には、当然船員は存在する。しかし、このような非常時においては乗客も含めすべての船員は船のコントロールする権利を失う。船長より船主たるオフィーリアに全権が移譲され、すべての航行システムをオフィーリアが独占する。

 その電波探知測距から送られてくるデータ。砂嵐でしかないそれを、オフィーリアは刻々と魁星旗する。

(三つ......そして、四ツ!)

 目を見開くオフィーリア。

 それをはるか眼下より見上げる唯依ゆよりとすざく。

「どうやら、見つけたようだね。『敵』の本体を」

 軍帽を被り直しながら唯依ゆよりがそうつぶやく。

「敵は『四ツ』、というか『四隻』というべきか。ほら、あちらをごらん」

 はるか彼方を唯依ゆよりは指差す。それをじっとみつめるすざく。

 霧がかった水平線はどこまでも黒く、そして無限の奥行きを感じさせた。

「何も.....見えないよ......」

 すざくの言葉に答えるように、オフィーリアは右手を掲げる。

「艦影捕捉。敵艦四隻と認む。単縦陣にしてその速度一〇ノット。先頭の戦艦の関係照合――」

 かちゃかちゃと大きな音が響く。大きな歯車が唸っているような音が。

「――照合終了。先頭の鑑は前弩級戦艦、そのシルエットからボロジノ級と思われる」

 オフィーリアの分析に、ほうと唯依ゆよりがため息を漏らす。

「随分とガラクタを引っ張り出してきたものだ。すざく、『敵艦みゆ』ってフレーズ知ってるかい?」

 むかし何かで読んだ記憶。そう、歴史の授業だったか。日露戦争で信濃丸という船が敵艦隊を最初に発見し、海戦の勝利に寄与したという物語――

「敵の艦隊はバルチック艦隊。連合艦隊によって二〇年前に日本海に沈められた戦艦が、いまここに蘇った。それは『魔法少女』の力によって。それは我々を――この『パークス=ブリタニア』を沈めるために」

 唯依ゆよりのつぶやきを背に、身構えるオフィーリア。

 たしかに感じる、他の『魔法少女』のエネルギー。

 一人は――当然カティンカのものであろう。もう一人はこの海域に魔法術『誦祭記』を展開させ、亡霊とも言える艦隊を再現した『魔法少女』。

 ゆっくりと先頭の艦影が見え始める。モノクルをそっとオフィーリアは右目につけると、軽くまばたきをしたあと一言告げた。

「先頭鑑判別完了。ボロネジ級前弩級戦艦『クニャージ=スヴォーロフ』――」

 それはかつてのロシアバルチック艦隊旗艦の軍旗をたなびかせながら、ゆっくりと砲塔をこちらの方に向けて迫ってきた――

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