狙われる唯依
息を切らしながら、ゆっくりと階段をのぼる。
上野公園にはいくつもの博物館が存在する。いまだ高層建築が少ない中で、ひときわ目立つ建物である。
唯依はそのひとつに目をつけた。感じる『魔法少女』の波動――先程、自分たちを狙った弾丸の方向からも、この博物館の位置は合致していた。
屋上へ向かう階段。
すざくを何処かに匿おうと思ったものの、彼女がそれを許さない。
まあ、目の届くところに居てくれたほうが安全か、と唯依は軍帽を深くかぶり直しながら、階段をのぼる。
屋上へと続く階段。
間違いなく、彼女はそこにいるはずだった。
唯依を狙う、外国の『魔法少女』が。
ついに屋上の踊り場に到達すると、目の前には外へつながる鉄の扉が現れる。鍵――を確認すると、なにやら床に鎖の輪が散乱していた。どうやら重か何かで、施錠を壊したらしい。
そっと、扉を押し開ける。
まだ寒い風が、びゅうと二人に押しかかる。
それに逆らいながら、屋上に出る二人。
目を凝らすと――はるか彼方の端に、うつ伏せになって何かを構える人の姿が――
その瞬間、唯依は右手を上げる。
激しい音響。金属音ともなんとも言えない音が響き渡る。右手から煙が上がる。その右手は赤い光をまとい、鈍く光っていた。
「ユーリヤ、日本に来ていたのか」
唯依は名を呼ぶ。また一発、弾丸が放たれる。それもまた、右手の赤い光に弾かれるように空中に消し飛んだ。
手に小銃らしきものを持つ人影。服装は――軍服だろうか、なんとも言えないボロボロの衣服をまとった、姿がそこにあった。
腰のサーベルを唯依は抜き放つ。
そのまま突進する、唯依。人影は弾丸を込めながら、再び発砲する。
次の瞬間――二人の間に爆発が起こる。思わず目をふさぐすざく。
煙が舞い、床が軽く振動する。
そっとすざくは目を開ける。
そこには変わらない姿の唯依がこちらに向かって、歩みを進めている姿があった。
そして両手で何かを抱えていた。そう、それは彼女を狙っていたユーリヤを両手に抱えて。
『デート』は急な狙撃者によって、終了を迎えた。
聖アリギエーリ高等女学校の自室の寮の部屋に戻った二人。もう一人の『魔法少女』ユーリヤは唯依のベッドの上に横たわっていた。外傷は――ない。ただ、静かに寝息を立てているようにも見えた。
「これから、どうするの」
すざくがどうしたら良いかわからない顔でそう問う。唯依は無言で考えをめぐらしていた。
銀色の髪。そして、白い肌。年の頃は二〇歳くらいだろうか。唯依やすざくよりは一回り大きい体を持った、女性であった。
「医者を――」
すざくがそう言うと、それを唯依は遮る。
「魔法少女に医者は必要ない。大丈夫。目が覚めれば、元気になるだろう」
じっとベッドを見つめるすざく。魔法少女――何度もそのことばを頭の中で繰り返しながら――




