ユーリヤ=スヴォーロフという少女
すざくは目を覚ます。いつの間にか寝てしまっていたらしい。自分のベッドの横によりかかり、制服のまま寝てしまったらしい。
最初に目に入るのは、直立する唯依の姿。そしてその先には――白い寝間着を着た背の高い女性――小銃を構え、唯依に銃口を向けている。肩は震え、息も絶え絶えな状態ではあったが。
「ユーリ」
唯依がそう呼ぶ。眼の前の女性の名前だろうか。
「落ち着いて、大丈夫。安心して」
まるで動物でもたしなめるような、唯依の呼びかけ。
何度も何度もそれを繰り返す。
すざくはなんとかしようと思うものの、手が出せない。
どのくらいそんな時間が過ぎただろうか。
大きな衝撃音。床にはそれまでユーリが握っていた小銃が転がっていた。
そしてユーリは倒れ込むように、唯依に身を預ける。
それを受け止める唯依。
すざくは目の前の出来事にただ驚くばかりであった――
「ユーリ、この子は」
再び寝てしまったユーリを両手で、抱きながら唯依はそうつぶやく。
「ロシアで出会った子さ」
すざくは思い出す。唯依は革命ロシアにお父さんといたという話を。
「白軍側――つまり反革命側に属していた魔法少女のユーリは、革命側の赤軍と懸命に戦っていた。しかし、白軍が不利なのは明らか。力尽きて倒れていた彼女を匿ったのが僕さ」
「じゃあ......なんで......」
銀色の髪をなでながら、唯依は答える。
「この子は感情がうまく表せなくてね。気づいてほしかったんだろうよ。『私はここにいる』って」
なんとも面倒なことだな、とすざくは心で思いつつも安心しきったユーリの寝顔を見るとなんとなく合点がいく気もした。
「ウラジオストックに居たはずなんだけどなぁ、どうやってここまで来たのか。十歳の子供が」
不思議そうに唯依がユーリの顔を見ながら、そうつぶやく。
十歳......?すざくの頭の中に、その数字が回転する。
「今何歳って?」
「十歳だよ。ユーリは。魔法少女はある年齢で成長が固定される。何年前に魔法少女になったかは分からないが、永遠に十二歳さ」
体つきから見ても、どう見ても大人の女性であるユーリ。
自分の体を見比べるすざく。今年十五歳になった自分と比べても――
首を横に振るすざく。
「でも、見た目は――」
「これは魔法少女云々とは関係なく成長が早いいんだろうね。外国人はみんなそうだからね」
ひとまわり大きなユーリを抱きかかえる唯依。
すざくは腑に落ちないものを感じつつも、ユーリの無邪気そうな寝顔になにか安心するものを感じていた――




