変身
「魔法少女にも二つ種類がある」
唯依はすざくにそう話しかける。
「社会の変革期に現れて、動乱に火をつけ混沌とした社会を目指す『動乱の魔法少女』。彼女らはその戦いがより激しくなるように暗躍する。一方それを良しとしないの魔法少女が『安寧の魔法少女』。彼女らは社会の変革が最低限の出血でおさまるように、その力を尽くす。眼の前にいる魔法少女――嬉河季代は前者であり、僕は――」
当然、『安寧の魔法少女』であるとすざくは心のなかでつぶやいた。
「戊辰戦争ではやってくれたわね。わらわが日本をバラバラにしようとした――あの内戦をさらに混沌とさせ、北海道や東北に独立政権を作ろうと努力したのにもかかわらず――ぬしら『安寧の魔法少女』がわれらにあだなして新政府の味方をしたせいで、あっという間にあの内戦は終わってしまった。わらわの思い通りに行けば今頃この国は分裂し、欧州列強の植民地となり混沌がいまだに続いていただろうに」
「残念でしたね。野望、ならずですね。今も昔も」
検事やさかの皮肉に、ちっと季代は舌打ちをする。先程までの高貴さはどこかに消えてしまったかのように。
「ふん、まだ終わったわけではない。わらわの魔法少女の不死の命がある限り、何度でもやってみせようぞ」
検事やさかは太刀を手にかつての主君、季代に飛びかかる。
赤い光が壁のように季代の前に展開し、太刀の刀身を受け止める。
激しい光と音が部屋の中に響き渡る。
「お互い、魔法少女らしく魔法術で雌雄を決しようではないか」
扇を軽くかざすと、太刀ごと検事やさかを赤い光が吹き飛ばす。
「よろしいわ。同じ魔法少女同士、雌雄を決するとしましょう。『本気」で。それにここでは狭すぎる。あるべき姿になりましょうよ。『魔法少女』の姿に」
そういいながら季代はすっと立ち上がる。そして目を閉じて、顔を天井に向ける。
声とも言えない小さな音。それはまるで機械音の奏でるミュージックのように、部屋に響き渡る。
赤い光の帯が何本も季代の体を包み込む。
あまりのまばゆさに、すざくは思わず腕で目を覆う。
次の瞬間、大きな音とともに衝撃がすざくを襲った。
「えええ......!」
果てしない風圧。唯依が支えてくれなければ、ふっとばされていたかもしれない。
部屋は一変する。書類やらなにやらが散乱し、机なども放射状に押し倒されていた。
ようやく見えるようになったすざくの視覚に飛び込んできたのは――空中に浮かぶ、背に羽の生えた『魔法少女』の姿であった。




